森田望智インタビュー 慈しみをもって人の生を感じる『ほどなく、お別れです』
浜辺美波、目黒蓮 W主演の映画『ほどなく、お別れです』が2月6日に公開される。初共演の2人が熱演するのは、生と死に向き合う葬祭プランナー。就職活動に失敗し途方に暮れる中、とあるきっかけで葬儀会社にインターンとして働くこととなったヒロインと、そんな彼女を厳しく指導する指南役の葬祭プランナーがタッグを組み、最高の葬儀を目指す感動の物語だ。
葬祭プランナーとは、遺族の希望に沿って故人に合った葬儀を提案し、すべての手配と進行(葬儀の段取り、会場設営、式の進行など) を執り行い、悲しみに暮れる遺族を支える仕事。本作において、主演の2人を支えるのが、Netflixシリーズ『全裸監督』での演技が評価され、ドラマ・映画を問わず数々の作品に出演し、「第50回報知映画賞」「第68回ブルーリボン賞」では助演女優賞を受賞した森田望智。
2027年度前期連続テレビ小説「巡るスワン」のヒロインに決まっている彼女に、役作りへのこだわりや撮影現場でのエピソードを伺った。

本物の葬儀プランナーとしての佇まい
——この作品への出演が決まった際の心境を教えてください。
私が演じた葬儀プランナーの赤坂陽子という役は、フォーカスされる役ではなく浜辺さん演じる清水美空の先輩として、目黒蓮さん演じる漆原礼二の同僚として、彼らを見守るようなポジションです。”実際にこの職業に就かれている方々に失礼のないよう挑まなくては”と思いました。
撮影前には、現役の葬祭プランナーの方々にお会いする機会をいただきました。話し方や振る舞い、ご葬儀の際の流れなどを教えていただいて、すごくいい体験ができました。葬儀プランナーの皆さんは、私が抱いていたイメージと全く違って、明るく朗らかな方々が多く、また真心のこもった声で遺族の方と接していらっしゃることが、とても印象的でした。お話ししていると心が落ち着いていくような佇まいで、単純に「明るい」「朗らか」という言葉だけでは表現できない慈しみがありましたし、聖なる場所で働く方ならではの雰囲気を役作りの一番大事なポイントに据えました。
監督からも「作品の特性上、ご葬儀の話がメインで緊張感があるシーンが多くなるので、赤坂には、温かさや明るさが欲しいです」とリクエストがありました。私自身も、”ご葬儀って厳かな雰囲気だし、そういう役って必要だな”とは思っていましたが、実際に葬儀プランナーの方々とお話していると、”私が演じた赤坂陽子さんは、本物の葬儀プランナーが持つ空気感に一番近い役かもしれない”と考えるようになりました。やりがいがあると言いますか、赤坂陽子として現場に立ちたいなと率直に思いましたし、そんな役をいただけて嬉しかったです。

浜辺美波と目黒蓮が作り上げた撮影現場
作品のテーマは重たかったり悲しかったりしますが、お二人とも切羽詰まることがなく、すごく穏やかな雰囲気でしたね。
浜辺さんは、その華やかさと優しさで、周囲に絶えず話しかけて現場を和ませてくださっていました。すごく心強かったです。目黒さんは、本番以外でも、役柄である漆原礼二として存在しているような方でした。空き時間も納棺師の所作をずっと練習されていて、お芝居に対して誠実な方なんだなと感じていました。
浜辺さん、目黒さんのお二人が作られたご葬儀の空気感から、撮影現場は始まっているなと思います。




葬儀は”死”だけでなく”生”も見つめる場所
——本作を通じて、ご葬儀に対するイメージは変わりましたか?
ご葬儀って「故人様とお別れする会」だと思っていたんです。撮影現場で、遺族役の皆さんのお芝居を目の当たりにしていると、自分が想いを吐き出し、背負っていたものを下ろして安心した表情になるんですよ。
ご遺族の方々が大切な方とお別れをして、「これから自分は、どう人生を歩んでいくか」という、死と生を同時に感じました。ご葬儀は”死と向き合うだけではなくて、生きることに対しても真摯に向き合うことなんだ”と強く感じました。
私自身の過去の経験を振り返っても、祖父母が亡くなって確かに悲しかったけれど、思い出にあるのは、祖父母の笑顔だったので、”私はいい送り出し方ができたんだな”と気づけました。








