池ノ辺直子の「新・映画は愛よ!!」
Season12 vol.01 株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 業務執行役員 映画部門日本代表 佐野 哲章 氏
映画が大好きで、映画の仕事に関われてなんて幸せもんだと思っている予告編制作会社代表の池ノ辺直子が、同じく映画大好きな業界の人たちと語り合う「新・映画は愛よ!!」 今回は、いま話題の映画『バイオハザード ザ・ファイナル』の公開を間近に控えた配給会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントで、映画部門の日本代表をつとめる佐野哲章さんをお迎えしました。これまで約40年に渡って関わってこられたさまざまな映画に関するお話を伺っていきます。
- 池ノ辺直子 (以下 池ノ辺)
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今回のゲストは、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントの映画部門 日本代表の佐野哲章さんです。
佐野さんは、年内でソニー・ピクチャーズ エンタテインメントを退職されるとお聞きしました。
長年に渡って映画界に貢献されてきた佐野さんですが、12月1日の映画の日には、第34回ゴールデングロス賞 全興連特別功労賞を受賞なさいました。おめでとうございます!
そして、12月7日には香港で「シネアジアLifetime Achievement Award」も受賞されたそうですね、素晴らしいです!
- 佐野哲章 (以下、佐野)
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ありがとうございます。
香港でいただいた賞は、ライフタイム・アチーブメントという、いわゆる功労賞のようなものですが、まあ、「サンキュー! グッド・バイ」って感じでしょうか(笑)。
私はソニー・ピクチャーズ エンタテインメントの前は、ディズニーにいたのですが、その時からひと周りした。
ひとつの区切りとして、今回は退職させていただきます。
映画業界ではなんらかの形で携っていくつもりですけどね。
- 池ノ辺
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映画界に入られてから何年ですか?
- 佐野
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38年ですね。不器用なので映画しかやったことがなく、映画しかできない。
とても素敵な業界で長い間仕事ができたことに感謝しています。
- 池ノ辺
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では、38年前、どうやって映画業界に入ったのかあたりからお話を伺えますか?
佐野さんは1957年生まれですね。
- 佐野
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はい。僕は生まれも育ちも横浜だったんですね。高校も地元。
その後、上智大学に入って、おこずかい稼ぎに大学3年生のときにアルバイトをしたのが、ヘラルド映画だったんです。
姉が、当時まだ日本支社があったユナイテッド映画で働いていて、姉の紹介でした。
- 池ノ辺
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ヘラルドは古川社長ですね?
- 佐野
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そうです。まだ、先代の古川勝巳社長の頃でした。
のちの古川博三社長がまだ常務だった頃ですね。
- 池ノ辺
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まだ、ヘラルドが新橋にあった頃ですね。
私も新橋の頃からお付き合いさせていただいていました。
- 佐野
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同じような時代を生きてきましたね。
もちろん、僕の方がちょっと年上ですけどね。
- 池ノ辺
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ヘラルドではどういうバイトをしていたのですか。
- 佐野
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当時、「選定試写」というのがあったんです。
配給会社が映画を観て、買うか買わないかを決めるための試写。
- 池ノ辺
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いわゆる買い付けのための上映会ですね。
- 佐野
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当時は、DVDじゃなくプリントの時代。そのプリントが各配給会社を回る。
僕は、アルバイトだから、なんでもいわれたことをやっていたんだけど、「ちょっとコレを一緒に観てくれ」っていわれて、なんていいアルバイトだろうって思ったんです。
映画は普通お金を払って観るものだと思っていたのに、時給800円もらいながら観られるんですから!
だから、2時間とか3時間とか長めの作品だと、「やったあ!」とか大喜び。
- 池ノ辺
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へ~!どんな映画だったんですか?
- 佐野
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それは、『クワイヤボーイズ』っていうコメディだったんだけど、覚えていない?ロバート・アルドリッチ監督の。
ロサンジェルスの7人の悪徳警官の話。試写室で観ながら、ゲラゲラ笑っていたら、当時の宣伝部長さんが、「どこが面白かったんだ?」って。
それでたかがアルバイトの僕が、役員たちに映画の面白さを説明したりしてね。
僕は、父親が貿易をやっていたせいもあって、英語を早くから勉強していたので、英語がわかったから、字幕がまだついていないそういう業務試写でも内容がよくわかったんですよ。
- 池ノ辺
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お父様は、貿易関係のお仕事だったんですね。
- 佐野
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兄弟でやっていましたね。僕は、姉ふたりと弟ひとりの4人兄弟だったのですが、父は僕たちに「お金は残せないけれど、教育だけはちゃんとさせる」といっていたのを覚えています。
これは、今でも父を尊敬しているところのひとつですね。
- 池ノ辺
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お~!素晴らしいお父様ですね。
- 佐野
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教育は、盗まれもしないし、税金もかかるわけじゃないですからね。
で、ヘラルドではバイトながら、通訳とかもやるようになり、出張にも行くようになりました、それが楽しかった。
ある時、総務部長に呼ばれて、5年間在籍すると約束すれば、社員にしてくれるといわれ、大学卒業後はヘラルド映画の社員として働き始めました。
親父に話したら、映画会社でいいのか?みたいなことを言われましたけどね。
- 池ノ辺
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要するに、お金が儲かる可能性のある商業ではなく、エンタメでいいのか?という(笑)。
- 佐野
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当時も映画業界は、次男坊、三男坊で自由にやっている連中ばかりでしたからね。
僕は、長男だったけど。でも、やってみたかった。
今でも素晴らしい業界に入ってよかったと思っていますよ。
(文:立田敦子、写真:岡本英理)
『バイオハザード:ザ・ファイナル』
カプコンが誇る世界的人気ゲームを、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演で実写映画化した『バイオハザード』シリーズの最終章。
監督・脚本:ポール・W・S・アンダーソン 出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、アリ・ラーター、ショーン・ロバーツ、ルビー・ローズ、オーエン・マッケン、ローラ、イ・ジュンギ、ウィリアム・レヴィ、フレイザー・ジェイムズ、イアン・グレン、エヴァ・アンダーソン ほか
2016年12月23日(金・祝)より世界最速公開。
PROFILE
■佐野哲章(さの のりあき) 株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント (業務執行役員/SVP 映画部門 日本代表)
1957年生まれ。1979年に日本ヘラルド宣伝部に入社。国際部・関西営業部を歴任。 1987年-1992年、ベストロン映画アジア地区代表取締役を経て、1992年アスキー・ピクチャーズ社長に就任。1994年にポリグラム極東地区担当マネージング・ディレクター、1995年にウォルト・ディズニー・インターナショナル・ジャパン(株) 旧ブエナビスタインターナショナルジャパン日本代表を経て現在に至る。2005年11月16日株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 業務執行役員/SVP 映画部門 日本代表に就任。