まだ10代で乳がんが見つかった主人公と母親が、病気や恋を通して「女性とは」を見つめながら生きていく姿を描いた映画『あつい胸さわぎ』。劇作家・横山拓也による演劇ユニット「iaku」の同名舞台をコミカルな演出に定評がある『恋とさよならとハワイ』のまつむらしんご監督が映画化。脚本は『凶悪』の髙橋泉が担当し、シリアスなテーマを淡い恋と母娘の関係を織り交ぜながら、時折、切なさも漂わせながら心温まる物語として描いていきます。
この映画の主人公を演じるのはドラマ「ネメシス」「今際の国のアリス」の吉田美月喜、その母親に常盤貴子、更には奥平大兼、前田敦子ほか魅力的な俳優陣が顔を揃えています。今回は、主演の吉田美月喜さんにお話を伺います。
―― 10代で乳がんを患う【武藤千夏】を演じるに当たりリサーチなどされたのですか。乳房を失うということは、女性にとって大事なモノを手放すことになるとも考えられるので、どれだけの想いを抱え込んでいるのだろうと考えていました。
私が演じる【千夏】は18歳で私も撮影時、同じ18歳だったんです。年齢的にも“まだ関係ないことだ”という気持ちがありましたし、知らないことだらけでした。
まず乳がんということに対して“勉強をしないといけない”と思ってインターネットで調べたりもしました。今は凄い情報社会なので、色々な情報が書いてあって“どれが本当で、どれが間違った情報なのか?よくわからない”という感じで私自身が混乱してしまいました。
きっと【千夏】も私と同じ気持ちだったのではないでしょうか。よくわからないし、【千夏】にとって胸はある一言によってコンプレックスにもなっています。その為、人に言いづらいものになっていて‥‥。その部分と18歳ならではの高校を卒業して、大人になった気でいながらも周りの大人に頼らないと生きていけないという浮ついた部分が複雑に絡み合って起きていく出来事だと思っています。
乳がんのことも勉強しましたし、それだけでなく18歳のひとりの女の子の夏の成長物語として、年齢的にも精神的にも気持ちの揺らぎというか思春期の揺らぎを大切に演じていきました。
―― 映画ではシングルマザーと娘の関係も描かれます。そのせいか【千夏】が少し自立しているところを演技から感じていました。
この映画では、恋や病気、母の恋愛のことなど不安要素がたくさん出て来るのですが【千夏】は全部ちゃんと全力で悩んでいるんです。【千夏】が全力で悩むことが出来たのは、周りがちゃんと【千夏】を支えていて、見守っていたからこそ出来たことなんです。
それが“浮ついていない”という部分に繋がっているのかもしれません。周りが支えてくれているからこそ、どこに行ってもちゃんとブレずに悩める。凄く大きいことだと思います。
―― そうかもしれませんね。だからこそ前田敦子さん演じるお母さんの同僚【花内透子】に頼ることも出来る。
それと【千夏】の「小説家になりたい」という思いからの文章を書くシーンでのナレーションの声のトーンも絶妙で。
ありがとうございます(笑)撮影後にアフレコで入れた声になります。小説家のようにあまり感情を入れずにツラツラと読むやり方や、感情を込めて読むやり方など色々とあると思いますが、まつむらしんご監督と何回も時間をかけながらアフレコした部分なので、そう言ってもらえると嬉しいです。