- 池ノ辺
-
で、どうだったんですか、反応は?
- 栗原
-
僕は配信の手続きなどで会場の外で仕事をしていたんですが、中にいた人に聞くと、場面によっては大きな笑いが起き、最後はものすごいスタンディングオベーションでした。
映画が終わって、皆さんが出てくる頃には、ロビー会場がパーティ会場に早変わりして、その変化にも驚きました。
- 池ノ辺
-
映画の感想は聞きました?
- 栗原
-
それがこの作品の興味深いところだと思うのですが、みなさん、タイトル通り、沈黙になる。何も言えなくなるんですよね。
- 加茂
-
それだけ重くて深いテーマを扱っているからですよ。
- 栗原
-
本当に見る人によって、いろんな受け取り方がありますから。
ある人は、イッセー尾形さんが演じた長崎奉行所の井上の人物像にすごく興味を引かれたと言えば、ある人は、窪塚さんが演じたキチジローが最高だという。
ある人は、アンドリュー・ガーフィールド演じるポルトガル人のイエズス会の司祭に寄り添いながらも、棄教を迫る通辞役の浅野さんが素晴らしかったと言えば、ある人は、今回、役者として参加した塚本監督の迫真の場面が素晴らしいという。
ただ、共通して言えてるのは、作品自体がものすごいパワフルで、思慮深いと。
オーセンティック、つまりはこの映画は本物だという言葉や、ビューティフルもよく聞く言葉でしたね。
公開前に一部、ネットで「長いんじゃないか」と書かれて、ちょっと心配したんですけど、そこは僕が聞いた限りでは、誰も言っていなかった。
- 加茂
-
みなさん、そう簡単に感想を言えないのは、やはり宗教の問題を扱っているからですよね。
- 栗原
-
ええ、私が話した方はクリスチャンの方が多かったのですが、この作品が描く宗教と信仰の問題をどう解釈し、どう説明していいのか、一生懸命、言葉にしようと考え、探されている印象でした。
これは日本のマスコミ試写でも全く同じなんですけど、見終わったその場では、すぐに言葉にできない。
「なんだろうこの感じ?」という。
でも、見終わって時間が経っても、ずっと何かが残っている。
皆さん、それぞれの自分の立場によって感じるところも感じ方もさまざまです。
- 加茂
-
評論家の方々も同じようなことを話していましたね。
とにかくこの映画は、消化するのに時間がかかる。
それは本物だからなんですよ。
(文:金原由佳 / 写真:岡本英理)
『沈黙 サイレンス』
アカデミー賞受賞監督のマーティン・スコセッシ監督が「どうしても自分の手で映画化したい」と願って28年、遂に遠藤周作の小説「沈黙」を映画化。江戸初期の日本を舞台に、キリシタン弾圧とイエズス会宣教師たちへの迫害通して、人間にとって大切なもの、そして人間の弱さとは何かを描き出したヒューマンドラマ。キリシタン弾圧を推し進める井上筑後守を演じたイッセー尾形さんが、LA映画批評家協会賞の助演男優賞の次点に選ばれた。主人公ロドリゴ役を「アメイジング・スパイダーマン」のアンドリュー・ガーフィールドが演じた。そのほかキチジロー役の窪塚洋介をはじめ、浅野忠信、塚本晋也、小松菜奈ら日本人キャストが出演。
監督:マーティン・スコセッシ 脚本:ジェイ・コックス、マーティン・スコセッシ 出演:アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライバー、浅野忠信、窪塚洋介、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシ ほか
1月21日から全国公開。
PROFILE
■加茂克也(かも・かつや)
株式会社KADOKAWA 映像事業局 邦画・洋画ディビジョン マネージャー 1959年生まれ。大学在学中、サッカー選手契約(読売クラブ1969 現東京ヴェルディ)戦力外通告後、ワーナーランバート、ネスレジャパンを経て2002年パラマウント ホーム エンタテインメントに入社。 2007年角川エンタテイメントに入社後、角川映画、角川書店を経て現在に至る。