―― 俳優は人の人生を体現する、それは責任も背負っているということですよね。
そうですね。どの役においても最低限、その道の方にガッカリさせるようなことは出来ないです。
―― デビューから15年、役者として過ごされていますが、俳優として考え方が変わった瞬間や出会いはありますか。
日々あります、日々影響を受けています。今自分の中でひとつの答えとして“これを大事にしていかないといけない”と思っているのは、先日とある番組で自分のことを応援して下さっている方を取り上げた番組があったんです。そこで『おっさんずラブ』を見続けて下さっている方が「当時、色々と苦しいことがあって『おっさんずラブ』で自分は命を救われた」と仰って下さったんです。
その時に、より自分が突き進んでいかなければいけない、突き進んでいきたいと思える道が広がったといいますか、明確になったんです。人が喜ぶ、人に元気を与えるシンプルな作品に出演したい、そういう作品に参加したいという想いに駆られました。ずっと色々なことを考えながら、このお仕事を続けていく中で、どうしても“自分はこうなっていきたい。この役に挑戦する自分を見てもらいたい”という野心的なものが常にある中で役者をやっていたんです。
でも、そういうことよりも今回の『犬部!』もそうですが、人の人生だったり、生活に影響を与えられるようなお仕事をさせて頂いているので、より人に元気を与えられる作品に参加していくことに重きをおいてもいいのかなと考えたりしています。
―― 今回の現場は、中川大志さんをはじめちょっと下の年齢の後輩にあたる俳優たちとの共演でした。林さんは30歳になり、役者としても中堅に差し掛かってきたと思います。だからこそ自分の立ち位置を考えたりしますか。
(中川)大志は年齢はけっこう下なのですが、僕が大志と同じ年齢の時には“こんなにも自分の役や作品に対してブレない気持ちでやっていたのか”と問われると“そうは思えない”と思うほどの存在です。皆さん凄く誠実に役と向き合っていて、そこから得るものもありました。 自分が20代前半の時は、それこそ野心むき出しというか、そういうタイプだったんです。でも今はできる限り共演者やスタッフの方たちとの壁を取っ払って、交流を持つように、色々な意見を交わせるようにしようと(笑)年々、そういう風に少し意識しながらやっています。
2007年公開の『バッテリー』で主演として俳優デビューを飾った林遣都さん。デビュー当時から常にセンターに立ち、シリアスからコメディまで演じ分け、年齢を重ね、更にキャラクターに深みを与える役者へと進化し続けております。気付けば出会ってから15年。どんな時も丁寧に真っ直ぐな瞳でインタビューに答えてくれる林遣都さんは、今回のインタビューでは映画で共演した犬の花子役の「ちえ」と再会。「賢い名犬」と言っていた通り、抜群のコンビネーションであっという間に撮影を終え、場を和ませておりました!
文 / 伊藤さとり
写真 / 奥野和彦
ずっと心に「犬部」を抱いて。16年にわたる人と動物の心を描いた感動ドラマ。
青森県十和田市に、一人の変わり者がいた。花井颯太(林遣都)22歳、獣医学部の大学生。子どもの頃から大の犬好きで、一人暮らしのアパートには保護動物がぎっしり。周りからは変人扱いされても、目の前の命を救いたいという一途な想いで保護活動を続けていた。ある日颯太は、心を閉ざした一匹の実験犬を救ったことから、ひとつでも多くの命を救うため、動物保護活動をサークルにすることを思いつき「犬部」を設立。颯太と同じく犬好きの同級生・柴崎涼介(中川大志)らが仲間となり動物まみれの青春を駆け抜け、それぞれの夢に向かって羽ばたいていった。颯太はひとつでも多くの命を救うため動物病院へ、そして柴崎は動物の不幸な処分を減らすため動物愛護センターへ。
監督:篠原哲雄
原案:片野ゆか「北里大学獣医学部 犬部!」(ポプラ社刊)
出演:林 遣都、中川大志、大原櫻子、浅香航大 ほか
配給:KADOKAWA
©2021『犬部!』製作委員会
7月22日(木) 全国公開
公式サイト:inubu-movie.jp