『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97年)や『エレファント』(03年)などを手掛けたガス・ヴァン・サント監督が、ポートランドに実在した風刺漫画家ジョン・キャラハンの半生を映画化。ロビン・ウィリアムズが映画化を熱望した本作で、酒に溺れたせいで事故に遭い、車椅子生活になってもなお辛辣なユーモアを失わなかったジョンをホアキン・フェニックスが演じている。ガス監督のセンス溢れる映像と明るいタッチで綴られる『ドント・ウォーリー』の制作秘話をタップリと語ってもらった。
ロビン・ウィリアムズが本作の映画化を熱望した理由
──ジョン・キャラハンの半生を映画化するという企画を、ガス監督はどういった経緯で受けることになったのでしょうか?
約20年前に監督した『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』にロビン・ウィリアムズが出演していますが、その時に彼が、1994年に映画化権を取得していたジョン・キャラハンの自伝「Don’t Worry, He Won’t Get Far on Foot: The Autobiography of a Dangerous Man」の監督をやってくれないかと相談を持ちかけてきたんです。ロビンは新聞に掲載されていた彼の漫画を読んでファンになったそうで、映画化権を取得し、ジョンと同じポートランドに住んでいた私に声を掛けてくれた。そういう経緯で今回の企画がスタートしました。
──ロビン・ウィリアムズとは『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』以降も、本作の企画を進める中で会ったりしていましたか?
まずロビンがこの作品の映画化を熱望していた理由からお話したいのですが、それはスーパーマンを演じていたクリストファー・リーブの存在が大きかったと言えます。ロビンとクリストファーはジュリアード音楽院時代の同級生で友達だったそうなんです。ある日、クリストファーが乗馬の事故で車椅子生活になってしまった。それでロビンが、ジョンとクリストファーを心のどこかで重ね合わせたようで、ジョンの役を演じたいと言ったんです。
ジョン本人の助けを借りながら脚本を書いていったんですけど、なかなか企画が進まず、途中で頓挫するという事態に何度も陥りました。それはアル中や車椅子といったリスキーな要素がたくさんあったからかもしれません。実はロビンは『ミルク』(08年)でショーン・ペンが主演した役を演じる予定だったんですけど、結局それも叶いませんでした。2010年にジョンが亡くなり、2014年にはロビンが亡くなってしまいましたが、ホアキンを主演に迎え、ようやく映画を完成させることができました。
──ジョン・キャラハンはアメリカでは誰もが知る風刺漫画家だったのでしょうか?
アメリカのカートゥーン作家と言えば「アダムス・ファミリー」のチャールズ・アダムス、「ザ・シンプソンズ」のマット・グレイニングが有名ですが、実はマット・グレイニングが自身の所属するエージェントにジョンを紹介したそうなんです。それまでジョンはとてもローカルな地域で活動していましたが、そのエージェントのおかげで、1980年代からポートランドの主要地方紙である新聞「Willamette Week」にジョンのイラストが掲載されたり、私がLAにいた頃は「LA Weekly」にも掲載されていました。そのあと「60 Minutes」というアメリカCBSテレビのドキュメンタリー番組にジョンが出たことで、さらにアメリカ中に知られていくようになったんです。