―― 佐藤緋美さん演じる幼馴染の【ター坊】が【千夏】の悩みを自分なりに解消してあげたいという思いからか、“オッパイは必要か?”と統計をとるシーンが大好きです。あのシーンを観て、コンプレックスは自分一人では解消出来ないものでもあると思いました。
吉田さんご自身はコンプレックスをどのように解消されていますか。
確かに周りからの影響で解消されることが大きいかもしれません。けれど、まだ自分自身の中では解消されていない部分もたくさんあります。ただ、色々な作品を経験することで役によってはコンプレックスが強みになっている場合もあります。そういうのを見つけた時は、はじめて“この私で良かった”と思える部分があるので、それは凄く嬉しいことですし、新しい発見でもあります。
監督が東京国際映画祭の舞台挨拶の時に「佐藤緋美さん演じる【ター坊】は僕自身」とお話されていたんです。【ター坊】は映画オリジナルキャラクターなんですが、そのお話を聞いた時、凄く腑に落ちました。【千夏】にエールを送ってくれるキャラクターである【ター坊】の温かさは監督の温かさなんだというのが伝わり、素敵だなと思いました。
―― 吉田さんが生きていくうえで、指針となっている言葉はありますか。
唯一無二の人。もちろん「この方のここ凄く素敵、勉強になる」と思わせてくださる女優さんや俳優さんはたくさんいらっしゃいます。それを吸収して“吉田美月喜を作っていきたい”とずっと思っています。
よくインタビューで「憧れの女優さんは?」と聞かれるのですが、いっぱい居すぎて凄く迷ってしまうんです。“たくさん居るのに私は何で質問に答えられないんだろう”と思った時に、私は色々な人の良い部分を吸収したい欲張りだということに気づきました(笑)。それらを吸収し吉田美月喜の形にしていきたいと思っていて、だからこそ今、色々な役柄、現場を沢山経験していっぱい吸収してみたいと思っています。
若くして自分の言葉をしっかり持った吉田美月喜さん。ひとつひとつの質問に考えながら、自分なりの答えを出す姿は周囲の人も感心するほど。私も含め、一気に好きになってしまったのでした。オ―ディションではまつむらしんご監督に様々なことを聞かれ、自分と【千夏】との共通点も見い出せたよう。役と向き合い、自分と向き合う。そんな吉田さんの人柄とリンクしたような主人公を応援したくなる映画です。
取材・文 / 伊藤さとり
写真 / 奥野和彦
港町の古い一軒家に暮らす武藤千夏と、母の昭子は、慎ましくも笑いの絶えない日々を過ごしていた。小説家を目指し念願の芸大に合格した千夏は、初恋の相手である川柳光輝と再会。再び自分の胸が踊り出すのを感じ、その想いを小説に綴っていくことにする。一方、母の昭子も、職場に赴任してきた木村基春の不器用だけど屈託のない人柄に興味を惹かれはじめており、20年ぶりにやってきたトキメキを同僚の花内透子にからかわれていた。そんなある日、昭子は千夏の部屋で“乳がん検診の再検査”の通知を見つけ、娘の身を案じ、本人以上にネガティブになっていく。だが千夏は光輝との距離が少しずつ縮まるのを感じ、「こんなに胸が高鳴っているのに、病気になんかなるわけない」と不安をごまかすように自分に言い聞かせる。少しずつ親子の気持ちがすれ違い始めた矢先、医師から再検査の結果が告げられる。初恋の胸の高鳴りは、いつしか胸さわぎに変わっていった‥‥。
監督:まつむらしんご
原作:戯曲「あつい胸さわぎ」横山拓也(iaku)
出演:吉田美月喜、常盤貴子、前田敦子、奥平大兼、三浦誠己、佐藤緋美、石原理衣
配給:イオンエンターテイメント/SDP
©2023 映画『あつい胸さわぎ』製作委員会
2023年1月27日(金) 新宿武蔵野館、イオンシネマほか全国
公式サイト あつい胸さわぎ.jp