
Netflixシリーズ「グラスハート」 宮﨑優インタビュー 夢と闘うシンデレラの野望
7月31日から世界独占配信が開始されるNetflixシリーズ「グラスハート」。本作は1993年から現在まで書き継がれてきた、若木未生による同名小説をドラマ化した青春音楽ラブストーリーだ。
所属するバンドをクビになった女子大生の西条朱音 (宮﨑優) は、突然、孤高の天才プロデューサー兼ミュージシャンの藤谷直季 (佐藤健) に、新バンド・TENBLANK (テンブランク) のドラマーに抜擢される。彼ら2人のほか、カリスマギタリスト・高岡尚 (町田啓太) 、超音楽マニアのキーボーディスト・坂本一至 (志尊淳) からなるTENBLANKは、唯一無二の楽曲と、4人の熱く激しい演奏により、瞬く間に世の中を席巻していく。しかし快進撃を続けるバンドの前に、数々の壁が立ちはだかる‥‥。
劇中に登場する楽曲はRADWIMPSの野田洋次郎、Taka (ONE OK ROCK) ら、豪華ミュージシャンによる書き下ろし。俳優陣が本気で歌と演奏に挑んだライブシーンは、日本のドラマ史上最大級の臨場感と高揚感に溢れる。とくに全編がほぼライブのみで構成される最終話は圧巻だ。
無名の女の子が、才能あふれるバンドのメンバーに加わり、スターダムに駆け上がっていくシンデレラストーリーである本作。ヒロインとなる西条朱音を演じた新鋭・宮﨑優さんに、本作「グラスハート」にかける等身大の想いを伺った。

現実とシンクロするシンデレラストーリー
ーー本作「グラスハート」への出演は、オーディションを受けて勝ち得たとお聞きしました。
最終の三次審査で結果が決まらず、急遽、四次審査を行うことになったんです。それが、スタジオで衣装を着て、佐藤健さんとお芝居をするカメラテストでした。オーディションに受かったと聞いた時は、本当に嬉しくて、思わず飛び跳ねて妹とハイタッチしました。
ーー宮﨑さんは西条朱音というキャラクターをどのように演じようと思って準備されましたか?
原作を読んで “素直でドラムの大好きな女の子”ってイメージがあったんですが、今回、共同エグゼクティブプロデューサーもされている佐藤健さんと柿本ケンサク監督のお2人が、私を選んでくれた理由というのが「新人の女の子がデビューをしてスターになっていく朱音の姿と私が重なった」ということだったんです。なので、西条朱音というキャラクターを演じているけれども、私自身のリアルな感情を入れることができたら、それは私を選んでいただいた意味があるのかなと思いました。ドラムを演奏しているときも、ドラマシーンのお芝居をしているときも、そういうところを少し意識しました。
ーーオーディションに受かって嬉しさもあったと思いますが、いざ西条朱音を演じることが決定して、撮影が始まった時はどの様な心境でしたか?
ずっと不安でした。自分の演技に自信もないし、どうしたらいいのか分からなくて、柿本監督にお会いしたら、朱音の役作りについて、「私はこう考えているけど、このシーンでの辻褄はあっていますか?」「監督はどう思いますか?」など、とにかく安心したくて毎回相談していました。



ビートを刻み雨を弾け
ーー第1話の雨の中でのドラムプレイから度肝を抜かれました。
びっくりしますよね (笑) 。もうずっと雨に降られていて‥‥雨が降っている状態でドラムを叩くと跳ね返りがなくなるんですけど、そうなると机を叩いているようなものなので、2倍以上の筋力が必要になってくるんです。
ーーでも、ドラムの上で弾かれる水飛沫もカメラは撮りたいわけですよね。
そうなんです!あの水飛沫!リアルではすごく雨が降っていて、映像では、そんなに降ってないように見えるのが、少し悲しいです(笑) 。水飛沫が跳ねて顔にかかるので、表情も作れなくて大変だったんですけど、“あの撮影を乗り越えた自分はすごいな” と思えたので、良かったです。なかなかできない経験をさせていただきました。
ーードラム演奏は今回の撮影が初めてだったんですか?
はい。1年半ぐらい練習しました。私、飽き性で、始める前は本当にできるのかなと思っていたんですけど、続けられてよかったです。左右の手足4つを全部バラバラに動かすということに慣れるまでが一番大変でしたね。「ちょっと今話しかけないでください」って言いたくなるぐらい頭がパンクしそうになりました (笑)。
ーー参考にされたアーティストの方はいらっしゃいますか?
ほな・いこかさんのドラムを参考にさせていただきました。あと、これは参考にしたというよりは、元気をいただいていたという感じなんですけど、YOYOKAさんとkiiちゃんっていう子がいるんです。10歳くらいなんですけど、2人ともドラムが超うまいんです。練習を続けていると自信が無くなりそうな瞬間があるんですけど、そういうときに、YouTubeで楽しそうにドラムを叩く2人を見て、勇気づけられていました。この3人は、私にとって恩人です。










