―― 【亜子】の内面を見ていくうちに“そんなに悩んでいたんだ”と思いました。自分に自信がないから夢を諦めかけていて、こじらせてしまっている状況が物語ではだんだんと分かってきます。
【亜子】と同じような気持ちを持つ人にお二人がアドバイスするとしたらいかがですか。
高杉 “比べる事の不幸せさ”っていったらないですから。基本、どれもそうだと思うんです。小さい頃に言われた「人は人、自分は自分、家は家」、それが一番正しいと僕は思うんです。比べて良いことももちろんあります。でも比べることでポジティブに出来るかどうかは自分次第だから‥‥。
それが叶わないのなら比べずに自分自身で見つめる方が有意義なような気がしています。SNSなどもあり、人を見る事が多くなった今の時代では、余計に難しいとは思いますが、自分自身を見つめたうえで“夢をどうするのか?”を考えていくのがいいような気がしています。
関水 私もいまだに自信がない時があります。高校生ぐらいの時まで本当に自信がない子だったんです。周りとも比べていたし、実際に周りと比べて出来ることも少なくて、人より出来た経験が本当に少なかったんです。でも今、こうやって自分が好きな仕事や趣味などを大人になってからちょっとずつですが見つけることが出来ました。
学生の頃は比べちゃうし、比べられるのはしょうがない。だから凄く難しいと思いますが、割り切って自信のない自分を受け入れる。自信を持とうとするのではなく“自分は今、自信がない”ということを受け入れつつ、生活する方がちょっと樂なのではないかと思います。
―― 自信をなくした時に“この仕事向いてないかも?”と思うことがあったとしても、続けている理由はなんですか。
高杉 “何故したいのか、何が面白くてしているのか”をその時、考えます。僕自身、出来ないことの方が多いのでへこむこともあります。でも辞めるのも続けるのも自分次第でどうにでも出来る、辞めて困ることもありますが、楽になることも沢山あると思います。
それでも“続けたいと思う理由は何なのか”を考えることは大事なことだと思っています。それがこの仕事をやっていることの好きな理由だと思うので。今は“楽しいから”、突き詰めればそれだけです。楽しいから、面白いから、悔しいから、そういう単純な喜怒哀楽で続けているような気がします。
関水 確かに誰しもが“向いてないかも、向いてないから辞めた方がいいかも?”と思うことがあると思うんです。私自身もあります。辞めたいのか、辞めた方がいいのか、を自分の中でちゃんと分析して考えて、“好きだけど辞めた方がいい”と勝手に思っているのなら続けた方がいいと思うし、逆に“好きではなくなってしまったから辞めたい”のなら辞めてもいいと思います。
自分は今の仕事を“辞めた方がいいかも?”と思うことが多くて“辞めたい”と思ったことはないんです。そういう時は“何で辞めた方がいいと思ったんだろう?”と考えて“自分の演技が出来ていなかったからかな?”とかを分析、理由をきちんと考えて原因を見つけて、それを解決して気持ちを修復していく感じですね。
漫画好きな高杉さんが、関水さんがギャグ漫画を読んでいることに驚いたと笑っていた楽しい対談。石橋蓮司さんを始めとする個性的なベテラン勢の中で、自分探しをする登場人物達を演じた高杉さんと関水さんはバディのように作品作りをしていたように感じました。「誰かと食べる美味しい食」こそが心を癒すのだ、とも読み取れた本作。人との出会いが人生を潤すという心に寄り添った快作です。
取材・文 / 伊藤さとり
写真 / 奥野和彦
ヘアメイク・スタイリスト / 【高杉真宙】堤紗也香・荒木大輔、【関水渚】太田瑛絵(nude.)・津野真吾(Impiger)
海辺の診療所で、祖父と共に働く医者の俊英。彼の前に、ある日、憧れの女性にそっくりな亜子が現れる。胸ときめくも束の間、”こじらせ女子”の亜子に振り回され、彼の理想像は粉々に。だが、あきらめきれない夢と現実の間で傷つく亜子の素顔を知るにつれ、淡々と生きていた彼の何かが変わってゆく。そして、亜子もまた、俊英や“じいさん”、家政婦の“キヨさん”と囲む家族のあたたかい食卓に、かけがえのないものを見出していく…。偶然のいたずらで、ひとつ屋根の下で暮らすことになった二人の恋と家族の”繋がり”を描く、ハートウォーミング・ラブストーリー。
監督:長崎俊一
出演:高杉真宙、関水渚 、水島かおり、小野ゆり子、DJ松永(Creepy Nuts) 佐藤貢三、中島歩、江頭勇哉/、芹川藍 、石橋蓮司
配給:バンダイナムコフィルムワークス
© 2022『いつか、いつも‥‥‥いつまでも。』製作委員会
2022年10月14日(金) 全国公開
公式サイト itsuitsu-eiga.com