Mar 20, 2021 interview

「綾野剛さんはすごく頼りになる人でした」、岸井ゆきのが語る映画『ホムンクルス』撮影裏話

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カルト的人気を誇る山本英夫の原作を、国内外で活躍する『呪怨』シリーズの清水崇監督が映画化。ある実験から特殊能力を手にしてしまった主人公に綾野剛。その実験に取り憑かれた研修医に成田凌。彼らの前に突如、姿を現す謎の女を『愛がなんだ』の岸井ゆきのがミステリアスに演じる。人の深層心理がビジュアル化される視覚を持ってしまった男の運命を描く『ホムンクルス』。驚異的な映像世界の撮影現場を体験した岸井ゆきのさんにお話を伺いました。




再生ボタンを押すと岸井ゆきのさんのラジオトークがお楽しみいただけます

――清水崇監督とお仕事をされた印象を教えて下さい。

清水監督の組(現場)がいつもどんな雰囲気なのかは分からないのですが、今回の現場は(綾野)剛さんも意見を出し、監督と話し合って、チーム全体で話し合いながら作っていった印象です。それは台本がちょっとずつ日々変わりながらの制作だったからなんです。

皆が【ホムンクルス】というものがどんなものなのか知らないので、共通認識として話し合いながら作っていったというのもあります。そんな中で生まれた色々な意見をまとめるのが監督なんですけど、皆が発言する凄く説得力のある言葉たちに対して監督は「でも俺は違う」という言葉を凄くサラリと仰る方で“カッコイイ”と思いました(笑)意見を取り入れながら演出していくやり方もあるし、色々な演出方法があると思うんです。でも監督は「その意見もわかるけど、今回はこうしたい」と凄くハッキリとした考えを持っていらっしゃいました。そんな監督がとても心強く感じました。

――清水監督の言い回しが独特ということですか。

監督は、言語化していないけど“こうしたい”という思いが見えるというか。言葉って強いから、私は言葉に負けちゃったりするんです。でも監督は言葉に負けない、言葉では表現できないのに「これがいい」って言えるのってカッコイイですよね。

――清水監督はラブコメディも凄くお好きなんですよね。岸井ゆきのさんが出演されている『愛がなんだ』(公開:2019年)もご覧になっていたのではないですか。

監督から「本当はコメディを撮りたい」と聞きました。それから『愛がなんだ』も観て下さっていました。「観たよ、良かったよ」と照れ臭そうな感じで感想を聞けたのが嬉しかったです(笑)

――今回、岸井ゆきのさんが演じられた役も、これまでにない謎めいた特殊な役ですね。どうやってキャラクターを作っていかれたのですか。

そうですね、難しかったです。

私の役は、たくさん説明すれば一本筋が通るんです。要所要所で大切な情報を置いていかないといけないので、その空白の時間が凄く難しかったです。彼女には過去があるという情報が少なかったので、そこからどれくらい経過しているのかを自分で考えて作っていくことも大変でした。

シーン自体の流れで自分では整理をつけるのが難しかったシーンもありました。そのシーンでは剛さんも何か感じてくれて「これ、言いにくい?」と聞いて下さったんです。部屋でのシーンだったのですが、急な台詞でその後のシーンにいけない感じだったので、その話を剛さんにしたんです。丁度、撮影の関係で休憩に入って剛さんと一緒にご飯を食べていたんですけど、そしたら剛さんが「これ、こうしたら言いやすいんじゃない」と提案して下さったんです。「あ!もしそうしてくれるのなら言いやすいかも」みたいな感じで。凄く寄り添ってくれながら、自分のキャラクターを作っていくことが出来ました。

私もやっぱり「やりにくいんです」とは言えないんです。どうしたら流れにそって演じられるかを考えるのが仕事だと思っているので。今までだったら一人で休憩の間、黙々と考えていたと思います。その一人で考える段階から剛さんと一緒に話し合いが出来たので、すぐにテストで試すことが出来ました。本当に頼りになって助かりました。

――『愛がなんだ』でも共演した成田凌さんもこの映画に出ていますね。

成田君とはほとんど一緒のシーンがないんです。でも病院シーンの撮影の時、待機場所で成田君と一緒になったんです。実は『愛がなんだ』の撮影時はあまり喋っていなかったんですが、普通に「お正月は何をしていたの?」「俺はサッカーしてた」「(コロナ前だったので)私は実家に帰ってお餅をいっぱい食べたよ」とか他愛もない話をしていました。(笑)『愛がなんだ』の時は、私が主にかもしれませんが普通じゃない感じで、あんまり成田君に個人的なことを聞かないようにしていたんです。“やっと普通に話せた”と凄く嬉しかったです。

――これまでは半径5メートル以内の作品を演じられてきたわけですが、今回のCGがあるSF映画を体験してみてどんな印象を持たれましたか。

あるシーンで成田君のカラ画(え)をいっぱい撮ったシーンがあるんです。その時、私は現場に居て“何を撮っているんだろう”と。ワイヤーにビーズみたいなものが付いた状態を撮影しているのですが、CG部の方がカメラマンの方に「もうちょっと顔を振って下さい」とか言うんです。“え?顔って何”みたいな(笑)本当に意味がわからなくて困惑して、気になり過ぎちゃってその後も待機場所でモニターの見える位置に居たんです。そのシーンが映画を観た時にちゃんと完成していたんです。“そりゃあ、時間をかけて撮るよね”と。

こうやって私の好きなSFが出来上がっていくんだと凄く感動しました。何もない場所で台詞を言ったりするのは大変だと思いますけど、興味がわきました。私が好きな『アベンジャーズ』(公開:2012年)でもテニスボールに向かってトム・ヒドルストンがずっと喋っていたりする撮影時の映像を見たことがあって、「最後しか僕はロバート・ダウニーJrに会ってないんだよ」とか、そういう会話もしょっちゅう聞きますよね。“凄く大変だな”と思っていたのですが、その過程を知ったうえで出来上がった作品を観た時の感動は特別でした。あの感覚は初体験でした。今までは出来上がったものだけを観ていたので、その過程が知れて面白かったです。

――SF映画が好きとおっしゃっていましたが、出演してみたいですか。

どうかな、でも宇宙船の中のシーンはきっとセットですよね(笑)

テニスボールに向かって台詞を言っているのは、きっと相手役のスケジュールが合わなかったからですよね。アイアンマンとはちゃんと共演したいし。もし私がSF作品に出演することになってもテニスボールに向かって台詞を言うのは、ちょっとやりたくないかも(笑)