観客との一体感を感じるライブ
ーー音楽の趣味についてお伺いしたいです。好きな音楽ジャンルやバンドなど、宮﨑さん自身の音楽体験を教えてください。
ロックが好きで、クリープハイプさんと銀杏BOYZさんが特に好きです。ストレスが溜まったら、イヤホンをつけて聴きながらガンガンに踊りまくっています。私、小規模のライブが好きなんですよ。バンドとお客さんとの一体感がすごく感じられるので、ライブハウスには、よく行きましたね。
ーー「グラスハート」では、音楽ライブで演奏するシーンがありますが、ご自身が観客として参加されていたライブをドラマーとして演じられて、どんなことを感じましたか?
演技だけに留まらないで、外側に向かって発信させること、盛り上げようとか、何かを届けようとか、そういう想いがすごく大事なんだなと思いました。
ステージに立つと、お客さんの熱量に負けてしまいそうになる瞬間があるんです。ライブ会場に最大5000人ぐらい入っていたんですけど、もうドラムセットに座るだけで、気を全部吸い取られているような感じがして、“負けられない” という気持ちで演奏していました。


ーー本物のバンドのドラマーみたいな発言ですね。
本当にバンドをされている方たちが、そういう想いでやっているのかなって、気持ちを少し知ることができました。
ーーでは、所属されているバンド・TENBLANKの楽曲の中で一番好きな曲教えてください。
個人的には、演技の面で助けられたのは「永遠前夜」ですね。あの曲がなかったら、結構違う映像になっていただろうなって思います。想いが昂って走り出すシーンは、アフレコのときも、ずっと聴いていました。”朱音ってこう思っているのかな?” と想像しやすかったので、思い入れのある曲ですね。
このエピソードは、撮影期間の前半に撮ったので、“朱音と直季の関係性に深みが出ないんじゃないか?” という葛藤を持ちながらの撮影で大変でした。だからこそ、あの曲に支えてもらったという気持ちが大きいんだと思います。

天才プロデューサーは嘘をつかない
ーーTENBLANKのメンバー、佐藤健さん、町田啓太さん、志尊淳さんとの撮影現場でのエピソードがあれば教えてください。
みなさん結構忙しくて、全員で仲良く楽しく話すっていう時間は、あまりなかったですね。佐藤さんとは一緒のシーンが多かったので、いっぱいお話しました。佐藤さんはすごく面白い人、でもちょっと変な人みたいな (笑) 。
何て言うんですかね‥‥嘘をつかないんですよ。相手に失礼かな?ってためらうようなことでも、面と向かって言ってくれるのって、珍しいじゃないですか。そういう人って、なかなかいないので、私はすごく好きです。
オブラートに包むことをしない方なので、最終的には、それに突っ込めるような関係になれました。でも撮影当初は、私の様子を見ながら、ちょっとずつ言い方を慣らしていたような感じだったので、相手を見て気にかけてくださる方なんだと思います。


