―― 思い出深いシーンはどこですか。
遠藤 僕はキスシーンです。お客さんにとってもある種のカタルシスだと思うし、それだけでなく現場でもリハーサルも含めて何回もやったんです。あのシーンは印象に残っています。監督も凄くこだわっていてより大事なシーンです。
唐田 私も同じシーンです。凄く覚えています。2人の関係性が急に近づく瞬間なので何回もやっていくうちに、ちょっとわからなくなる瞬間がありましたね。
―― 自分の考えを語るシーンが多かったのですが、忘れられない台詞はありますか。
唐田 凄く覚えているのは、男の人のことを「セックスアニマル」と言うところです(笑)。
遠藤 あったね(笑)僕は忌憚のない台詞を言うと「連絡先を教えて」なんだよね(笑)。“お前、どういう事?なんなんだよ”と思いながら演じていました。本当にあの台詞は衝撃的で。本を読んだ時も思ったけど、出来上がった作品を観てより思いました。
―― あれは信じられない!あきれながら笑うシーンでしたね。ちなみに役と自分との共通点はありますか。
唐田 少しあると思います。【里美】も凄く人のことを見ていて、感じることが多い人だと思うんです。そういうところや【里美】ほどではありませんが、思っていることをポンと言ってしまうところとかは少し似ているかもしれません。
遠藤 難しいですけど何だろう‥‥。たぶん、【智徳】はモテない男性像なんです、本当は。僕もモテてきた人生ではないので、そこは似ています。
唐田 本当ですか?
遠藤 本当にモテてきた人生ではなかったです、モテないこともなかったですけど、恋愛において一番微妙なラインだったんです。その冴えない感じは似ているかも。でも、その微妙なラインだとわかっているのに【智徳】は女性にアプローチしていく、それが凄い。僕はアプローチ出来ないから、傷つきたくないから怯えるんです。
唐田 確かに話を聞いていたら奥手そうな感じがありました。
遠藤 僕は奥手ですよ(笑)。
―― 絶妙な距離感、共感度のあるキャラクターを演じる時は、どのように役を構築していくのですか。
唐田 共通点を探して、そこを大きくしていくイメージです。
遠藤 僕も一緒です。自分の人生を使って投影させていく方法です。あまりにも自分とかけ離れた役、現実とかけ離れた役を表現する時は、出来るだけ実感を持って演じないといけないので自分の人生を投影させ、それを使いながら表現していくことが多いです。今回もそうでしたね。
―― 俳優にとって必要なことは、なんだと思いますか。
遠藤 シナリオです。俳優は、作品がないと居る意味がないと思っています。例えば、自分がどうしても理解できないところが脚本にあった場合は、作品の為になるならば、なるべく言うようにしています。主観的というよりは客観的に「こちらの方がお客さんに伝わりやすい、面白いのではないか」という意味で伝えます。
―― 脚本を読み込む、身体の中に入れ込むという感じですか。
遠藤 読み込みますけど、解釈で演じたくはないんです。解釈が強くなってしまうとそれはそれで問題で、せっかく相手役の俳優さんが居て、一緒に演じている訳ですからそこは大事にしないと。
唐田 凄く考えていたのですが、答えに行き着いてなくて‥‥、最初に思ったのは人間性です。人間性が見えないと作品にすら呼んでもらえないし、呼んでもらえたとしても次の作品に繋がらないかもしれない。でも人間性が監督や作品とマッチしても芝居が駄目な場合もあると思うので‥‥。
遠藤 そこが比例するかどうかが難しいところだよね。
唐田 芝居を通していても、役にその人の人間性や色が出ると思うんです。役である前に自分が人として少しでも経験や知識を積み重ねていかないといけないと思うので、人として自分を磨いていけたらと思っています。