Oct 22, 2025 interview

ギレルモ・デル・トロ監督が語る すべての道はこの作品へ通じていた『フランケンシュタイン』

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個人的で親密な物語の中で、世界の意味を問う

池ノ辺 メイクもとても美しかったです。作り上げるまで大変だったんじゃないんですか。

デル・トロ 確かにジェイコブのメイクは、設定するのも非常に時間をかけましたし、実際にメイクを施すのにも時間がかかっています。彼には、何時間にも及ぶメイクの間、神父のようにいなさいと言いました。神父というのはミサなどに向かう前には、自分の衣装を祈りながら一枚一枚纏っていくわけです。怪物としてのメイクが自らに施されている間の時間を、そういう祈りの心で過ごすように言ったんです。そうすれば疲れることも飽きることもないからと。彼は本当にそのようにして撮影に臨んでくれました。

池ノ辺 だからこの映画は愛に溢れていたんですね。

デル・トロ 私のこれまでの作品と比べると、本作はとにかく私の非常に個人的な作品であると言えます。メアリー・シェリーが実際に執筆した原作も、彼女の個人的な体験を反映させた自伝的な側面もあります。自分にとってのこの映画もそうなんです。これは父と私の物語であり、私と子どもたちの物語です。さらに言えば、カトリックの信仰の基本であるイエスと父についての物語でもあります。そこには「赦し」こそが世界を変えるという大きなテーマもあります。私がこの映画で表現したかったのは、最も親密で個人的なつながりを描くのと同時に、壮大な、魂についての、そして魂と世界がどう結びつき合うのか、ということなんです。メアリーはあの小説の中で、J・ミルトンの「失楽園」を引用するなどして、この世界の意味を理解しようとしています。私も同じです。そしてその世界というのは、善でも悪でもない、その両方があって、そうして陽はまた昇る、人生は続いていくわけです。

池ノ辺 ありがとうございました。

インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 藤本礼奈

プロフィール
ギレルモ・デル・トロ (Guillermo del Toro)

監督

メキシコ出身の映画監督、プロデューサー、脚本家。『ミミック』(1997) でハリウッドに進出。『ヘルボーイ』を2004年に映画化して大ヒットさせ、『パンズ・ラビリンス』(2006) でアカデミー脚本賞に初ノミネートを果たす。その後もSF大作『パシフィック・リム』(2013) 、『クリムゾン・ピーク』(2016) など。製作・監督・共同脚本を務めたラブファンタジー『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017) は、ベネチア国際映画祭の金獅子賞を、アカデミー賞では作品賞・監督賞を含む4部門を受賞した。

作品情報
Netflix映画『フランケンシュタイン』

天才だが傲慢な科学者ヴィクター・フランケンシュタインが禁断の実験によって生み出したのは怪物だった。やがて、ヴィクターと悲劇を背負った怪物は破滅への道をたどることに‥‥。

監督:ギレルモ・デル・トロ

出演:オスカー・アイザック、ジェイコブ・エロルディ、ミア・ゴス、フェリックス・カメラー、チャールズ・ダンス、クリストフ・ヴァルツ

2025年10月24日(金) 一部劇場にて公開
2025年11月7日(金) Netflixにて独占配信

作品ページ netflix.com/jp/title/81507921

劇場リスト frankenstein

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『哀れなるものたち』『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』ほか1100本以上。最新作は『レンタルファミリー』
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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