―― 二ノ宮隆太郎監督とのお仕事はいかがでしたか。
光石:彼とは同じ事務所で俳優としても共演したことがあります。だから彼の人となりを知っていましたから戸惑うこともなく、演じることが出来ました。工藤さんとかには、もの凄く事細かく話をしていましたね。
工藤:はい。監督とは【娘】としての【お父さん】に対する目線とか、そういう細かいお話をたくさんさせて頂きました。クランクイン前に監督とキャラクターをしっかりと詰めて固めることが出来たので凄くありがたかったです。そのお陰で不安材料を少なくして現場に居ることが出来ました。
―― 役者さんが監督すると違いますか。例えば役者同士だからこそ通じ合えることとか。
光石:監督自身が役者だからこそ“寄り添ってもらった方が嬉しい”と思っていらっしゃるところがあったかもしれないですね。だからこそ特に若い役者には話す時間を多くして一緒に役を作っている感じでやっていらっしゃいました。
―― 映画を観ていると光石さんのひとり演技が非常に多かったような印象があります。【石田啓司】役の松重豊さんとの共演はいかがでしたか。『バイプレイヤーズ』みたいだ!と思いましたがアドリブなどはありましたか?
光石:そうですね(笑)。松重さんとは同じ北九州の出身でよく知っている仲ですが、僕の主演作だから出てくれたと思うので出演して頂いて感謝しています。一緒のシーンは本当に楽しかったですよ。撮影も地元の北九州だし。でもね、お酒を飲むシーンも含めてアドリブはいっさいないんです。
―― そうなんですか?!「しゃあしい(うるさい)」と何度も言っていましたが。
光石:あれは北九州の方言ね。それも台本に全部ちゃんと書いてありました。今回、僕は全然アドリブを言っていません。一度、武田鉄矢さんのマネをして台詞を言ったら監督が飛んで来て「駄目です、光石さん。そういう映画ではありませんから」って、凄く怒られてしまいました(笑)。
工藤:そうでしたね(笑)。リハーサルの時、1回だけ。
光石:娘の目の前の椅子に座っていて「お前、知っとるか?」と問うシーンのリハーサルでものまねをしたんです(笑)。その時に監督に怒られたから「お前、海外の映画祭とか狙っているんだろ?」と言ったんです。そうしたら本当にカンヌ国際映画祭ACID部門に正式出品されることになったから、今は“あの時、武田鉄矢さんのものまねをしなくて良かった”と思っています。
工藤:光石さんがものまねをしながら、アドリブをされたので“アドリブ、ありなんだ”と一瞬思ったんですけど“アドリブなし”でした(笑)。“光石さんでも駄目と言われることがあるんだ”とちょっと驚きました。
光石:それ以来、怒られるからこの現場ではアドリブはいっさいしなかったです(笑)。