Apr 22, 2022 interview

萩原みのり&山谷花純インタビュー 『N号棟』で深めたぶつかりあえる関係

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―― お二人とも10代から芸能界で活動されていますが、お二人にとって役者とは何ですか。

萩原 先ほど花純ちゃんが言ったように嘘をつくのは嫌なんですけど、お芝居って全部嘘ですよね。私ではないし、私が思って言ったことでもない。でもそれを限りなく本当にする。限りなく嘘ではない状態に持っていくのが役者という仕事だと思っています。「カメラの前で絶対に嘘をつきたくない」「側だけ作ろうということはしたくない」という想いはずっとあります。

だからこそ今回は【死恐怖症】について考え過ぎてしまって本当に【死恐怖症】状態に陥ってしまったりもしました。でもそれは現場でカメラの前で【死恐怖症】を出せなかったら“嫌だ”と思ったからなんです。わかりやすくいうと「ここで泣いて欲しい」というシーンがあった場合、そこで泣くためには、その役としての想いをMAXの状態に持っていく為に萩原みのりとしての隙間を取っておきたくないんです。萩原みのりの隙間があると邪心が入ってしまって絶対に泣けないから。

心の使い方が上手くて、もっとラフに器用に演じることが出来る役者さんもいらっしゃいます。でも私はそれが出来なくて、ちょっとでも邪心があると一切集中できなくなってしまうんです。だから事前に準備をする。クランクインしたら(脚)本を開きません。インしたら(脚)本の中には答えがないと思っているので、現場で感じたこと、感じることを大事にしています。ビビりなんですよね(笑)。役者はビビリな人、繊細な人が「それでいい」と肯定される仕事。私がこの仕事をして良かったと思えるのは、自分が不器用であることを良いものに出来るからで、そこが救いの部分だと思ってています。

萩原みのり&山谷花純インタビュー 『N号棟』で深めたぶつかりあえる関係

―― 萩原さんの『成れの果て』(公開:2021)と今作を観て、あの震えている感じが本当にリアルで、今、お話を聞いて納得しました。山谷さんはいかがですか。

山谷 私の場合は逆で感情を作って作って現場に立つというよりも、究極、他のことを考えながらでもその場に立って台詞を言うようにしています。描きたい感情は台詞を喋った後に付いてくる感情がもしかしたら正解なのではないかと、最近はお芝居をしながら思ったんです。前だったら「こういう風に表現をしたい」「こういうものを役として見せた方がいいのでは」と凄く頭でっかちになっていた部分があって、それが年齢を重ねるごとに自分にとって凄い重みに感じていったんです。

一回、それを取っ払ってその場で起きたことを如何に早く台詞を喋って、その後に感情が追い付いてくるという演じ方が、出来上がった作品を観た時に、より人間らしいというか、より入って来やすかったりする部分があるんです。

演じている時は、自分的には物足りなく感じるし、本当にこれで良かったのか、間違っていたかもと思うのですが‥‥。日常生活でも、こうやって取材を受けている時でも“あ、人が入って来たな”と思ったりしますよね?そんな風に集中を分散させながら生きているから、役者は嘘を本当に見せる仕事ではあるけれども、それを当たり前に出来るようになったら怖いものが無くなるというふうに最近は思っています。

萩原みのり&山谷花純インタビュー 『N号棟』で深めたぶつかりあえる関係

正反対の演技アプローチだから、互いに刺激し合い、必要とし合い、リスペクトし合う関係が生まれている気がした萩原みのりさんと山谷花純さん。2人が話すように、ただのホラーではなく、考察型のホラーというだけあって心理描写も多かった『N号棟』。恐怖に慄く表情や高揚感を得る表情は、嘘がバレてしまいがちだからこそ、その白身の演技に魅せられ、物語に没入し、先の読めない得体の知れない期待を楽しむのです。

文 / 伊藤さとり
写真 / 奥野和彦


作品情報
萩原みのり&山谷花純インタビュー 『N号棟』で深めたぶつかりあえる関係
映画『N号棟』

とある地方都市。かつて霊が出るという噂で有名だった廃団地。女子大生・史織が同じ大学に通う啓太・真帆と共に興味本位で訪れると、なぜかそこには数多くの住人たちがいる。3人が調査を進めようとすると、突如激しい<怪奇ラップ現象>が起る。そして、目の前で住人が飛び降り自殺をしてしまう。驚く3人だが、住人たちは顔色一つ変えない。何が起きているのか理解できないまま、その後も続発する、自殺とラップ現象‥‥住人たちは、恐怖する若者たちを優しく抱きしめ、仲間にしようと巧みに誘惑してくる。超常現象、臨死浮遊、霊の出現‥‥「神秘的体験」に魅せられた啓太や真帆は洗脳されていく。仲間を失い、追い詰められた史織は、自殺者が運び込まれた建物内へ侵入するが、そこで彼女が見たものは、思いもよらぬものだった。

監督・脚本:後藤庸介

出演:萩原みのり、山谷花純、倉悠貴 / 岡部たかし、諏訪太朗、赤間麻里子 / 筒井真理子

配給:SDP

©「N号棟」製作委員会

2022年4月29日(金・祝) 新宿ピカデリーほか全国公開

公式サイト n-goto.com

伊藤 さとり

映画パーソナリティ
年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当。 全国のTSUTAYA店内で流れるwave−C3「シネマmag」DJであり、自身が企画の映画番組、俳優や監督を招いての対談番組を多数持つ。また映画界、スターに詳しいこと、映画を心理的に定評があり、NTV「ZIP!」映画紹介枠、CX「めざまし土曜日」映画紹介枠 に解説で呼ばれることも多々。TOKYO-FM、JFN、TBSラジオの映画コーナー、映画番組特番DJ。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。心理カウンセリングも学んだことから「ぴあ」などで恋愛心理分析や映画心理テストも作成。著書「2分で距離を知事メル魔法の話術」(ワニブックス)。
伊藤さとり公式HP: https://itosatori.net