Jun 15, 2023 interview

富田靖子インタビュー 長きに渡り多くの人に愛される 笑いあり涙ありの『映画 めんたいぴりり〜パンジーの花』

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明太子を作った夫婦の実話をドラマ化し、舞台化、映画化にまでなった「めんたいぴりり」。『ザ・ファブル』(2019)やNetflixオリジナルドラマ「サンクチュアリ -聖域- 」(配信 / 2023年)で話題の福岡生まれの江口カン監督が企画、演出を務め、日本民間放送連盟賞優秀賞、ATP賞ドラマ部門奨励賞、ギャラクシー賞奨励賞を受賞したドラマの映画化第2弾が『映画 めんたいぴりり〜パンジーの花』です。本作は、2つの恋愛を応援する仲間たちの物語でもある「愛の幸せ」を描いた作品。 今回は、博多華丸さん演じる主人公「ふくのや」の店主【海野俊之】のおかみさん【海野千代子】役を長年務める富田靖子さんに「めんたいぴりり」の思い出と寄り添う自身の人生について語って頂きます。

―― 日本ではじめて明太子を売り出した「ふくや」創業者の実話を元にした福岡ホームコメディ「めんたいぴりり」が、TVドラマでスタートしたのが2013年なので丁度10年経ちます。最初にオファーが来た時は、どう思われましたか。

子育てをしていたので、“最後の出張かな?”と思ってオファーをお受けしました(笑)。あの当時、【最後の出張】をテーマに色々な仕事をしていたんです。舞台に関してもやはり地方公演があるので、これを機に「出張はしない」と決めていました。だから丁度、出張の年だったんですよね。そんな時、たまたまTVドラマ「めんたいぴりり」(OA / 2013)のお話を頂いて“子供が小学校に上がるから、最後の出張になる”と思って、子供を福岡の実家に泊めてもらい、博多の現場に行ってから10年も続きました。

本当にスケジュール調整が大変で(笑)。「撮影が子どもの夏休みと重なりますように」と祈りながら、10年過ごしたら何とか乗り越えることが出来ました。そして現在に至る感じです。

―― ドラマ&映画『めんたいぴりり』で富田さんは、「ふくのや」の店主【海野俊之】のおかみさん【海野千代子】役を演じていらっしゃいます。従業員を含め、とても人情に溢れた家族ですよね。

あれだけの結束力が出来たのは、やはり最初のドラマ「めんたいぴりり」が、テレビ西日本でいつもは報道やバラエティでお仕事をされているキャメラマンや録音部の方たちが来て下さったことも大きかったと思います。もちろんメインキャメラマンはドラマや映画の撮影をされている方でしたが、その脇を固めるスタッフさんはテレビ西日本の方々で、普段、別の所でお仕事をされている方たちが集まって下さったんです。

だからこそ皆さん、ドラマのちょっと独特な撮影の仕方は初体験だったと思うんです。【息子たち(子供たち)】の出るタイミングとかも【海野俊之】役の博多華丸さんや【八重山徳雄】役の瀬口寛之さんなど、芝居の経験者がタイミングを図って後ろから背中をポンって押したりして子供たちに教えていました。そんな風に役者同士が助け合って作っていきました。だからこそ、あれだけの結束力が生まれたのだと思います。普通なら助監督さんがするようなことでも、積極的に私たちがやっていましたね(笑)。

―― 博多華丸さんは『めんたいぴりり』がライフワークのようになっていますよね。

一番最初、どこかの会議室で華丸さんとふたりで練習したのを覚えています。本当に練習が必要だったのか?今はわかりませんが(笑)、監督と私と華丸さんで読み合わせと簡単な動きをやりました。メイクさんなども「出演者(華丸さん)のメイクアップを担当していたから」という理由だけで、ドラマに参加することになったりして(笑)。皆さん最初から映画やドラマに関わっていたわけではなく、「博多に居た」というだけで江口監督の号令のもと集まって、作品を作り上げていった感じです。

最初は機材もそんなに裕福ではなかったので、小さなモニターを見ながら従業員全員でアフレコをしたりもしました(笑)。そんなふうに皆で支え合いながらやって来ました。それにセットも狭くて、居場所がなかったので、皆が何をしているのか一目でわかるんです。あの逃げ場のない狭さが特に【海野健一】【海野勝】を演じる子どもたちにとっては、居心地が良いものであったのではないかと思っています。撮影が終わったら控室ではなく、振り返れば誰かが居るという環境は、家族の疑似体験を受け入れやすいと思うんです。

―― 名物となる従業員と家族との食卓シーンもぎゅうぎゅうで狭いですよね(笑)

狭いです。「カメラどうするの?入らない?」って感じで本当に狭いんです(笑)。あの初期のキュっとしたセットが今の結束力が生まれた最初だったと思います。私は子育てのこともあり参加していませんが、皆はその後、舞台をやっていて、本当に舞台の経験って凄いなと思いました。あれから皆の意識がかなり変わった気がします。立ち位置においても、人との立つ時のバランスとかが身体で理解出来たというか‥‥、舞台で一緒じゃなかった分、久しぶりに会ったからこそ皆の変化に気づきました。