Mar 18, 2017 interview

いよいよ最終回!『視覚探偵 日暮旅人』荻野哲弘プロデューサーに制作の舞台裏や続編の可能性などを聞いた

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──荻野さんと堤監督との出会いは。

堤さんが『金田一少年〜』をはじめ土9のドラマを撮っていた頃は、接点がありませんでした。僕は石橋冠さんという『池中玄太80キロ』をつくった方に教えを受けたものですから。僕が日本テレビに入ったきっかけは大学時代に参加した “学生プロデューサー会議”で、石橋さんは、そこの担当教官だったんです。その後、いわゆるスタジオドラマで育ってきた僕にとっては、堤さんのロケ主体、スタジオでも屋根と壁で囲ってしまう撮り方は、先達の教えを受けた者から見たら邪道でしたが、逆に、これまでと違うことをやっている堤さんがキラキラして見えてもいました。それから20年近く経って、堤さんが久しぶりに日テレで撮ることになったとき僕がプロデュースすることになって、これはリミッターかけずにやるぞと覚悟を決めたものです。実際、一緒にお仕事をして監督の力に圧倒されて、それまでずっと演出もやりたいと思っていたので、名刺に“プロデューサー”と入れてなかったのですが、ついにプロデューサーのみにしたほどなんですよ。

──他には何か監督が足したユニークなアイデアはありますか。

2015年に放送されたスペシャルドラマのとき、脚本のクライマックスシーンが難航していたら、堤さんが、東大卒のテレビマンがスタジオジャックするっていうのはどうですか? と言い出されたんです。僕が東大卒だと知らずに(笑)。それで僕があの場面で落合モトキさんが言うテレビ局の悪口の元になるものを書きました。エレベーターが遅いとか(笑)。9時台後半から10時をまたいだところで、主人公たちがほとんど出ず、落合さんがテレビ局の悪口を延々言っていたにもかかわらず視聴率は良くて(笑)。おかげさまで、いま、こうして連続ドラマになりました。
連ドラのほうでいうと、上田竜也さんが演じる亀吉が、第1話で『夢の中へ』を鼻歌で歌うと音程がめちゃくちゃで旅人にはその歌がわからない場面がありましたが、音程を変えたのは堤さんのアイデアでした。その音痴ネタが、8、9話でまた生かされます。第8話で、上田さんにアコーディオンをちゃんと弾きながら音痴に歌うという難易度の高いことを監督がさせたのは、テレビで上田さんがピアノが弾けると聞いて思いついたそうです。で、その映像のあとに、ものすごくシリアスなシーンに切り替わる落差に驚きますよね。今回、堤さんは上田さんに極端なことをたくさんさせて、上田さんはそれに十分応えていました。2000年〜2001年にかけて日曜日の午前中にジャニーズJr.主演のドラマ枠があって、僕は『行け行けイケメン!』と『史上最悪のデート』をプロデュースしていまして、亀梨和也さんが主役の回に、上田さんに少しだけ出てもらったんですよ。それから彼に注目していて、今回、出てもらえて僥倖でしたね。

──荻野さんはジャニーズの若手に詳しいんですね。

第3話に出た福田悠太(ふぉ〜ゆ〜)さんも『史上最悪のデート』で出会いました。当時はまだ幼かったけれど、どこか他のジュニアと違う印象があって気になっていたところ、堂本光一さんの『Endless SHOCK』のバックで踊っていたのを観て、確信を抱きキャスティングしました。今回、あのとき以来の本格的なドラマ出演だったそうですが、いい芝居をしてくれました。

──最終回の流れは、原作とは同じ展開なのでしょうか。

全9話のベースは原作のファーストシーズンの4冊で、セカンドシーズンからもいくつかエピソードを引っ張ってきています。結末も、原作に近いとはいえ、けっこう変えていて、でも原作の精神は守っているつもりですので、原作ファンの方々にも受け入れていただけると思っています。

──堤監督がドラマ開始のときのインタビューで、とてもダークなものになると言っていましたが、確かにどんどんダークになっていきました。

スペシャルドラマは、ほのぼのヒューマンミステリーみたいな感じで、連ドラの第1話もけっこう笑える脚本になっていましたが、原作自体がダークファンタジーなので、次第にダークになっていくのは狙い通りでした。

──ヒューマンミステリーだと雰囲気的に土9のイメージもありましたが。

表向きそうでも、ロストというドラッグが出てくる時点で土曜9時では扱えないんです。ましてや子供を誘拐監禁してドラッグ漬けにして精神的な虐待なんて無理です。とにかく第8話から最終回にかけてハードなんですよ。どんどん人が倒れていきます。でも堤さんが撮ると、ダークなだけにならず、けっこう楽しめます。最終回のPRスポットは、すごいですよ。どんどん人が倒れていくところばかりを集めました。これは、第3話の演出を担当した髙橋洋人さんがつくっていて、彼は大変才能がありますね。