――私は以前から、窪塚さんのお父さん(窪塚洋介)とお仕事をご一緒させて頂いていますが、現場に小さな愛流くんを連れて来て、紹介してくれた時もありました。
窪塚:そうなんですか !?
――紹介されました。とても家族愛に溢れていますよね。
窪塚:はい、ありがとうございます。
――映画では、愛は親以外からもどんどん影響を受けていきます。長澤さんや窪塚さんが映像で刺激を受けた方を教えて下さい。
長澤:言ってしまったら出会った人、全員なんですよね。“この人が居なかった”という未来はないわけで、例え挨拶をしただけだとしても、その人が居ないという自分の人生は存在しない。そういう意味では全員で、皆さんとの出会いが大切なんだと思います。
その中で「女優になりたい」と思ったきっかけは、オードリー・ヘップバーンさんです。もちろん私とは生きた時代が違うので一度もお話をしたことはありませんし、亡くなられている方で写真や映像でしか観たことがないのですが、凄く影響をもらっていると思います。もともとは母が好きで部屋に写真が飾られていたんです。
――どの作品が特にお好きですか。
長澤:悩みますね。でも最初に観た作品は『ローマの休日』(1953)です。『ローマの休日』は本当にキラキラした作品で、素敵なロマンス映画だと思っています。でも最近は『シャレード』(1963)とか、いつものオードリーとはちょっと違う影のある感じの演技を観ることが出来るので凄く好きです。
窪塚:僕は高校の校長先生です。実は高校2年生まで凄く服装がだらしなかったんです。制服のネクタイの結び目をシャツの第二ボタンの所まで下げていたし、シャツのボタンも上まで止めない、授業中も凄くくつろいだ座り方で聞いている感じだったんです(笑)。
でも高校3年生に上がる時に、ずっと仲が良かった校長先生に朝呼び止められて「お前は良くも悪くも目立つ。だから服装だけはちゃんとしろ」と言われたんです。その時ハッてなって、“確かに”とその瞬間、自分の考え方が180度変わった感じがしました。そこから“身だしなみはちゃんとしよう”と思って、次の日からネクタイも一番上まで上げるようになりました。そういう社会人として基本的なことを教えてもらってからは、年上の方には敬語を使うなど言葉使いも改めていくようになり、今の自分の基盤になっています。あの校長先生の言葉がなかったら、僕は今でもきっとだらしないままで、人前でも身だしなみを気にしない、敬語も使えなかったのではないかと思います。自分の人生において、大きな分岐点を与えてくれた人です。
長澤:素敵ですね。
窪塚:とてもフラットな校長先生で、生徒と同じ目線に立つてくれる人でした。