Dec 27, 2016 interview

第4回:公開から3日間で興行収入9億7500万円を突破! 大ヒットスタートを切った「バイオハザード」最終章

A A
SHARE
ikenobe_banner

池ノ辺直子の「新・映画は愛よ!!」

Season12  vol.04 株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 業務執行役員 映画部門日本代表 佐野 哲章 氏

4-2_-x_dsc0655

映画が大好きで、映画の仕事に関われてなんて幸せもんだと思っている予告編制作会社代表の池ノ辺直子が、同じく映画大好きな業界の人たちと語り合う「新・映画は愛よ!!」 第4回は、大ヒットスタートを切ったばかりの『バイオハザード:ザ・ファイナル』をはじめ、これまで佐野さんが手掛けた数々の映画作品についてお話を伺っていきます。

→前回までのコラムはこちら

池ノ辺直子 (以下 池ノ辺)

バイオハザードシリーズ、最高のスタートですね! おめでとうございます。

12月23日に公開されて25日までの3日間で累計興行収入9億7815万円って、スゴい数字ですね。

佐野哲章 (以下、佐野)

ありがとうございます。

池ノ辺

目標興行成績は?

佐野

50億以上です。

© 2016 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.

© 2016 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.

池ノ辺

これからお正月に向けて、達成の予感ですね。

これからの広告展開も楽しみです。

さて、話は佐野さんの今までのお仕事に戻ります。

1987年から1994 年までの間で、3つの会社を経験して、その後、ウォルト・ディズニー・ジャパン(旧ブエナ・ビスタ・ジャパン)へ移られたんですね。

佐野

それまでディズニー作品はワーナー・ブラザーズ映画に委託配給していたんですが、作品数が増えるということで、ウォルト・ディズニー・ジャパン(旧ブエナ・ビスタ・ジャパン)に95年から日本代表に就任しました。

池ノ辺

ちょうどその頃、私は、ワーナーブラザース映画から『美女と野獣』の予告編をつくる依頼があって、オフラインを組んでいたんですが、途中で「ワーナーではできなくなったの……。」と言われて、とても素敵な作品だったので、すごくがっかりしたんです。

すると、今度はディズニーさん(旧ブエナ・ビスタ・ジャパン)から直接電話をいただいて『美女と野獣』の予告編をつくることができんですね。

それは、最高にうれしかった。

佐野

そういうことがあったのですね。

1995年の『トイ・ストーリー』とかは思い出深いですね。

当時は、CGアニメってまだ違和感があった。

この配収はせいぜい5億円だなって思ったんだけど、本社は宣伝費に10億円使えという。

日本は難しいかもしれないけど、世界的には当たるから、と。

で、宣伝費で10億円使って、大赤字になった。

松竹系の劇場で5週間回したんだけど、本当は、客の入りが悪いから3週間で打ち切りになりそうになった。

そこを「ディズニーは今後もアニメに力を入れていきますから」とお願いをして、5週間に延ばしてもらった。

それでやっと5億円に到達したのが現実。

でも『トイ・ストーリー2』では興収が34億円、『トイ・ストーリー3』では100億円を超えた。

“その先を見据えた投資ができる”というのがメジャーのすごさのひとつですね。

池ノ辺

種を撒いたものが花開いた。

4-3_dsc0832

佐野

ディズニーのマーケティング・エンジンというのかな、ディズニーランドとのシナジー効果もあって、ハリウッドの他のメジャースタジオとは違う資質がありますね。

これはシリーズ化するんだと決まったら、最初は、やはり種を撒かなければならない。

これは我々は学ばなければいけない点だと思いました。

TVや漫画からアニメ化される日本のアニメと違って、洋画のアニメはほとんどゼロから認知度を上げて行かなければならないというハンディがあるのですから。

池ノ辺

他にディズニー時代の思い出はありますか?

佐野

『アルマゲドン』ですね。

池ノ辺

あの予告編は、ウチが手がけたものではないですが、伝説となっている予告編ですよね。

日本用に予告編を作り変えることは、本来は本国には好まれないけど、この作品に限っては、本国が大絶讃した、と。

佐野

どうしてOKになったか知っている?

あの作品は、日本が最後の公開国だったの。

だから好き勝手やっていいって許可がでた。

それで、エアロスミスのあのテーマ曲を1曲まるごと予告編に入れた。

池ノ辺

それを見たアメリカの人たちが、総立ちになって歓声を上げたという話を聞きました。

佐野

当時の会長のジョー・ロスが、「ブラボー!」と叫んだそうです。

その辺りから、日本は独自に予告編をつくっていいという暗黙の了解ができたんですね。

『アルマゲドン』は、130億円の大ヒットとなったけれど、今でもディズニーの実写映画の記録じゃないかな。

その後手がけた『パールハーバー』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』もヒットはしましたけど。

そういえば、ディズニーを辞めるとき、ブルース・ウィルスの顔の代わりに僕の顔をはめた『アルマゲドン』のポスターをもらいましたよ(笑)

池ノ辺

その後、現在のソニー・ピクチャーズ エンタテイメント に入るわけですね?

佐野

ソニー・ピクチャーズに行く間、6週間ほど休みをとりました。

本当は、9月末に辞めて、翌年の1月1日付けから出社したいと思っていたのだけれど、忙しいからそれじゃあ遅いといわれ、11月17日から出社したんです。

池ノ辺

せっかくだから、長期休暇が欲しかったですよね?

佐野

でも、結果的にそれがよかった。

11月下旬に挨拶のためにアメリカの本社に行ってそこで、クリエイティブや宣伝のオフィスに行ったら、『ダヴィンチ・コード』の宣材をつくっているところだったの。

そこであのルーブル美術館の床にキューレターが倒れている写真があった。

池ノ辺

そのヴィジュアル、よく覚えてます。

佐野

翌年の元旦の朝刊で、そのヴィジュアルを使って、「今年最大の事件です」というコピーで『ダヴィンチ・コード』の全面広告をうった。

93億円の興収となったのだけれど、いまだにあの映画がソニー最大のヒット作なんです。

もし、1月1日入社だったら、あの宣伝には間に合わなかった。

早く入社しなければならなくなったのも、神様のおぼしめしなのかな、と。

(文:立田敦子、写真:岡本英理)


© 2016 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.

© 2016 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.

『バイオハザード:ザ・ファイナル』

カプコンが誇る世界的人気ゲームを、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演で実写映画化した『バイオハザード』シリーズの最終章。

監督・脚本:ポール・W・S・アンダーソン 出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、アリ・ラーター、ショーン・ロバーツ、ルビー・ローズ、オーエン・マッケン、ローラ、イ・ジュンギ、ウィリアム・レヴィ、フレイザー・ジェイムズ、イアン・グレン、エヴァ・アンダーソン ほか

2016年12月23日(金・祝)より世界最速公開。

http://www.biohazard6.jp/

Loading the player...

PROFILE

■佐野哲章(さの のりあき) 株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント (業務執行役員/SVP 映画部門 日本代表)

1957年生まれ。1979年に日本ヘラルド宣伝部に入社。国際部・関西営業部を歴任。 1987年-1992年、ベストロン映画アジア地区代表取締役を経て、1992年アスキー・ピクチャーズ社長に就任。1994年にポリグラム極東地区担当マネージング・ディレクター、1995年にウォルト・ディズニー・インターナショナル・ジャパン(株) 旧ブエナビスタインターナショナルジャパン日本代表を経て現在に至る。2005年11月16日株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 業務執行役員/SVP 映画部門 日本代表に就任。

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
映画が大好きな業界の人たちと語り合う「映画は愛よ!!」記事一覧はこちら