Dec 25, 2021 interview

安藤政信インタビュー 阪本監督がもがきながら映画を生み出したように感じた『弟とアンドロイドと僕』

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これまで様々な角度から「人間」をスクリーンに映し出してきた映画監督・阪本順治。多くの俳優に愛され、ハードボイルドからコメディまで多岐に渡るジャンルで「人」を撮ってきた阪本監督が、初めて自身の「内面」にしっかりと目を向けたオリジナル作品を発表。新作『弟とアンドロイドと僕』は、25年近く前に書いた短いプロットを阪本監督自身が再構築し、『顔』や『新・仁義なき戦い。』他、阪本組でお馴染みの豊川悦司に主演をオファー。孤独なロボット工学者が、自分そっくりのアンドロイドを開発する中で、自分の幼少期の記憶をフラッシュバックさせながらある計画を練るというミステリー。今回は、主人公の運命を狂わせる存在となる義理の弟・求を演じた安藤政信さんにお話を伺います。

―― 『弟とアンドロイドと僕』はアート的な世界観で見る人によって見方も違いそうですし、脳を刺激しますよね。

凄く詩的だと思いました。特にずっと雨が降り続けているところ、その文脈が凄く意味深くて‥‥。脚本を読んだ感想は、人というのは、悲しみだったり、何かに暮れるというのはとても感傷的であり、何だか映画全体が泣いている感じがしました。怒っていても、何かをしていても、争っていても、どこか傷ついている部分がある。そんな悲しい涙を雨で表現しているのか、もしくは何かを洗い流しているような印象を強く感じていました。それに水の音や何かが流れる音は、母親の胎内を表現しているようで、羊水の中に浸かっているような感じがして、水の音によって癒される、安心感がある、そういうことなんじゃないかとも思いました。脚本を読んだ時に、俺はそんな風に文脈を感じていましたね。

―― 確かにそうですね。豊川悦司さんと片山友希さんが自転車で穴のような岩の壁を通って行くシーンは、まるで子宮に入って行くように見えました。

俺はいつもそう考えています。人は男女共に女性から産まれる。実はこの間、俺は子宮をずっと撮り続けるカメラマンをやったのですが、やっぱり俺はどこか子宮というものに執着するんだな、と思いました。凄く気になるんです。この映画を観たその日に阪本監督に感想を送ったんですけど、阪本監督がもがきながら映画を生み出したように感じたんですよ。今の時代のせいもきっとあるし、“寂しいのかな?抱きしめて上げないと、この人は孤独に耐えられないかも”とも思ってしまったんです。これまでの阪本監督の作品は、孤独だろうと何だろうと、阪本順治という人のエネルギーを強く感じたんです。それが今作『弟とアンドロイドと僕』では、今までのドヤ街に居てホルモンを食べているようなエネルギッシュさとは全く違っていて、薄いガラスにヒビが入っていつ崩れてもおかしくないような人間性に見えたんです。

撮影中に理解出来ないことがあったりして少しカッとなってしまったんですが、その後、“ちょっと違う”と思って‥‥。「本当に抱きしめる」ということはその映画を監督だとしたら、俺もフォトグラファーとして“その作品を全部受け入れて欲しい”という気持ちになる、それが抱きしめるということ、その作品をハグすることだと思うんです。だから「本当に素晴らしかったと思うし、僕は阪本監督が脱皮してさらに成熟した大人になった作品だと思います。僕は好きな作品です」とすぐ感想をメールしました。

―― 今、個人でお仕事されていて、阪本監督も人づてに安藤さんの電話番号を知って連絡してきたんですよね?

そうなんです、今、自分のホームページも出していないので、俺を知っている人が連絡先を教えてくれる状況なんです。ある日、突然、知らない番号で着信があって、留守電を聞いたら阪本監督だったから慌てて折り返し電話をかけました。阪本監督とは『亡国のイージス』でご一緒して以来だったので、是非、とすぐにオファーを受けました。

この状況ですが、ありがたいことに仕事は来年(2022年)6月ぐらいまで入っています。どれも電話やメールで連絡を取り合っているうちに「会いましょう」となって、年下のプロデューサーに「私はこういうのを作りたい」と情熱を持って話されると「是非、自分が力になれるんだったら」となるんですよね。俺には今マネージャーが居ないから、直接、プロデューサーから連絡をもらってスケジュールを確認してるんです。「この日はどうですか」と聞かれて、スケジュール調整してもらってるんです(笑)