―― 出来上がった映画を観て、どんな印象を持たれましたか。
台本だけ読むと、もっとファンタジーに落とし込むんだろうなと想像していました。現場に入っても今までとはどこか違う不思議なバランスで撮影していたので“どんな風に映るの?”と思って、ちょっと予想が出来なかったところもあったんです。でも、完成した作品を観るとそれが上手く調和していると思いました。全てのバランスが良くて、ちゃんと竹野内さん演じる【萱島森一郎】と孝之演じる【宇和島凌】の2人が陰と陽ではないけれど、対になっている。そして個々の女たちも自分なりに表現するものがある。
もちろん、映画では女たちが思っていることがハッキリとはわかりません。多分、女たちが何を表現しているかもわかるようでわからないかもしれません。だけど「自然の中で生きている」という表現の仕方が凄く気持ちいいんです。石橋監督は『ミロクローゼ』から本作『唄う六人の女』まで年月を経て、凄く久しぶりに長編作品を撮ったと思うんです。しかも実際に京都に住んでいて、自然に近い環境の中で暮らしている監督が本当に撮りたかったテーマで、考えている作品なのだと感じました。
―― 水川さんも短編『おとこのことを』(2022)で監督を務めましたが、今後、撮りたい作品又はテーマはありますか。
今は全然ないです。でも一度監督を経験したので、また“監督したい”という気持ちになるかもしれないなぁとは思っています。
―― 芸能生活は映画『劇場版 金田一少年の事件簿「上海魚人伝説」』(1997)のデビューから26年ですね。俳優という仕事に対して今はどう思われていますか。
長く俳優をしているからどうこうというのはありませんが、長く続けることによってわかることもあったと思っています。そしてドンドン楽しさが変わっています。お芝居をすることがより面白くなってきている。お芝居に対する捉え方、お芝居をすることに対する自分との距離感などが自分の中で調和が取れてきた感じです。若い頃はとにかくがむしゃらに演じていたので、その形が変わってきた印象です。今の方が表現に対して興味が出て来たと思いますね。
―― 肩の力が抜けた感じですか。
簡単に言うとそういう感じもあるかも(笑)。自分にとって“どういう作品か、どんな役か”という捉え方になって来たのかもしれないです。何でも演じられることの素晴らしさ、出演させてもらうことの素晴らしさから自分がどんな作品に関わりたいか、関わってみたいかに変わりました。それは監督、役者さんもそうだし、作品性もそうですが、今までとは目線が変わった感じがしています。そういう風に変わってくると興味も増してきて、それが良い。今の方がイイ感じです(笑)。
―― きっかけは何ですか。
きっかけというきっかけは特に思い当たりませんが‥‥。監督業をやらせて頂いたり、独立してみたりと30代頃の色々な変化の中で過ごしてきた日々の中で変化が生まれたのかもしれません。