- 池ノ辺
-
そこからどうやってネスレに行ったのですか?
- 加茂
-
さすがに、こんな毎日はよくないなと、一年半でその会社を辞めたんです。
これは一度人生をリセットしなきゃ、と。
でも、辞めた後、希望もなく精神状態が悪かった(鬱じゃないですけど)。
その時点でもまだ、サッカーのことを諦めきれてないから、どんな仕事もやりたい仕事じゃない。
いやいや、食うためにやっている感じで、このままではろくな人間にならないと。
仕事を辞めた後、そのころは飲食店やデパートの野菜果物売り場でアルバイトしてました。
アルバイトをしている中でたまたま、ワーナーランバートの求人広告を見つけたんです。
クロレッツやシックのカミソリを売っている会社ですけど、これも外資系で、週休二日、直行直帰、営業は車を支給、ボーナス7ヶ月。
「これ、いいじゃん!」と受けたら受かっちゃった。
後で聞いたら、その時、人が足りなくて、誰でもいいから入れちまえ!みたいな感じだったんだそうです。
体力だけはありそうで理不尽にたえられそう(笑)という理由で。
当時の外資系の営業は、会社を渡り歩いた海千山千の曲者ぞろいでした。
- 池ノ辺
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ぷらぷらしてたのに?
- 加茂
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まあ、そんなところです。
- 池ノ辺
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バブルだったんですか?
- 加茂
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いや、タイミングでしょう。
しかし僕が入社したときは日本で売り上げが30億しかなかったんですよ。
で、僕がネスレに入るために辞める時、部門の売り上げが300億円になっていた。
- 池ノ辺
-
すごい、10倍じゃないですか!
- 加茂
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そうそう、15年でね。
結構楽しいし、いい会社でした。
- 池ノ辺
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そんなイケイケだったのに、辞めちゃったんですか?
- 加茂
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ワーナーランバートで、僕は最終的に150人近くいた東日本の営業の統括部長をしていたんです。
外資系の企業はどこもそうだと思いますけど、部長までは上がれても、それ以上のポジションはヘッドハンティングで入ってきた人や海外の本社から人がやってくるから、そこ止まりなんですね。
英語もそんなにできないし・・・。
その時、まだ37歳だったから、このまま、ずっと同じ仕事だともう先がない。
そのとき、ちょうど、ヘッドハンターから電話がかかってきて、何社のうちかで、縁があって結局ネスレに行ったんです。
- 池ノ辺
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なるほど。
では、次に、私たちの知られざるヘッドハンティングされた時のお話を聞きますね(笑)。
(文:金原由佳 / 写真:岡本英理)
『沈黙 サイレンス』
アカデミー賞受賞監督のマーティン・スコセッシ監督が「どうしても自分の手で映画化したい」と願って28年、遂に遠藤周作の小説「沈黙」を映画化。江戸初期の日本を舞台に、キリシタン弾圧とイエズス会宣教師たちへの迫害通して、人間にとって大切なもの、そして人間の弱さとは何かを描き出したヒューマンドラマ。キリシタン弾圧を推し進める井上筑後守を演じたイッセー尾形さんが、LA映画批評家協会賞の助演男優賞の次点に選ばれた。主人公ロドリゴ役を「アメイジング・スパイダーマン」のアンドリュー・ガーフィールドが演じた。そのほかキチジロー役の窪塚洋介をはじめ、浅野忠信、塚本晋也、小松菜奈ら日本人キャストが出演。
監督:マーティン・スコセッシ 脚本:ジェイ・コックス、マーティン・スコセッシ 出演:アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライバー、浅野忠信、窪塚洋介、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシ ほか
全国公開中
PROFILE
■加茂克也(かも・かつや)
株式会社KADOKAWA 映像事業局 邦画・洋画ディビジョン マネージャー 1959年生まれ。大学在学中、サッカー選手契約(読売クラブ1969 現東京ヴェルディ)戦力外通告後、ワーナーランバート、ネスレジャパンを経て2002年パラマウント ホーム エンタテインメントに入社。 2007年角川エンタテイメントに入社後、角川映画、角川書店を経て現在に至る。