演じる側の俳優が個人的に好きな映画ってなんだろう?作品の出演者インタビューをしていると、こんな疑問が湧いてきます。今回は、新年にふさわしい映画にどんな作品があるのか、映画・TV・舞台で活躍する渡辺真起子さんにうかがってみました。
今回、選んでくださった映画は、2023年1月6日公開の『ドリーム・ホース』。舞台はイギリス・ウェールズの小さな村。単調な日々に嫌気が差していた主婦がある日、共同馬主の話を耳にし、村人たちを巻き込み競走馬を共同で購入する。その競走馬は、レースに出場し奇跡的に勝ち進み、彼らの人生を変えてく事実をもとにした物語です。渡辺さんは、この作品のどこに興味を引かれたのでしょうか。
ーー さっそくですけど『ドリーム・ホース』の魅力ってなんですか?
本当に胸が高鳴りますよね。世相なのか、自分の年齢なのか分からないけど「信じていれば叶う」っていうこと自体を信じたいけど、それが難しい。でも「信じてがんばろう」という気持ちにさせてくれる、そういうシンプルなところが魅力ですね。逆に観てどうだった? この映画好き?
ーー 余計なことを考えずに楽しめる作品で好きです。
そうなんですよ。分かりやすく話が進んでいって、「そんなことあるかよ!」ってツッコミ要素もない。物語の運びが、すごく優秀なんじゃないかなぁ。だから、ネタバレしても楽しめる。
ーー 確かに、すごく上手に作られていますよね。
あと登場人物の佇まいや生活感がすごく面白い。舞台がイギリスのウェールズですから、労働者たちが一致団結して、何かを乗り越えていくっていう、イギリス映画のお家芸ですね。もともと好きなんですよ、元炭鉱町でストリップするやつとか、こういった映画の流れが、本当に好きなんですよね。
ーー 『フル・モンティ』とかですね。
主演女優のトニ・コレットのリアリティーのある演技も素敵だったし、彼女だけじゃなくてキャスティングのバラエティーもよかった。そして、エンディングに制作側の人たちが出てくるんですよ。みんなで肩組んで歌っていて、いいチームだったんだなぁって感じました。
土地の歴史も考えて、この場所を愛してるし、暮らしている人たちを愛している。元々ウェールズって「歌の国」って言われているからね。それもすごく素敵。
ーー 劇中にも流れるウェールズ国歌でもそういう歌詞ありますね。
音楽が人を支えてる場所って、必ず貧困というか労働者階級がいるイメージがあって、「それでもいまだに未来を諦めないでいる」。こういうのやっぱり心打たれますよね。若い人がほとんど出てこないのは、仕事がないから、この土地からいなくなっちゃったわけでしょ?
ーー 語ってはいないけど、過疎地域ってことですもんね。
そこに自分たちの子どものような、若い馬が生まれて村人全員が育てて、それが活躍していくのは、思い出しても泣いちゃう‥‥私、途中から嗚咽するくらい号泣して‥‥(笑)。
ーー そんなにですか!?
共同馬主なんて‥‥みたいに誰も信じてくれないところから始まって、少しずつ仲間を勝ち得て、みんな家庭の事情があるなか、大きな賭けをするわけではなく、小さな望みをみんなで募っていく。登場人物が報われていく姿を見て号泣するんですよ。