Aug 17, 2017 interview

広瀬すずインタビュー「なずなの色っぽさを声で表現できるよう意識しました」

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いつか王道ヒロインにふさわしい人になれたら

 

──少し話は逸れますが、広瀬さんの考える理想のヒロイン像は?

小さい頃からドラマを観ていて、月9ドラマでヒロインを演じられている女優さんに憧れていました。髪が長くて、きれいで、お姫様みたいで素敵だなって思いながら観ていたんですよ。

──いずれは広瀬さんもそんな王道ヒロインを演じてみたいなと思ったり?

私は全然タイプが違うので難しいと思いますけど、今まで女の子らしい役を演じたことがないんですよ。ヒロインというポジションをいただいても、ガサツだったり、生意気だったり、そんな役を演じさせていただくことが多くて(笑)。いつか私自身がそういう役にふさわしい人になれたら、チャレンジできたらいいですね。

 

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──今作では“不思議な玉”が出てきて、典道の“もしも”を何度もやり直させてくれます。広瀬さん自身もしもあのときに戻れるとしたら、いつ、どんなタイミングでやり直したいですか?

うーん、小2のときかもしれません。私、小2からバスケを8年間やっていたのですが、お母さんに言われて人数合わせでチームに入ったのがきっかけだったんです。もちろん長く続けられたのは楽しかったからなんですけど、自分で決めたことではなかったので、もし自分の意思で初めてたらもっと違う結果になっていたのかな、と。そう考えると私、自分で大きな物事を決めたことがないんですよ。このお仕事を始めたことも、地元じゃなくて東京の高校に進学したことも、周りの方の意見やそのときの流れに従ったという感覚で。大学に関しても考える時間も取れないまま、高校を卒業してしまって。それだけお仕事でチャンスをいただけているってことだから、ありがたいなあって思うんですけど、自分で大きな決断をしたことがないから、意見を言うことが苦手になってしまって。このまま大きな流れに身を任せていてもいいのかな、って考えちゃうこともあるんです。だから私にとっての“もしも”はすべての発端でもあるバスケを始めた小2から、かな。

 

サブ6

 

──作中で松田聖子さんの「瑠璃色の地球」をカバーという形で、初めて歌声も披露されていますね。

最初にそのお話を聞いたときは、“どうしよう……”という感じで。カラオケは好きでよく行くんですけど、人前で歌うっていうのは、不安で仕方がなかったです。松田聖子さんの曲は『赤いスイートピー』をカラオケで歌うくらい好きなんですけど、『瑠璃色の地球』はきちんと聴いたことはなかったんです。でもシーンとして、なずながお母さんがよく聴いていた曲をうろ覚えの状態で口ずさむ、という場面だったので、少しだけ心が楽になりました。なずながなんとなく歌っている内に気持ちよくなって歌の世界に入り込んでいくのですが、アニメーションならではのファンタジックな表現で展開していって、私の歌は置いておいて(笑)、とても素敵なシーンになっていて良かったです。でもやっぱり、歌うのはなるべくこれで最後にしたいくらい、全然自信がありません。

 

サブ1

 

──すごく素敵な歌声だったのでまたどこかで耳にできるタイミングを心待ちにしています。本編を通してどんな作品に仕上がっていると感じました?

メインビジュアルなどを観るとさわやかな青春ストーリーなのかなと感じる方も多いと思うのですが、美しさの中に毒々しさのある表現もあって、私自身もびっくりしてしまうほどでした。実写作品がすでにあるものを、あえてアニメ化するおもしろさっていうのは必ずあると思っていて。特に私が感動したのは、花火の音なんです。花火が上がるときの音の表現が、アニメーションならではだなって。ひとつ一つのシーンがまるで芸術品みたいなんですよ。私と同年代の方はもちろん、大人の方が観ると感じるものがあるんじゃないかな、と思います。

──また声のお仕事にチャレンジしてみたいですか?

