May 25, 2023 interview

酒井大地 & 原愛音インタビュー 改めて映画を作る楽しさを知った『僕の町はお風呂が熱くて埋蔵金が出てラーメンが美味い。』

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―― 爽快感さえ感じる、いいシーンでした。今回の現場で今後に活かしていきたいと思うような出来事があれば教えて下さい。

酒井 : 僕は改めて映画を作る楽しさを知りました。この作品は地元のボランティアのスタッフさんが多かったんです。これまでの現場は映画一筋でやってきたプロフェッショナルな方達が作っている映画でした。でも今回はスタッフさんや地元のキャストさんと一緒に話しをしながら作り上げていきました。「こうやって映画は作られるんですね」と言われたりして、改めてそのことを認識して「映画は楽しんで作るのが一番いい」と思いました。

原  : 私は休みの日も現場に行って、スタッフさんのお手伝いをさせて頂いたりしていました。今までは演じる側でしたが、その裏には照明さんや色々なプロの方達がいらっしゃって、皆さんが協力し合ってアクシデントにも対応しながら1つのものを作り上げていく、その瞬間に自分が立ち会うことが出来た時に“凄く楽しい!”と感じたんです。演じているだけでは知ることが出来ない、スタッフさんとコミュニケーションを取っていないと体験出来ない特別な感覚があることを知りました。その経験が出来たことはとても貴重で、他の現場でも可能な限り、他のスタッフの皆さんとなるべくコミュニケーションを取りたいと思っています。皆さんで作り上げていくという感覚を今後も経験していけたらいいと感じています。

それと今回、監督に求められるものを監督に言われて何となく理解するということもありました。そこをもっと出来なかったのか?と反省していて、色々な選択肢をもっと持っていないといけないと思いました。例えば、1つの台詞にしても台詞的には元気そうな台詞だけど、悲しい感じで言うとどうなるんだろうとか。自分の中で色々な候補を出していく、そうしないといけないと感じました。その為には色々な作品を観たり、色々な経験をしないといけない、そうしないと得られないものだと思ったんです。今後も色々な作品を観たり、経験したりをずっと続けていきたいです。

酒井 : 僕は今作が初の主演作でした。主演として皆さんをどうやって引っぱっていこうと考えていたんですけど上手く出来なくて、逆にスタッフさんや他のキャストの皆さんに自分が引っぱって貰う側だった気がします。“主演としてリーダーシップをどうとれば良かったのか?”というのが僕の反省点です。

原  : 引っぱっていけてないとは思わなかったです。それこそ雰囲気を作るというか、2人を引っぱって3人でワチャワチャする感じが既に出ていたので皆さん安心して、その姿をそのまま撮るという感じでした。

酒井 : そう言われると少し安心します。ありがとうございます。そう感じるからこそ、僕は自然とマイノリティにスポットライトを当てるというか、“当たればいいな、僕に何か出来ることはないか”と常々、思っています。

―― 将来どんな役者 (人) になりたいですか。

酒井 : 僕は色々な作品に出られる俳優になりたいんです。その為には色々なことが出来るようになりたいので、色々な趣味を作ることを意識しています。今は運動が好きなので水泳とかしてみたいと思っています。

原  : 私はアクションをやってみたいんです。女性が前に立って戦う、そんな映画に凄く憧れがあるんです。いつかはそういう役を演じたいと思って、週1回、アクションのジムとキックボクシングを習っています。まだ基礎中の基礎ですが (笑) 。

―― 憧れの役者さんはいますか。

酒井 : 市原隼人さんのような俳優になりたいです。『空母いぶき』 (2019) で戦闘機に乗る役【アルバトロス隊隊長:迫水洋平】を市原隼人さんが演じているのですが、目だけで演技をされていて、目だけで伝えられるような俳優になりたいと思っています。

原  : 『キングダム2 遥かなる大地へ』 (2022) の清野菜名さんやドラマ『MOZU』(TBSテレビ / 2014)に出演されていた真木よう子さん。アクションも素晴らしいですし、ジャンルは違いますが2人が演じている姿を観て、凄くかっこいいと思いました。

―― 俳優以外で憧れる仕事はありますか。

酒井 : 僕は自衛隊です。僕の母が陸上自衛隊の音楽隊に所属していたんです。それで母から訓練の時の話を聞いたり、災害地に向かう自衛隊の方々を見て「僕も人を助ける仕事をしてみたい」と思いました。だから自衛官の方々は尊敬します。

原  : 最近、劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』 (2023) を観たこともあり、お医者さんや看護師さんって凄いと思います。専門用語は難しいと思いますが、あんな風に瞬時に判断する姿にも。お医者さんや看護師さんの役も演じてみたいですね。

“撮影現場を楽しむこと”。酒井さんや原さんのお話を聞いて、人と交流すること、その人のことを知り、仕事内容を知ることが映画作りを深めるんだと知りました。そのせいか、カメラは彼らの演技を信頼し、監督はカットをかけずに余白の演技を撮る演出。それがまた愛おしく登場人物の性格を更に垣間見る瞬間として楽しめました。『僕ラー』での経験が間違いなく今後の俳優人生に影響を及ぼしそうな予感。それを考えると彼らの未来に期待が膨らみます。

取材・文 / 伊藤さとり
写真 / 奥野和彦

作品情報
映画『僕の町はお風呂が熱くて埋蔵金が出てラーメンが美味い。』

富山県射水市の「内川」沿いに住む、ちょっとドジだが憎めない高校生男子三人組、トオル、アゲル、ヨシキ。それぞれ家族や進学、将来に悩みながらも同級生の女子・花凛との会話を弾ませ、大好きなラーメンを食べ、熱いお風呂に浸かり、久しぶりの放生津曳山祭を楽しみに過ごしていた。曳山祭りを翌日に控えた日、祭りの会長を務めるトオルの祖父・松蔵が急死した。ただ、370年続いた祭りの決まりで、総代や会長が亡くなったらその年は曳山が引けないという。松蔵が一番楽しみにしていた祭りが中止になるかもしれない。トオルはひらめいた。「じいちゃんはまだ死んどらんことにならんけ?」

監督:本多繫勝

出演:酒井大地、原 愛音、宮川元和、長徳章司、泉谷しげる、立川志の輔

配給:アークエンタテインメント

©AX-ON

5月26日(金)ユーロスペース、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

公式サイト ax-on.co.jp/sp/bokura

伊藤 さとり

映画パーソナリティ
年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当。 全国のTSUTAYA店内で流れるwave−C3「シネマmag」DJであり、自身が企画の映画番組、俳優や監督を招いての対談番組を多数持つ。また映画界、スターに詳しいこと、映画を心理的に定評があり、NTV「ZIP!」映画紹介枠、CX「めざまし土曜日」映画紹介枠 に解説で呼ばれることも多々。TOKYO-FM、JFN、TBSラジオの映画コーナー、映画番組特番DJ。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。心理カウンセリングも学んだことから「ぴあ」などで恋愛心理分析や映画心理テストも作成。著書「2分で距離を知事メル魔法の話術」(ワニブックス)。
2022年12月16日には最新刊「映画のセリフでこころをチャージ 愛の告白100選」(KADOKAWA)が発売 。 https://www.kadokawa.co.jp/product/302210001185/
伊藤さとり公式HP: https://itosatori.net