2019年フィルメックス新人監督賞グランプリを受賞したシナリオが、この度映画に。それが光石研主演の『逃げきれた夢』であり、光石研本人の人生を取材してその一部を注入した、北九州に暮らす記憶が薄れていく病を持つ男の物語です。そのオリジナル脚本を書き上げ、監督を務めるのは監督作『枝葉のこと』(2017)が日本映画で唯一、第70回ロカルノ国際映画祭長編部門に選出され、自身も俳優である二ノ宮隆太郎。本作で12年ぶりの単独主演作となる光石研さんと娘役の工藤遥さんに撮影時の思い出や、互いの印象をお聞きしました。
―― お2人は初共演とお聞きしました。お互いの印象を教えて下さい。
工藤:光石さんと初めてお会いしたのが衣装合わせの時だったんですけど、その時の光石さんの私服姿がかっこよすぎて“素敵!”って思っていました(笑)。でもお父さん(【末永周平】)として私の目の前に現れた時、そのあまりにも情けない父親の姿に“こんなにもギャップがあるんだ”と驚きました。
光石:工藤さんって声が面白いんです。それが凄くチャーミングでね(笑)。撮影では、ソファーに寝転んで携帯を見ながら「エ~」って言うんですけど、その声が可笑しくてね(笑)“こういう子って居るよね”とずっと思っていました。それが本当にチャーミングで、その印象が凄く強いです。演技も完璧でした。実際にこういう子供、居そうですしね(笑)。
工藤:良かったです。
光石:あのジャージみたいな服は何って言うの?
工藤:ジェラートピケ(略称:ジェラピケ)というモコモコの部屋着を着ていました(笑)。
光石:ジェラートピケって言うんだ、オーデマピケ(時計メーカー)みたいだね。
―― (笑)今回の撮影は長回しで、ワンショットで撮影されているシーンが多かったような気がします。撮影は大変だったのではないですか。
光石:変なプレッシャーはなかったです。ありましたか?
工藤:あまり感じなかったです。
光石:もちろんある種の緊張感はありますが、構えるとかプレッシャーを受けるという感じはまったくなかったです。かと言って皆でワイワイ騒いでいるわけでもありません。きちんと粛々と撮影している印象です。
―― 映画後半の家族3人でのシーンでは光石さんの迫真の演技が観られますね。あのシーンも長回しでした。
工藤:あの時のことを思い出してみると、本当に凄く素敵なお芝居を目の前で見させてもらってばかりでした。そのお芝居を見て、ひとりの人間の工藤遥としては“凄い”と思うんです。でも娘【末永由真】としては“何してんの?”というちょっと冷めたテンションで演じないといけない、本来の工藤遥の部分と演じる【末永由真】の部分が私の中でせめぎ合っていました。
光石:そんなことないですよ。工藤遥の時も冷めた目で僕を見ていましたよ(笑)。
工藤:ないですっ、そんな事ないですっ。違いますっ(笑)。
―― お母さん【末永彰子】役は坂井真紀さんが演じられていますね。
光石:彼女も凄く冷たい目で‥‥、2人とも冷たい目で僕を見るんだよね。
一同:爆笑