Sep 20, 2019 interview

オダギリジョーが興味津々、映画予告編を作る日が来る!?

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オダギリジョー監督が10年前に海外での経験を基に脚本を執筆し、満を持して長編映画の初監督に挑戦した『ある船頭の話』。映画大好きな業界の人たちと語り合う 「映画は愛よ!」の池ノ辺直子が、オダギリジョー監督に、『ある船頭の話』の予告編制作についてのエピソードをうかがいました。

――今回は予告編を作る作業もご一緒させていただきましたが、予告編を作るのってどうでした?

予告編っていろんな方向で考えられるじゃないですか。だから、どこに落とし込むのか自分でも答えがはっきりしなかったんですよ。まず、どこまで見せるか。そこが最初ははっきりできなかったですね。後は方向性ですよね。どういうふうに興味を持ってもらう作りにするか。結局、自分ひとりでは決められなかっただろうから、皆さんの力をお借りできて助かりました。

――2時間近い映画を、30秒や60秒で見せるっていうのは、やっぱり作り方も違ってきますね。今の予告編って、これはこんな映画ですよって丁寧に見せるのが主流なんです。今回の『ある船頭の話』は、どちらかというとアーティスティックなカッコいい感じの予告になったと思うんですけど?

自分では全然わからないです(笑)。でも、作品を作った側からすると、あんまり美味しいところを予告で使ってほしくないじゃないですか。

――そう、監督はみんなそう言うの(笑)。

だけど、予告を作る側からすると、そういう部分を使わないと引きが弱いってことだろうし。そこのせめぎ合いは絶対に予告を作るときにあるだろうなと思っていましたね。台詞に関しても、どのワードをチョイスするか。そこも話し合うことになるだろうなと思っていました。

――予告編を作るにあたって、オダギリ監督のこだわりはどこに?

特報に関しては、あまり多くの情報を表に出したくなかったですね、絶対に。物語をあまり説明せずに強い印象を残せるものにしたかったんですよ。ビジネスとしては、もっと見せていきたいだろうと思うんですが、情報をぐっと抑えた渋い特報にみんなが賛成してくれたことが僕は嬉しかったです。

――今回、特報でインパクトがあったのは草笛光子さんのナレーションなんですよ。どうして草笛さんにやってもらおうと?

ある種の昔話のような雰囲気を草笛さんは映画の中でも醸し出してくれたこともあって、それが草笛さんの声を選んだ理由のひとつだったと思いますね。

――予告編を作るときに、オダギリ監督がすごく拘っていたのが音でした。

僕は音楽をずっとやっていたので、音を重ねていく作業になんとなくこだわりをもっちゃっているんでしょうね。それで言うと、予告の音もすべてチャンネルを変えてやった方が良かったんですけどね。予告って本編の音をブツ切りで使うしかないじゃないですか。ここの音をもっと立てたいと思っても、それが出来ない。

――予告編を長く作っていると、音の奥行きとかあまり考えなくなっちゃうんですよ。その意味でも久しぶりに刺激されました。

僕も可能性を感じたというか、予告でもっと面白いことが出来るだろうなと思いましたね。本編には使わなかったカットもあるので予告に使えたら面白いですよね。でも、それはやっちゃダメなんですか?

――そんなことはありませんよ。ただ、本編に使ってない映像素材はあまりもらえないですね。本編で使っていない映像を使うと、「予告にあった映像が映画になかった」って、お客さんから言われることがあるんです。音楽も予告だけ別の曲を使っていると本編にはないからガッカリしたとか。

ということは、予告編は作品としては観られていないということですね。予告を1本の作品として観てくれれば、そこを気にせずに作れそうですけどね。

――ただ、お客さんは予告を観て本編を見に行くかどうか決めるという面が大きいですから。

難しいせめぎ合いですね。それにグレーディングもしていない映像素材を渡せないってこともあるでしょうね。

――編集途中に予告を作らなきゃいけないときは、カメラマンに来ていただいて、本編が最終的にどんな色合いになるか決まってないので、予告用に色を決めてもらうんですよ。それを見て本編の色をどうするか判断されることもあります。

それは面白いですね。予告を作る作業は面白いので、もうちょっと製作の最初の段階からやり方を考えれば良かったと思いました。

――そういう意味では、私たちの仕事って本編の素材をどうやって活かして、違うものを作るのかっていう作業が中心になりがちなんですが、別の作品を作るつもりで準備しておけば、オダギリ監督の言うような形で作ることも不可能ではないんですよね。

そうですよね。編集のときは台詞も効果音も別々のラインに入っているので、それを個別に予告で使用できれば、もっと面白い予告が作れるんだろうなと思いました。今度予告を作ることがあれば、最初から予告を踏まえて作りたいですね。

――それじゃあ、今度予告編を作ってみませんか? 『ある船頭の話』の予告編は、2年かけて作ったOKカットが凝縮された映画の中から、さらにOKカットを抽出して作ったわけですから、オダギリ監督が他の作品でどんなカットを選んで予告を作るのか見てみたいです。

雇ってくれるってことですか(笑)。では、心から宣伝したい作品があれば、それは本当に一度やってみたいですね。

インタビュー/池ノ辺直子
構成・文/吉田伊知郎
撮影/江藤海彦

プロフィール
■オダギリジョー

映画監督

1976年2月16日生まれ。アメリカと日本でメソッド演技法を学び、03年、第56回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された『アカルイミライ』(黒沢清監督)で映画初主演。その後、日本アカデミー賞、ブルーリボン賞を始め国内外の数々の賞を受賞し、海外作品にも多く参加。18年は『宵闇真珠』(ジェニー・シュン/クリストファー・ドイル監督)が公開。待機作に『サタデー・フィクション』(ロウ・イエ監督)、『人間、空間、時間、そして人間』(キム・ギドク監督)。これまでの監督作は『バナナの皮』、『Fairy in Method』(共に自主制作短編)、第38回ロッテルダム国際映画祭招待作品『さくらな人たち』(09/中編)。今年秋には『時効警察』の新シリーズ『時効警察はじめました』が12年振りに復活。

作品情報
『ある船頭の話』

明治後期から大正を思わせる時代、美しい緑豊かな山あいに流れる、とある河。船頭のトイチは、川辺の質素な小屋に一人で住み、村と町を繋ぐための河の渡しを生業にしていた。様々な事情を持つ人たちがトイチの舟に乗ってくる。日々、黙々と舟を漕ぎ、慎ましく静かな生活を送っていた。そんな折、トイチの舟に何かがぶつかる。流れて来たのは一人の少女だった。少女はどこからやってきたのか?どんな過去を背負っているのか?少女の存在はトイチの孤独を埋めてくれてはいるが、その一方でトイチの人生を大きく狂わせてゆくことになる……。


脚本・監督:オダギリジョー
出演:柄本明、川島鈴遥、村上虹郎、伊原剛志、浅野忠信、村上淳、蒼井優、笹野高史、草笛光子、細野晴臣、永瀬正敏、橋爪功
撮影監督:クリストファー・ドイル
衣装デザイン:ワダエミ
音楽:ティグラン・ハマシアン
配給:キノフィルムズ
新宿武蔵野館ほかにて公開中

©2019「ある船頭の話」製作委員会
公式サイト:http://aru-sendou.jp

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、「ボディーガード」「フォレスト・ガンプ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ」「マディソン郡の橋」「トップガン」「羊たちの沈黙」「博士と彼女のセオリー」「ドリーム」「シェイプ・オブ・ウォーター」「スリー・ビルボード」 ほか1100本以上。 最新作は「ベル・カント とらわれのマリア」「ジョジョ・ラビット」。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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