モデル、俳優、ミュージシャンなど多岐にわたり活躍するディーン・フジオカが企画、プロデュース、そして主演を務めた映画『Pure Japanese』。その物語は元アクション俳優の男が、孤独な少女を救うことで自身のトラウマと向き合いながら、次第に狂気的な一面を見せ始めるというバイオレンスアクションです。監督は『トイレのピエタ』で国内外の映画祭で高い評価を得た松永大司監督。更に『朝が来る』(公開:2021年)の迫真の演技で大注目の蒔田彩珠がヒロインを務めます。
独創的な映像美で人間の表裏を描いた本作、そのほとんどのアクションを請け負ったというディーン・フジオカさん。まさに製作から主演、アクションまで担うほど、情熱を注いだ映画となったわけですが、ディーンさんご自身には本作にかけた思いを、そして共演の蒔田彩珠さんには、俳優として刺激を受けたことを伺います。
―― 映画に登場するP(ure)J(apanese)キットはもしかしたらPCRキットをイメージされているのですか。とてもシュールだけど胸に刺さりました。
ディーン コロナ禍での撮影だったので、PJキットは確かにPCRキットをイメージしてます。さらにもっとお菓子みたいな、いわゆるパーティーグッズみたいなパッケージにしたかったんです。文字フォントも【ぴゅあ】をひらがなにして【ジャパニーズ】をカタカナにするなどして、あえてふざけた感じにしました。
―― ジャパンアクションクラブの俳優が映画主演を果たしていた時代のように、“日本も昔みたいにアクション映画がもっと作られればいいな”と常々思っているんです。“最近、なぜ日本のメジャーではアクション映画を作らなくなっているのか”を考えている中で、ディーンさんがアクション映画を作ろうと思われたのは、スタントチームとの出会いなどからですか?
ディーン ジャパンアクションクラブは日本のレガシーですよね。中華圏や東南アジアなどで色々と仕事をやって来た中で、アジア人はアクションに優れている、アクションに向いているとずっと思っていました。日本にもとても優秀なスタントマンが沢山いて、彼らが海外で活躍してる姿は素晴らしいことだと思っています。
実は中華圏で仕事をしていた頃からずっとそうなんですが、自分が俳優として現場に居るのに、一番長く喋っているのは気付いたらいつもアクションチームの人たちでした。自分は出演者としてそこには居るけれど、アクションチームの一員のような親近感がずっとありました(笑)。
僕は10年ぐらい前から日本で仕事し始めたわけですが、現場で出会うスタントマンたちと話をしていくなかで、日本国内ではスタントチームが活躍する機会が減っていることを知りました。だから単純に“もっと日本でアクションを作ればいいのに”と思うようになりました。古民家再生ではありませんが、日本のレガシーであるアクション・スタントの様式美が力を発揮できる機会がもっと増えればいいなと思っていたので、そういう意味でも今回の役は元アクションスタントマンという設定にしています。『蒲田行進曲』(公開:1982年)ではありませんが、アクション俳優やスタントマンというキャラクター達に光を当てたかった。
スタントチームの方ってどこか「怪我したから今日は良い仕事をした」的な感覚があると思います。リスクがある中で体を張る。それは本当に心から好きなことでないと出来ないといつも思います。僕はその光景に込み上げるものを感じてきたので、今回のような切り口で作品を作りました。