Jul 13, 2019 interview

ロバート・レッドフォード俳優引退作の買付けと宣伝戦略を語る、ロングライド代表 波多野文郎

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外国映画の輸入・配給・宣伝を20年にわたって続けるロングライド代表取締役の波多野文郎さんに、映画が大好きな業界の人たちと語り合う 「映画は愛よ!」の池ノ辺直子が、ロバート・レッドフォード俳優引退作『さらば愛しきアウトロー』の買い付け秘話から、世代を超えて支持されるレッドフォードの魅力を活かした宣伝の展開についてうかがいました。

レッドフォード引退作を直ぐに買い付けなかった理由

──ロバート・レッドフォード主演の『さらば愛しきアウトロー』が7月12日に公開されましたが、予告編は私が作らせていただきました。その節はありがとうございました。

とても良い予告編を作っていただきました。

──本編が良かったから、直しもそんなになくてスムーズに行ったので良かったです。波多野さんは、『さらば愛しきアウトロー』を買い付けたわけですが、なぜこの作品を?

映画が完成する半年か、もう少し前に脚本が送られて来たんです。ロバート・レッドフォードが主演で、ケイシー・アフレックが共演するプロジェクトで、おそらくこれがレッドフォードの最後の作品になるんじゃないかと。

──その時点で引退作になると言われていたんですか?

名言はされていなかったです。ただし、セールスエージェントのセールストークの中では、そろそろ引退作になるかもしれないという話が出ていました。それで脚本を読むと、これが素晴らしい内容で、実話を基にしたドラマチックな話なんです。レッドフォードは誰も傷つけない強盗で、でも、ちょっとワイルドなところもあったりして。犯罪の話なのに品があるんですよね。それでいて人間味と優しさにあふれていて、これをレッドフォードが演じれば、もう完璧だろうなと思いました。

──それで完成した映画を観る前に、「じゃあ、買おうじゃないか」と言って手付金を払ったわけですね。

ところが、そうじゃないんです。なぜかと言うと、高かった。やっぱりスターですよ(笑)。それと、完成したものを観たかったというのも直ぐに買わなかった理由です。レッドフォード自身が80歳を超えていて、この映画の役の設定よりもお歳を召されているんですね。それもあって観てみないと不安だった、というのが正直なところです。

──だけど迷っている間に、他の会社がサッと買っちゃうかもしれませんよ。

そのときは、もう諦めるしかない(笑)。それで映画が完成してから、日本で映画の買い付けをやっている各社が集まる試写があったんです。そのとき、良い意味で脚本とは違っていると思ったんです。もちろん、完成した映画が脚本と100%同じということは他の映画でも無いんですが、レッドフォードが実年齢よりも少し若い役を演じているということに、全く違和感がなかったです。すごく魅力的に見えた。それで、やっぱりこの映画は放っておけないなと思ったんです。

──脚本段階で買い付けるのと、完成してから買い付けるのでは価格が変わるんですか?

少しは変わりました。そういうことは、あったりなかったりなので一概には言えませんが、結果として、その段階で売れていなかったのは日本だけみたいですね。

──意外ですね。なんでだろ? 若い人はロバート・レッドフォードを知らないんでしょう? 

そうでもないと思いますよ。若い人だと『スパイ・ゲーム』が印象に残っているようですね。今回の映画も、“やっぱりレッドフォードはカッコいいよね”というのが、世代を超えて共通した言葉として聞こえてきました。若い方々は、ある程度歳をとってからのレッドフォードのカッコよさを知っているので、その魅力が今回もあると思われたでしょうし、若い頃からのファンの方々は、“良い感じに枯れてきたね”と思われたんだと思います。その意味では、ファン以外の多くの方々にも喜んでいただけると思っています。