Feb 17, 2017 interview

第7回:映画業界は僕のような転職組でも受け入れてくれる土壌がある

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池ノ辺

かっこいいですね。

もう、その場面が映画みたい。

加茂

ところがその企画は色々あって流れてしまったんです。

映画業界では一度、企画が流れるということは中止になったということと一緒。

でも、やはりそれで根津さんの出演を流してしまいたくない。

それで『GONIN サーガ』の企画をあらためて立ち上げ、再度、石井監督から根津さんのところにオファーを出したんですけど、その時も快く「出るよ」と言ってくださったと伺っています。

もうね、『GONIN サーガ』の根津さんの出番の日の撮影の雰囲気は本当に神々しくて、僕、未だにあれを越える撮影に出合っていない。

小さなモニターを見ながら、スタッフの方々がずっと泣いているんですよ。

池ノ辺

ああ、そういう雰囲気は映画に出ますよね。

加茂

ええ、確実に出てくるんですよね。

もう撮影現場そのものが、厳粛な空間になっていましたから。

本当に俳優さんたちの力、映画の力、そこに俳優さんを連れてきた映画監督の力、スタッフの力、事務所の方々全てが凄いなと思った。

映画が完成した後、大泉の東映撮影所の試写室での初号試写の時、根津さんは車いすで来られたんですよ。

石井監督が、根津さんは試写室の真ん中の一番いい席にとそこをキープしていたんだけど、ひな壇になっているから車椅子では上がれない。

そこで、僕がおぶっていくことになったんです。

体力だけは普段から鍛えているので自信がある(笑)。

もちろんひとりでは何かあったらまずいので何人かで補助してもらいながら席まで運んだんです。

そのときの光景は未だに鮮明に覚えています。

昨年、根津さんが亡くなられたとき、ものすごく残念だと思う気持ちがありました。

同時に、『GONIN サーガ』に出て頂けて、「本当にありがとうございました」の感謝の気持ちでいっぱいになりました。

出て頂いてホントに良かったと。

本当はこういう話は心に閉まっておいて、誰にもする話ではないかもしれないけど。

池ノ辺

いや、いい話じゃないですか。

映画と共に生きるというのはそういうことだと思います、一緒に人生を歩んでいくことができるのもの。

加茂

僕は石井監督と根津さんの関係を石井監督から見聞きして、映画というもので人と人の絆と繋がりを大切にしなければと、なので、ああ、そこに自分の人生も関わったんだなと思いました。

池ノ辺さんは、この連載のタイトルに「映画は愛」という言葉を掲げていますけど、本当にそうだと思う。

GONIN サーガ』は残念なことに映画興行は思うようにいきませんでしたが、あの根津さんの最後の撮影現場の日と初号試写の日は、僕にとっては宝物ですね。

今回『沈黙 サイレンス』でスコセッシ監督の「原作をリスペクトする、現場をリスペクトする、俳優さんをリスペクトする、スタッフをリスペクトする」という作品にまた出会えたというのはほんとうにうれしいですよ。

現場をのぞいてみたかった、やっぱり。

池ノ辺

この仕事をしていると、そういう宝物がいっぱい増えてくるから。

加茂

だから、やめられまへん、なんですよ(笑)。

僕は映画業界デビュー2002年で遅かった分だけ、自分の気持ちがまだ新鮮なんですよ。

まだまだ鼻たれ小僧(笑)

池ノ辺

まだまだ映画人生続きますから。

加茂さん、本当に面白い人生だ。

加茂

映画業界ってプロパーで入ろうと思うとすごく難しい業界で、まず、入れない。

でも、僕のような転職組でも受け入れてくれる土壌がある。

ただ、その分、運を根性で引き付けないといけない。

自分の人生でいろいろな方々に助けていただいた。

繰り返しですがだからこそ人との繋がりを大切にしなくちゃと思っています。

今回、面白くもない話を聞いていただいてあざーす!

池ノ辺

加茂さんのモットーですね、「根性があれば、運は切り開かれる」。

今回はものすごく勇気を頂いたお話でした。ありがとうございました!

(文:金原由佳 / 写真:岡本英理)


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『沈黙 サイレンス』

アカデミー賞受賞監督のマーティン・スコセッシ監督が「どうしても自分の手で映画化したい」と願って28年、遂に遠藤周作の小説「沈黙」を映画化。江戸初期の日本を舞台に、キリシタン弾圧とイエズス会宣教師たちへの迫害通して、人間にとって大切なもの、そして人間の弱さとは何かを描き出したヒューマンドラマ。キリシタン弾圧を推し進める井上筑後守を演じたイッセー尾形さんが、LA映画批評家協会賞の助演男優賞の次点に選ばれた。主人公ロドリゴ役を「アメイジング・スパイダーマン」のアンドリュー・ガーフィールドが演じた。そのほかキチジロー役の窪塚洋介をはじめ、浅野忠信、塚本晋也、小松菜奈ら日本人キャストが出演。

監督:マーティン・スコセッシ 脚本:ジェイ・コックス、マーティン・スコセッシ 出演:アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライバー、浅野忠信、窪塚洋介、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシ ほか

全国公開中

http://chinmoku.jp/

PROFILE

■加茂克也(かも・かつや)

株式会社KADOKAWA 映像事業局 邦画・洋画ディビジョン マネージャー 1959年生まれ。大学在学中、サッカー選手契約(読売クラブ1969 現東京ヴェルディ)戦力外通告後、ワーナーランバート、ネスレジャパンを経て2002年パラマウント ホーム エンタテインメントに入社。 2007年角川エンタテイメントに入社後、角川映画、角川書店を経て現在に至る。

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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