Nov 18, 2021 interview

「未体験ジャンルの作品で純粋に楽しかったし、間違いなく凄い作品です」川口春奈が語る出演作『聖地X』

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―― 共演した岡田将生さんは、どんな役者さんだと思いましたか。

岡田さんはずっと【輝夫】のことを考えていました。本人は言わないけど撮影が終わってもずっと作品の事、明日の撮影の事を考えているような印象を持ちました。感覚というよりは緻密に計算する、考えて考えて演じられる方なんだと今回初めて共演させて頂いて思いました。

―― 川口さんはどうなのですか?

私はあまり考えないです(笑)直感というか、感覚で演じているので、同じようなお芝居は出来ないです。本当に感性というか・・・、なのであんまり舞台には向いてないと思っています。岡田さんには忍耐力、精神力を凄く感じました。

―― この映画は劇団・イキウメの舞台を映画化した作品なので舞台っぽい会話劇も楽しめます。この作品に挑んだことでご自身の中で新たな演技の発見などありましたか。

何と言っていいかわからないジャンルの作品に出演したのは、今回が初めてで入江監督の描く世界観に飛び込んでお芝居をさせてもらえたり、実際に出来上がった作品も「間違いなく凄い作品になった」と思っています。まだ経験したことがないような作品ではあるので純粋に楽しかったし、【要】というキャラクターを演じられて役のふり幅も広がったと凄く感じています。

―― 『クリーピー 偽りの隣人』(公開:2016年)や『絶叫学級』(公開:2013年)などホラー要素のある作品に参加する面白さはありますか?

そうですね、とはいえ根底には気持ちが動いてお芝居をしているので、ジャンル問わず自分自身はどの作品も面白いし、楽しいし、難しいし、わからない、みたいな感じです。ちょっとした表現、表情はホラー独特というか特有でふり幅がギューンとなる。クライマックスシーンの【要】と韓国に来たばかりの【要】との違い、ギャップみたいなものを表現する上での幅の広さに難しさは感じました。それに何度も経験出来る作品ではないからこその新鮮さがありました。

―― この映画の面白さに【要】の恋愛における心の成長があると思います。岡田将生さん演じる主人公【輝夫】とは別の軸でドラマを引っ張っている印象を持ちました。川口さんは脚本を読んでどう思いましたか。

【要】だけでなく兄の【輝夫】もそうだし、皆の成長が描かれていますよね。葛藤して悩んで「ワ~」となって、自分なりに自分と向き合って時が解決する事もあるだろうし、その環境に居るとマインドが変わることもある。韓国に来たことによって起こる変化、人間としての成長みたいなものは、しっかりと描かれているんじゃないかと思いました。

―― 川口さんにとって役者として転機となった出来事や作品はありますか。

実はいまだにわからないんです。いまだに「ここが転機、これがターニングポイント」と自分が思えていないんですよね。本当に毎日手探りで・・・。“いつになったら段取りよく、自分なりのやり方で「こうやればいいんだ」という道筋が見えるのか”と思うくらい分からないです。だから毎作品、飛び込むという感覚が強いです。もちろん毎回、スタッフさんや共演者の方達も「はじめまして」からのスタートであって、それからコミュニケーションをとってやっていくという意味でも一生慣れないし、一生やっている限りは正解がなく、満足も出来ずにやるんだろうなと。その積み重ねが気づいたら自分の成長やステップアップになってくれたらいいなと思っています。

だから、正直分からないんです。分からないし、難しいから飽きない。ずっと同じ平坦なリズム通りの日常ってきっと多分、私には無理で、色々な刺激があって、また新しい組と撮影をする。そんな風に常に新しいもの、新しいものをアウトプットしているからこそ、それが刺激的でたまらないのだと思っています。

今年の紅白歌合戦の司会にも抜擢された川口春奈さん。彼女が演じる【要】が体験する摩訶不思議な現象は、否が応でも多くの人に自分を見つめる機会を与える不思議な経験へと変わっていきます。演技のアプローチも個性も違う俳優たちが織りなすミステリアスで笑いを誘う群像劇のようなスリラー『聖地X』。川口春奈さん演じる【要】の表情が少しずつ変化していく様子から、傷ついた心を癒す為には、自分と向き合うことが特効薬だという心理が映し出されるのです。

文 / 伊藤さとり
写真 / 奥野和彦


作品情報
映画『聖地X』

その土地には、絶対に行ってはならない。ひとたび足を踏み入れた者は、想像を絶する奇妙な現象に巻き込まれ、死ぬまで悪夢は終わらない。小説家志望の輝夫(岡田将生)は、父親が遺した別荘のある韓国に渡り、悠々自適の引きこもりライフを満喫中。そこへ結婚生活に愛想をつかした妹の要が転がり込んでくる。しかし、韓国の商店街で日本に残してきた夫の滋を見かける要。その後を追ってたどり着いたのは、巨大な木と不気味な井戸を擁する和食店。無人のはずの店内から姿を現したのは、パスポートはおろか着の身着のまま、記憶さえもあやふやな滋だった。輝夫と要は別荘で滋を取り押さえ、東京にいる上司の星野に連絡すると、滋はいつも通り会社に出勤しているという。では輝夫と要が捕まえた滋のような男は一体誰なのか?さらに妻の京子が謎の記憶喪失に襲われた和食店の店長・忠(渋川清彦)は、「この店やっぱり呪われているかもしれません」と言い出す始末。日本人オーナー江口いわく、店の建っている土地では、過去にも同じように奇妙な事件があったことがわかってくる。負の連鎖を断ち切るため、強力なムーダン(祈祷師)がお祓いを試みるも、封印された“気”の前には太刀打ちできない。この地に宿るのは神か、それとも悪魔か?彼らはここで繰り返されてきた数々の惨劇から逃れ、増幅し続ける呪いから解放されることはできるのか・・・想像を絶する悪夢が今はじまる。

監督・脚本:入江悠

原作:前川知大「聖地X」

出演:岡田将生、川口春奈、渋川清彦、山田真歩、薬丸翔、パク・イヒョン、パク・ソユン、キム・テヒョン、真木よう子、緒形直人

配給: GAGA、朝日新聞社

©2021 「聖地 X 」製作委員会

2021年11月19日 全国公開

公式サイト seichi-x.com

伊藤 さとり

映画パーソナリティ
年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当。 全国のTSUTAYA店内で流れるwave−C3「シネマmag」DJであり、自身が企画の映画番組、俳優や監督を招いての対談番組を多数持つ。また映画界、スターに詳しいこと、映画を心理的に定評があり、NTV「ZIP!」映画紹介枠、CX「めざまし土曜日」映画紹介枠 に解説で呼ばれることも多々。TOKYO-FM、JFN、TBSラジオの映画コーナー、映画番組特番DJ。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。心理カウンセリングも学んだことから「ぴあ」などで恋愛心理分析や映画心理テストも作成。著書「2分で距離を知事メル魔法の話術」(ワニブックス)。
2022年12月16日には最新刊「映画のセリフでこころをチャージ 愛の告白100選」(KADOKAWA)が発売 。 https://www.kadokawa.co.jp/product/302210001185/
伊藤さとり公式HP: https://itosatori.net