――岡山県美作地域で撮影がされましたが、好きな場所はどこですか。
オーソドックスですけどやはり茶畑です。景色が凄く良かったですし、お茶農家さんのお話を聞くことも出来たので良い経験になりました。
――役作りの為にお茶農家さんとお話をされたのですか。
元々、農家さんに対して憧れがあるので、普通に話を聞いていた感じです。農家さんの生活スタイルなどどんな感じなのかも知りたくて。“農家さんは意外とストイックなんだな”とか“面白そうな職業だな”とか思いながら聞いていました。
――私が初めて杉野さんにお会いしたのは『キセキ-あの日のソビト-』(2017)の時でした。それから色々な役を違うアプローチで演じられているんだなと思っています。
気づいたら色々な事をやらせて頂いている感じです。その都度、その都度、与えられたもの、やるべきことを自分なりに考えて、とにかく一生懸命やっているだけな気がします。
――先輩や同世代の俳優たちとの仕事で、多くの刺激を受けていることと思います。デビュー時より俳優という仕事に対して考え方とか変わられましたか。
もちろんです。考え方というか、仕事への向き合い方が変わってきている感じがしています。
最初の『キセキ-あの日のソビト-』の頃は、大学生だったので興味本位の方が大きかったですし、ミーハーな気持ちももちろんありました。そんな状態で芸能界に入ってきた僕が徐々に“俳優という職業は面白いところもある。でもしんどいところもある”と思ったり、皆で作品を作る、一生懸命やる場があるということに嬉しさを感じるようになったりしています。そんなことをフワフワと感じているのが今の状態です。
――一番、刺激を感じた出会いは何ですか。
その都度、その都度の自分で変わるんですけど、ちょうどコロナ禍の2021年に舞台「夜への長い旅路」をやらせていただいたんです。海外の演出家フィリップ・ブリーンが演出をされて、大竹しのぶさん、大倉忠義さん、池田成志さんとの3時間30分の舞台で、もう1人女中役で土居志央梨さんも出演されてはいましたが、ほぼほぼ4人芝居だったんです。大竹しのぶさんはお母さん役だったのですが、今思えばあの数ヶ月間をどうやって乗り切ったんだろうと、あんまり詳しく覚えていないんです。相当、必死だったんだと思います。初めての舞台なのにコロナ禍だったので演出もイギリスからのリモートだったんです。だからもう一度、演出家フィリップ・ブリーンにちゃんとお会いして、稽古をつけていただく経験が出来たらいいなと思っています。
――大竹しのぶさんとの共演はいかがでしたか。
大竹しのぶさんと面と向かったお芝居をお客さんの前でちゃんとしなくてはいけないので‥‥、その時の自分は大竹しのぶさんの演技を“凄いな”と思いながら演じていました。池田成志さんも凄く迫力があるんです。
――いつも現場に入るまでは、どんな感じなんですか。
現場に入るまでは、出来るだけ穏やかに自分のやる事だけに集中して、“事なきを得たらいいな、良い作品を作れたらいいな”と思って入ります。
――緊張はしないのですか。
緊張はあまりしないです。休む期間が多いと意外と“現場に行きたい”と思ったりもします。ただ、現場に入ると色々なことが巻き起こってそれはそれで大変ですが。
――それでも続けているんですね。
だって、次のお仕事が決まっていますから(笑)。もちろん「辞めよう」とも思っていません。ただ「俳優という仕事が凄く好きなんです」というのとは、少し違う気がしています。なので、そういう風に言える人に対して羨ましく思う気持ちが今はあります。