Jan 06, 2023 interview

役所広司インタビュー 家族は痛みを共感する関係、映画は国境を超え、それを伝える『ファミリア』

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家族とは力を与えてくれるもの

―― 2人の息子さんについての質問です。吉沢亮さん演じた血のつながった息子、学。もうひとり、精神的に父親の面影を重ねる、サガエルカスさん演じる在日ブラジル人のマルコス。演技をやっていて、2人に感じたことがあればそれぞれ教えてください。

吉沢くんは、もう大河ドラマを1年間、ずっと背負ってきた後だから、非常に落ち着いて余裕があって、しっかり役をこなしていたように思いますね。陶芸を練習する時間がなかなかなくって、間近になって一生懸命やってましたけど、僕が時間かけてやったものを、意外とちゃんとやっていて、器用だなと思ってみていましたね。

―― マルコス役のサガエルカスさんはいかがでしたか?

彼は、映画の出演も俳優の仕事も初めてです。演技経験がない人とは思えないくらい頑張ってました。オーディションが終わってから、監督が非常に丁寧に指導してたと思いますね。観客がまったく先入観なく観られるっていうのは、デビュー作でしか経験できない。彼は、大きな武器をもってスクリーンに登場するわけですから、そういう意味では羨ましさがありますね。

リハーサルから本番まで演じていると、本当に俳優になりたいと思ってくるんですね。これは監督の責任を感じるところで、これから彼の人生、俳優という仕事で、うまくいくかどうか分からないですけど、監督は見守ってあげる気持ちでいるんでしょうね。

―― 家族観について、どんなお考えをお持ちですか?

僕の職業でいうと、家族は、ものすごく力を与えてくれる存在なんですね。父親を演じたり、息子を演じたり、夫婦であったり、いろんなケースがあるわけですから、普通の職業の人とは違って、ものすごく大切な資料にもなるわけです。基本的に身近にある自分の家族からヒントを得ることが、やっぱり多いですよ。

不思議な仕事でね、意識してない部分でも、こういう家族の中で育ってきた僕と、こういう家庭を作ってきた僕の色っていうのは、やっぱり出てくるんだと思います。

―― でも実際、今回演じた役柄とご自身の置かれている環境は違いますよね?

環境は違いますが、自分が育った家族、自分の家族、色んなヒントがあると思います。

―― では、息子が国際結婚したからどうだというわけではなく、ご自身の息子さんに対しての感情を置き換えるっていうことですか?

勿論、映画の家族で考えます。でも混同することは無意識にあるのかも知れません。

―― 今作では血縁者だけでなく、国籍も育った環境を超えて家族をつくろうとします。こういった家族についてはどうお考えですか?

この映画で描かれている家族は、血のつながりは勿論ですが、血縁はなくても痛みを共感できる人間関係の物語じゃないでしょうか。血のつながってない、いい家族も沢山あるわけですから。単純に言えば、夫婦は赤の他人で、他人から始まって家族になる。血がつながっていなくても家族として成立するわけです。