社会に対して映画ができること
―― 保見団地の存在はご存じでしたか? また移民問題についてどうお考えですか?
知りませんでした。90年代に南米から出稼ぎに来た人たちは、日系人が多かった。見た目は日本人なんだけど、日本語が喋れなかった。今回の映画でも「私たちは使い捨てだ」ってセリフがあるけど、20年以上前から使い捨てだって、皆さん言ってました。
日本は少子化で外国人の労働者に頼るしかないわけですからね。これからは、彼らを受け入れて、ちゃんと地域に溶け込んでいけるような社会をつくっていく必要があると思います。ただ、血が混じることに慣れていないですからね、日本という国は。そういう意味で、警戒心や差別が起きてしまうのだと思います。
映画は、こういった問題を取り上げて、リアルに描けるわけですから、よりよい新しい地域社会づくりの活動に役立つかも知れない。映画にはそういう力があると思います。
―― 実際、保見団地に撮影へ行かれて、在日ブラジル人の方々と交流されたかと思います。その際、役所さんが心に残ったものはありますか?
あの人たちは本当に陽気で、エキストラ出演することを楽しんでくれてる印象がありました。撮影時期は寒くて、1日がかりで大変だったと思いますけど、それを陽気にやり過ごすエネルギーは感じましたね。
―― この映画でイメージが変わるといいですね。
本当にね。この映画がきっかけとなって、交流ができればいいなと思います。
―― 役所さんご自身、社会派作品の出演が増えてます。今後、どんなアプローチをされていくのでしょうか?
社会問題を取り扱った映画を観ることで、くわしく調べてみようとか、一度、考えてみようといった、きっかけになる。こういった作品は、僕も観客の立場で観ていて勉強させられることがあります。
ただ楽しい作品でも、人間、元気になるからいいんです。でもそればっかりの映画界では寂しい。自分が演じることで、役に立つこともあれば、そういう社会派作品には積極的に参加したいと思っています。
取材・文 / 小倉靖史
写真 / 藤本礼奈
ヘアメイク / 勇見勝彦(THYMON Inc.)、スタイリスト / 安野ともこ
山里に一人暮らす陶器職人の神谷誠治のもとに、アルジェリアに仕事で赴任している学が婚約者ナディアを連れて一時帰国。結婚を機に会社を辞め、焼き物を継ぐと宣言した学に誠治は反対する。一方、誠治が住む隣町の団地に住む在日ブラジル人青年のマルコスは半グレに追われたときに助けてくれた誠治に亡き父の面影を重ね、焼き物の仕事に興味を持つ。そんな中、アルジェリアに戻った学とナディアをある悲劇が襲い‥‥。
監督:成島出
出演:役所広司、吉沢亮 / サガエルカス、ワケドファジレ、中原丈雄、室井滋、アリまらい果、シマダアラン、スミダグスタボ、松重豊 / MIYAVI / 佐藤浩市
配給:キノフィルムズ
©2022「ファミリア」製作委員会
公開中
公式サイト familiar-movie.jp