―― スタントマンの人たちを多く起用していることにグッときていました。蒔田さんは皆さんがアクションをしている姿を現場で見ていて、どんな印象を持たれましたか。
蒔田 私たち役者側にはないような団結力というか、お互いがどうやったらお互いによく見えるかを考えている、そんなチーム感に深いものを感じていました。
―― ディーンさんの現場での印象はいかがですか。
蒔田 松永監督は「これだ!」と思うまで何度も何度もテイクを重ねるんです。そんな時でもディーンさんは毎回それ以上のテンションで来て下さるんです。それが完成した作品を観ても感じますし、現場でそうして頂けたことがありがたかったです。
―― ディーンさんは蒔田さんとの共演はいかがでしたか。
ディーン あのタイミングで蒔田彩珠という一人の女優さんと共演出来て良かったです。【アユミ】という女子高生の役をその人生のタイミングでクロスさせられて、かつ一人のプロの女優として的確に撮影を進めていくということは、絶妙なタイミングだったと思います。もちろん歳を重ねれば重ねただけ技術的なことや経験は増していきます。でも、その時にしか持ち得ない感性や奏でられらない音みたいなものが絶対ある。そういう彩珠の魅力が詰まった作品にもなっていると思います。
―― 『朝が来る』(公開:2021年)の蒔田さんの演技も忘れられませんが、ディーンさんは本作の原案の部分も考えていられるんですよね。【アユミ】というキャラクターにはどんなイメージを持たれていたのですか。
ディーン 簡単に言うと『レオン(1994)』(公開:1995年)のレオンとマチルダみたいな関係性です。物語の構造のなかでの【立石】というキャラクターは社会に馴染めない生き方をせざるを得ない、そして最終的には不条理に飲み込まれて押しつぶされて消えていくという展開を作ろうと思った時に“マチルダ的存在が絶対に必要だ”と思いました。それが後に【アユミ】というキャラクター名になった感じです。
―― 一緒に共演している人が物語も作られている、凄く緊張したのではないですか?
蒔田 それが緊張はそんなに無かったんです。
ディーン 逆な気がしますね。役者としてだけで作品に関わっている人間同士の関係性と、一人の役者と企画・プロデュースかつ出演している人間との関係性は、だいぶ違う空気になると思います。
蒔田 そうですね。緊張は無いんですが、逆に“信じてもらえているのかな”という気持ちがありました。
ディーン 役者の仕事って、当たり前ですが監督との関係性が主軸にあって、現場で監督から指示されたことを全うするのが最優先になると思います。先程の彩珠の話を聞いていても思ったのが、やっぱりアクションチームって皆で一致団結してどうやったら全体像のクオリティーを上げるかに力が働くんです。でも役者はどっちかっていうと一人一人が監督との関係性の中で役を詰めていく。だから役者同士がアクションチームのような関係性になることはあまりない気がします。
―― 蒔田さんはディーンさんとご一緒してたくさんの刺激を受けたのではないですか?
蒔田 どの作品でもそうですが、作品全体というよりは、私はつい自分の役のことばかりを考えてしまうんです。ディーンさんは肉体作りもそうですし本当に大変な役で、ご自身のことだけでも大変なのに私だけでなく出演している全ての役者さんの役柄や全体のことを常に考えていて“私には出来ない”と思いながらディーンさんのことを見ていました(笑)。
ディーン 演者はそれが仕事だからね、それで正しいと思うよ。