はい、チャンスがあればもっとやってみたいです。『バケモノの子』での経験がすごく楽しかったので、今回なずな役でお話をいただいたときはうれしくてガッツポーズをしてしまったくらいです。でもよく考えると『バケモノの子』って私以外のキャストさんは全員バケモノの役を演じられていて。今後もし声のお仕事をいただいても必ずしも人間とは限らないってことに気づいてからは、ちょっとドキドキするようになってきました(笑)。すごく難しそうですけど、世界も広がるだろうし、人間以外の役にもどんどん挑戦もしてみたいですね。

 

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──最後に、広瀬さんオススメの1冊を伺えたらと思います。

押見修造さんの「悪の華」という作品です。姉(広瀬アリスさん)が大の少年マンガ好きなので家にたくさんマンガがあるんですけど、小学生の頃に姉に内緒で偶然手に取ったのが「悪の華」だったんです。それまでの私はマンガや本に興味がなかったのですが、たまたま読んだこの作品に強い衝撃を受けて、一気に読破してしまいました。思春期の男女の持つドロドロとした感情がリアルに描かれていて、まさに“闇”という感じの世界観なのですが(笑)。この作品に出てくる仲村さんという女の子の放つ「クソムシが」というセリフとコマの破壊力が圧倒的で、見るたびに私のちっぽけな悩みが吹き飛んでしまうような清々しさに包まれるんです。これを言うとびっくりされてしまうかもしれませんが、今でもクヨクヨしたり立ち止まったりしそうなときは、すぐに携帯で画像検索して、仲村さんのコマを眺めるのが一種のお守りがわりになっているんです。

取材・文/加藤蛍
撮影/大川晋児
ヘアメイク/宮本愛
スタイリスト/三浦真紀子

 

プロフィール

 

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広瀬すず

1998年6月19日生まれ、静岡県出身。2012年に雑誌Seventeenでミスセブンティーンに選ばれ専属モデルデビュー。2015年に『海街diary』で第39回日本アカデミー新人俳優賞ほか数々の賞を受賞。主な映画出演作に『ちはやふるー上の句・下の句—』、『四月は君の嘘』、『怒り』、『チア★ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』などがある。アニメーション映画への声の出演は『バケモノの子』に続いて2度目。

 

作品紹介

 

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夏休み、とある海辺の町。花火大会を前に、「打ち上げ花火は横からみたら丸いのか?平べったいのか?」で盛り上がるクラスメイト。そんななか、典道が想いを寄せるなずなは母親の再婚が決まり転校することになった。なずなは典道を誘い町から逃げ出そうとするのだが、母親に連れ戻されてしまう。それを見ているだけで助けられなかった典道は、もどかしさからなずなが海で拾った不思議な玉を思わず投げつける。すると、いつのまにか連れ戻される前まで時間が巻き戻されていた…。何度も繰り返される一日の果てに、なずなと典道がたどり着く運命は? 繰り返す、夏のある一日。花火が上がるとき、恋の奇跡が起きる。

映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』

原作:岩井俊二
脚本:大根仁
総監督:新房昭之
声の出演:広瀬すず、菅田将暉、宮野真守/松たか子
主題歌:「打上花火」DAOKO×米津玄師(TOY’S FACTORY)
アニメーション制作:シャフト
配給:東宝
2017年8月18日(金)全国東宝系ロードショー
©2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会
公式サイト:http://uchiagehanabi.jp/

 

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原作本紹介

 

「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」岩井俊二(原作) 大根仁(著)/角川文庫

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関連本紹介

 

「少年たちは花火を横から見たかった」岩井俊二/角川文庫

『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』では映像化されなかった幻のエピソードを復刻し、再構成し、劇場アニメ版に合わせて岩井俊二が書き下ろした小説。テレビドラマ版『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』OAから、24年の歳月を経てよみがえる、原点ともいえるストーリー。本編に収録された「短い小説のための長いあとがき」には、本作品を始まりの部分から深く楽しむための創作秘話が書かれている。

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おすすめ本紹介

 

「惡の華」全11巻 押見修造/講談社

群馬県の公立中学に通うボードレールを愛する文学少年・春日高男。ある日、愛読書である『惡の華』を学校に忘れ、放課後の教室に戻った春日は女子の体操服が落ちていることに気づく。それは、クラスのマドンナ的存在であり、春日が憧れている佐伯奈々子のものであった。誰にも見られていないと思い体操着を盗んだ春日だったが、その様子を嫌われ者の仲村佐和に見られていたことが発覚! バラされたくない春日に、仲村が求めた“契約”とは?

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