Jul 13, 2019 interview

ロバート・レッドフォード俳優引退作の買付けと宣伝戦略を語る、ロングライド代表 波多野文郎

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映画愛に満ちた映画

──波多野さんご自身は、この映画をどうご覧になりました?

レッドフォードが演じたフォレスト・タッカーと、その周りの全ての登場人物に愛情を感じましたね。作り手や演じている人たちが本当に愛情を注いで作り上げたことが、じわじわ伝わってきて、そこに一番魅力を感じました。それから、レッドフォードを追う刑事のケイシー・アフレック。『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でアカデミー賞を受賞した彼がリラックした雰囲気で、レッドフォードへの敬愛が感じられる演技をしていましたね。それからレッドフォードの恋人役のシシー・スペイセクが本当にチャーミングなんですよ。

──宣伝についてうかがうと、チラシには色んな人たちがコメントを寄せられていて、劇場支配人の方たちも多いんですよね。

最近の映画はデジタルで撮影されていますが、この映画はフィルムで撮影されているんです。スーパー16で撮影して、16mmフィルムからデジタルに変換しています。それもあって映画館で楽しんでいただきたい。そこで映画館の現場に立つ人たちに観てもらって、どんな思いを抱いたか、その声を届けたいと思ったんです。支配人といっても、けっこう世代もばらばらなんです。シネコンだと若い支配人が多いんですね。今回、コメントと共に「いちばん好きなレッドフォード出演作品を教えてください」という質問にも答えてもらったんですが、世代によって好きなレッドフォードの映画が違うのも面白いですね。人気の幅の広さを感じさせます。

──コメントが載っているチラシは、70年代風のポスターになっているのが良いですね。

これは、高橋将貴さんというイラストレーターの方に、70年代に日本で公開されていたアメリカ映画を意識して描き下ろしていただいたものです。すごく映画愛のある方なのでぜひお願いしたいと思ったんです。

──今回、予告編を作っているときに宣伝プロデューサーの方が「クリント・イーストウッドの『運び屋』に似ていると言われるんだ」とすごく気になさっていたんです。それで私は「そんなことはないわ」って言ったんです。

共に犯罪に手を染める老人の話ですからね(笑)。宣伝的には意識せざるを得なかったと思うんですよ。ずっとハリウッドの第一線で活躍してきたイーストウッドとレッドフォードの新作ですし。でも、観ていただくとそれぞれの俳優の個性がそのまま作品の個性になっていると思います。

歳をとることはカッコ悪いことじゃない

──今回、タイトルに“さらば”と付いているのは、やはり俳優としての引退を意識しているんですか?

そうですね。やっぱり、これが最後の出演作ということに、最大限のオマージュを捧げたいということで、このタイトルになりました。だけど、引退作なのに良い意味で力が抜けていますね。無理がないというか。そこがこの映画の魅力だと思うんですよ。だから肩肘張って観るんじゃなくて、フラッと映画館に入って観ていただいても期待以上のものがあると思いますし、期待して観ても、それに充分応えられるものだと思うし。期待せずに行っても、観終わった後で「あっ、得したな」と絶対思ってもらえる映画だと思うんですよね。

──前売り券の売上げ状況なんて訊いてもいいですか?

前売り券は……実は売れに売れているんです! 観客の年齢層が高い場合、シニア料金でご覧になるので前売り券は売れないんです。それが売れに売れているということは、予告編が良いからかもしれない。前売り券を買って映画を心待ちにしている方々がいるということが分かってすごく嬉しいですし、宣伝が上手くいっているということだと思います。

──この映画をきっかけに、過去のレッドフォードの作品を観たくなる人も多いんじゃないかと思うんです。

ちょうど「ロバート・レッドフォード出演作品 あなたの忘れられない一本を教えてください!」というキャンペーンを、この映画の公式サイトでやっています。投票いただくと抽選で、可能な限りレッドフォードの出演作を集めたBlue-ray/DVDの21作品セットを1名様に、『さらば愛しきアウトロー』のB2ポスターを5名様にプレゼントするという企画です。

──迷いながらも買い付けた甲斐がありましたね。

本当に。真面目に言うと、男性においても女性においても、歳をとることはカッコ悪いことじゃない。素敵なことなんだと感じることができる映画だと思いますので、一人でも多くの方に映画館で観ていただければと思います。

インタビュー/池ノ辺直子
構成・文/吉田伊知郎
撮影/江藤海彦

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PROFILE
波多野文郎 はたの のりお

ロングライド 代表取締役

1969年生まれ。1998年ロングライド設立。これまでの配給作品に、『ミッドナイト・イン・パリ』『ブルージャスミン』(ウディ・アレン監督)、『スポットライト 世紀のスクープ』(トム・マッカーシー監督)、『わたしは、ダニエル・ブレイク』(ケン・ローチ監督)など。 待機作品は『風をつかまえた少年』(キウェテル・イジョフォー監督:8/2公開)、『おしえて!ドクター・ルース』(ライアン・ホワイト監督:8/30公開)、『Sorry We Missed You(原題)』(ケン・ローチ監督:12/13公開)、『The Dead Don’t Die(原題)』(ジム・ジャームッシュ監督:来春公開)

作品情報
『さらば愛しきアウトロー』

1980年代アメリカ。紳士的な犯行スタイルで、銀行強盗と16回の脱獄を繰り返した伝説の銀行強盗フォレスト・タッカー。事件を追うジョン・ハント刑事は、一度も人を傷つけず2年間で93件もの銀行強盗を成功させた彼の仕事ぶりに魅了され、仕事に疲れるだけの毎日から逮捕へ向けて再び情熱を取り戻す。フォレストが堅気でないと感じながらも、心奪われてしまった恋人もいた。そんな中、フォレストは仲間と共に金塊を狙った大仕事を計画するが――。
原作:デイヴィッド・グラン『THE OLD MAN &THE GUN』
監督:デヴィッド・ロウリー
出演:ロバート・レッドフォード、ケイシー・アフレック、シシー・スペイセク、ダニー・グローヴァー、トム・ウェイツ、チカ・サンプター
配給:ロングライド
公開中
Photo by Eric Zachanowich. © 2018Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved
公式サイト:longride.jp/saraba/

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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