役作りは最初に浮かんだ色で決める
——本作公開後も映画『レンタルファミリー』の公開、2027年にはNHK連続テレビ小説「巡るスワン」主演と出演作がたくさん控えています。大変ご活躍ですが、お芝居に対する姿勢や心境の変化はありましたか?
いや、それが全くなくて逆に不思議ですね (笑)。いつものとおり、自分にできる範囲でやれることをやれたらいいなと思っています。
——時には肉体改造に取り組むなど、様々なタイプの役柄を演じていらっしゃいます。役柄に対するアプローチはどう考えていらっしゃるんですか?
台本を読んだときの第一印象が一番大きいですね。キャラクターの核というより、パッと浮かんだイメージカラーや雰囲気など、ぼんやりしたものをベースに考えていくことが多いです。実写化作品だったら原作のイメージを大事にしているんですが、作品にもよっては、どんなに考えても結局、第一印象に戻ってきちゃうんです。第一印象間違えたかもと思って試行錯誤しても、結局、初見のイメージが一番しっくりくることが多いので、その直感を大切にしています。
——イメージカラーというのはオーラみたいなものですか?
いやいやオーラは見えません (笑)。全然スピリチュアル的な意味ではなく、どんな色が混ざっている感じの役かな? って考えます。例えば、Netflix映画の『シティーハンター』の場合だと、私が演じた (槇村) 香ちゃんって、濃い紫とか深緑みたいな感じはしないですよね。どちらかというと、黄色とか山吹色とかオレンジみたいな色のイメージの方が皆さんのイメージだと思うんです。そういうざっくりとした雰囲気ですかね。最初はそんなイメージを持って、いつも役作りが始まります。
今作の赤坂さんは、日常のシーンでは暖色系なイメージを意識しましたが、葬儀の場ではその会場の空気に染まることができるような、1色ではないイメージで演じました。環境によっても変わりますし、出会った人との関わりによっても変わってくるとは思うんですよね。

私はちゃんと人間関係を築きたい
——完成した本編をご覧になって、どのような感想を持ちたれましたか?
エンドロールが終わるころには、大号泣していました。それは悲しくて涙を流した、というより、自分の中にあった悲しみが昇華されるような、心が少し晴れやかな涙でした。もし明日お別れが来たら、私は家族の笑顔をちゃんと思い出せるんだろうか? そう考えたら、後悔ないように、言いたいことは言って、やりたいことは一緒にやっておきたい。自分が見送られる立場でも、最期のお別れのときに、”笑顔をたくさん思い出してもらえるような人生を私は送りたい”と、この作品で強く感じました。
ご葬儀はその人との思い出を強く心に刻み込まれる時間なんですよね。単純に”死”というお別れではなく、遺された人の”生”を感じた現場でした。ご葬儀に対するイメージはすごく変わりました。もちろん悲しいことなんですけど、それだけではない。私はちゃんと人との関係を築きたい。前向きに人と向き合っていこうという気持ちになりました。お別れって絶対に訪れることですよね。大切な人との思い出を胸に抱きしめながら、未来に進んでいけるような作品になっています。
観てくださる皆さんも、悔いを残さないように、大切な人の一番いい顔を心に刻めるように、そう過ごしていけるきっかけになるように、そんな気持ちが届いたら嬉しいです。
取材・文 / 小倉靖史
撮影 / 岡本英理
ヘアメイク: 尾曲いずみ / スタイリスト: 丸山晃


映画『ほどなく、お別れです』
就職活動で連戦連敗の清水美空。そんな彼女が、ひょんなことから葬祭プランナー・漆原礼二と出会い、導かれるように葬儀会社「坂東会館」でインターンとして働き始める。教育係となった漆原からの厳しい指導の数々に、日々心をくじかれそうになる美空だったが、彼の遺族や故人にとことん寄り添う心遣いや所作、そして出棺のときに優しく「ほどなく、お別れです」と告げる姿にいつしか憧れを抱くようになる。永遠の別れは、誰にでもやってくる。残された遺族だけでなく、故人も納得できる葬儀とは何か。美空は、漆原と一緒にその問いに向き合うなかで、彼の背中を追いかけるように自身も葬祭プランナーを目指すことを心に決める。そして「ほどなく、お別れです」の言葉に込められた本当の意味を知っていく。
監督:三木孝浩
脚本監修:岡田惠和
原作:長月天音「ほどなく、お別れです」シリーズ(小学館文庫)
出演:浜辺美波、目黒連、森田望智、古川琴音、北村匠海、志田未来、渡邊圭祐、野波麻帆、西垣匠、久保史緒里、原田泰造、光石研、鈴木浩介、永作博美、夏木マリ
配給:東宝
©2026「ほどなく、お別れです」製作委員会 ©長月天音/小学館
2026年2月6日(金) 全国公開
公式サイト hodonaku-movie.toho