ーー朱音は直季のことを先生として尊敬し、男性として恋心を抱きます。宮﨑さんご自身は、直季を男性としてどう思っていますか?
私は得意ではない気がします (笑) 。もっとはっきりしている人が好きなんです。役柄としてはすごく好きでしたし、個人的にリスペクトはあるけど、恋心はないと思います。本当に “先生” って感じです。
ーーすぐ謝る男は、実は優しくないと言われたりします。直季は、何かにつけて「ごめんね」と言い、その後、必ず自分勝手な行動をする。
すぐ言いますよね。“本当にごめんって思ってるのかな?” って思いながらセリフを聞いていました (笑) 。本当に自分勝手なんです。「ごめんね」っていうことで、一応ワンクッション置いている感じがありますよね。でも、そこが、どんなことをおいても自分の作りたい音楽を作りたいという先生のこだわりの強さなんでしょうね。
夢を叶えたシンデレラの野望
ーー最終話の朱音の「生きていたらいろんなことがあるよね〜」で始まる長セリフが、彼女の優しさとエモーショナル部分が表れていて印象的でした。
あのセリフは、撮影の1週間前ぐらいから監督と私でセリフを考えていたんですけど、撮影当日に決まったんです。
「朱音は『そんなこと平気でやってくる “奴” がごまんといる』とは言わないんじゃないか?」「朱音の性格からして、そういう言葉を使ったら、自分が調子乗っているって思うんじゃない?」といった声もあったんですけど、私は「“奴” って言うと思う!そうですよね !?」って監督に言って押し切りました (笑)。
ーー宮﨑さんは、朱音の「自信はないけど野望はあります」というセリフが好きだと伺いました。宮﨑さんご自身の野望は何ですか?
これまで、あまり「野望」という言葉が、すごく欲がある人みたいだし、ちょっと嫌だったんです。でも “「野望がある」って言えることってかっこいいな” と最近は思っています。かといって、矛盾しているんですけど、大きな野望はないです (笑) 。
私、19歳くらいから夢ノートを書いているんです。こういうCMに出たい、こういう作品に出たい、こういう監督とご一緒したい、とか。そういった意味での野望はあります。
ーー夢ノートに書いたことで、叶ったものはありますか?
それこそ、ヒロインになりたい、Netflixに出たいとも書いていたので、この作品で、どっちも一気に叶いました。言霊ってあるんだなと思いますね。
ーーこれから「グラスハート」を観る方に向けて、メッセージをお願いします。
最終話まで観てください。伏線を回収する部分や、朱音のドラムがだんだん上達していく姿は、やっぱり最終話まで観ないと分からないし、途中で見るのをやめちゃうと、ちょっと感動度合いが下がってしまうので(笑) 。最後まで観ていただけたら嬉しいです。
私もTENBLANKのメンバーも、監督もスタッフの皆さんも、みんなが本当にもがいて必死に戦って作った作品です。今、苦しんでいる人、何か嫌なことがあった人たちに観てもらって、やる気とか勇気とかではなく、”今日、散歩しに行こうかな”とか、”カーテン開けてみようかな”とか、それぐらいの前向きな気持ちになってほしいな。ちょっと私が言うのはおこがましいかもしれないけど、そんな想いです。
取材・文 / 小倉靖史
撮影 / 岡本英理
スタイリスト:道端 亜未 / ヘアメイク:尾曲いずみ


Netflixシリーズ「グラスハート」
所属していたバンドを理不尽な理由でクビになった大学生・西条朱音。打ちひしがれる朱音だったが、孤高の天才ミュージシャン・藤谷直季から突然、彼が率いる4人組の新バンド「TENBLANK」のドラマーとしてスカウトされる。藤谷が生み出す唯一無二の楽曲と、4人の熱く激しい演奏により、瞬く間に世の中を席巻していくTENBLANK。しかし快進撃を続けるバンドの前に、数々の壁が立ちはだかる。
監督:柿本ケンサク、後藤孝太郎
脚本:岡田麿里、阿久津朋子、小坂志宝、川原杏奈
共同エグゼクティブプロデューサー:佐藤健
原作:若木未生「グラスハート」シリーズ(幻冬舎コミックス刊)
出演:佐藤健、宮﨑優、町田啓太、志尊淳、菅田将暉、唐田えりか、髙石あかり、竹原ピストル、YOU、藤木直人
2025年7月31日(木) Netflixにて世界独占配信
公式サイト netflix.com/グラスハート