Jul 09, 2021 interview

神木隆之介がワニの声を演じた 映画『100日間生きたワニ』を上田慎一郎監督と共に語る

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原作はTwitter上で2019年12月12日から2020年3月20日まで100日間毎日投稿されていたきくちゆうき氏の『100日後に死ぬワニ』。何気ない日常と友の大切さに気付かされる物語は多くの人の心を動かし、最終話の「いいね」数は214万を記録。コロナが世界を覆い尽くし始めた頃に最終話を迎え、原作に感銘を受けた上田慎一郎監督と妻のふくだみゆき監督が再生の物語として映画『100日間生きたワニ』を完成。ワニとネズミの友情と彼らを取り巻く動物達のささやかな幸せと優しい思いが溢れるアニメーションの声を担当したのは、神木隆之介と中村倫也。 今回は主演の神木隆之介さんと上田慎一郎監督に映画のテーマとなる「当たり前の日常を失った人々の再生」について伺いました。




再生ボタンを押すと神木隆之介さんと上田慎一郎監督のラジオトークがお楽しみいただけます

――上田監督が神木隆之介さんと一緒にお仕事をされたいと思ったのはいつ頃ですか。

上田:僕は神木くん主演の『桐島、部活やめるってよ』(公開:2012年)が大好きな映画なんです。劇場でも3回ぐらい観ましたし、舞台挨拶の回にも行きました(笑)なので、決定的だったのは『桐島、部活やめるってよ』を観てかもしれません。

神木:ちなみに、当時、「桐島が映画に出ている、出ていない」という意見が映画を観たお客さん達の間で盛り上がっていたのですが、監督はどっち派ですか?

上田:出ている派です。階段のシーンに出ていますよね(笑)

神木:そうなんですね。桐島役の俳優さんが現場に実際に居て、僕たちは架空ではなく、実際に桐島役の人と演技をしていたんですよ。

上田:そうなんですか!知らなかったです。

――『桐島、部活やめるってよ』での神木さんの役はゾンビ映画を撮る映画部の高校生でしたが、神木さんは上田監督にはどんな印象を持っていらっしゃいましたか。

神木:やっぱり『カメラを止めるな!』(公開:2018年)ですね。「どうやって撮ったの?」って思いました。色々考えても考えられないんですよね、一連で撮るということにビックリしました。映画の中では我々と同じように撮影をしていて、本当に大変なことをアナログで行っている。風で服を揺らすのも糸で服を釣って揺らしていたり、そんな姿は傍から見るとダサいことなのかもしれないけど凄くかっこよく見えたんです。僕らも表に出る前に早替えしないといけない時など裏で凄く慌てるんですけど、平然とした顔で表に出て行かないといけない。

傍から見たらダサくみえるかもしれないけど、映画を見たら僕には凄く誇らしく思えたんです。あのデジタルじゃないアナログ感が本当にかっこよかったです。現場の人間からすると共感もしたし、「これで(映画作りは)合っているんだ」という安心感もあったんです。現場を見たことがない多くの人がこの映画を観たら「こういう風に映画は作っているんだ」とか「フィクションなのかな、どっちなんだろう」と思われると思うんです。「あれ」ですよね(笑)

――『100日間生きたワニ』を観た時、上田監督ならではの手法だなと勝手に思っていました。『カメラを止めるな!』を観た時、『ライフ・イズ・ビューティフル』(日本公開:1999年)のように第一章、第二章みたいな構成が印象的で、『100日間生きたワニ』もそうなっています。原作にはない第二章的な部分も心に深く刺さりました。これは、原作を映像化する上で監督自身が決めていた構成なんでしょうか。

上田:「上田、日常系撮れるのか?」というのがちょっとあると思うんですけど(笑)。後日談は当初最後の5分ぐらいの気持ちだったんです。でもコロナ禍で脚本を描いていくうちに、日常が凄く恋しくなって「元の日常を失ってしまった僕らはどうしたらいいのかを探す映画を作ろう」と思い始め、原作で感じ取る「当たり前の日常の中で死を意識することで、今日を大切にしよう」という部分がガラッと変わってしまいました。

「当たり前の日常が失われて、毎日死を意識してしまう日常に変わってしまった。だからこそ、その先の物語を描きたい」と思うようになっていき、大幅に後半を追加しました。【答え】がはっきりとある訳ではなく、手探りで作っていった感じがあります。