Oct 01, 2025 interview

映画『火喰鳥を、喰う』水上恒司×山下美月インタビュー 新しき昭和的怪奇譚に挑む平成生まれのふたり

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26歳のふたりが執着すること

——本作のポイントは、⼈間の強い執着がもたらす出来事であると考えています。おふたりは、どうしても執着してしまうことはありますか?

水上 執着かぁ‥‥死ぬ時はパートナーに看取ってほしいですね。先にパートナーに死んでほしくない。自分が先に死にたい。

山下 ああ、素敵。

水上 結構みんな思うんじゃない? 僕の母親は逆で、相手を看取って死にたいらしいけど。あと豚骨ラーメンは絶対麺カタメの方がいい。ハリガネとか。

山下 私は何だろう? 急ぎたくない、かな。準備とか本当に急ぎたくないんですよ。ゆっくりしたいんです。これは譲れない。

水上 優雅な朝を過ごしていらっしゃる、と。

山下 誰かに「急いで」って言われても急ぎ方がわからない。どうしたらいいんだろう‥‥。

水上 じゃぁ「急ぎたくない」じゃなくて、そもそも「急げない」んじゃん。

山下 そうですね(笑)。

日本らしい心地悪さが面白い

——本作は懐かしい昭和ミステリー・ホラーを彷彿させる作品でした。完成された本編をご覧になっていかがでしたか?

山下 原作小説を読んだとき、”重厚感がありつつ、どこか軽快に読める作品だな”という印象を受けました。そんな原作の文学的な部分をちゃんと映像にも反映できた映画だと思います。いわゆるホラー映画の、何かがバッ!て出てきて音がなるみたいな。そういった恐怖は、この作品には出てきません。

暑苦しい夏、セミの鳴き声が響くなかでの恐怖。何かがずっとそこにいるような、何かに追いかけられているような、そんな不気味さ。日本らしいゾクゾクとした心地悪さを感じられる。そこが個人的に好きなポイントです。

水上 ホラー作品にあまり触れてこなかったので、比較の対象が少ないんですが、僕にとっては、ただただ新鮮な作品でした。

撮影している中で、演出がわからなくなったとき、本木監督の『シャイロックの子供たち』を拝見して、その意図がわかったんです。完成した本編を観たら、その時に得た確信が”やっぱりそうだったんだ”と思えて、より理解が深まりましたね。作品としての見せ方、間合いの取り方。そのリズム感が非常に面白かった。

『火喰鳥を、喰う』は、素直に面白いなって思える作品になりました。自分が携った作品を観るとき、どうしても自分の粗探しをしてしまうので、純粋に面白いって思えることってあまりないんですよ。しかも今回は、座長として作品に参加させてもらって、至らない点もあったんですけども、そう思えたのですごく幸せでしたね。

取材・文 / 小倉靖史
撮影 / 岡本英理

作品情報
映画『火喰鳥を、喰う』

信州で暮らす久喜雄司と夕里子の元に戦死した先祖の久喜貞市の日記が届く。最後のページに綴られていたのは「ヒクイドリ、クイタイ」の文字。その日を境に、墓石の損壊、祖父の失踪など、幸せな夫婦の周辺で不可解な出来事が起こり始める。超常現象専門家・北斗総一郎を加え真相を探るが、その先に現れたのは驚愕の世界だった。

監督:本木克英

原作:原浩「火喰鳥を、喰う」(角川ホラー文庫刊)

出演:水上恒司、山下美月、森田望智、吉澤健、豊田裕大、麻生祐未、宮舘涼太(Snow Man)

配給:KADOKAWA、ギャガ

© 2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会

2025年10月3日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

公式サイト gaga.ne.jp/hikuidori/