Feb 05, 2021 interview

土屋太鳳、主演作の「哀愁しんでれら」は相当の覚悟を持って挑んだ

A A
SHARE

「TSUTAYA CREATORS’PROGRAM FILM 2016」でグランプリを獲得したオリジナル脚本で商業映画監督デビューを果たすのは、『かしこい狗は、吠えずに笑う』の渡部亮平監督。その脚本に惚れ込んでオファーを即決した田中圭とはまた違う角度で主人公を理解しようと考えあぐね、監督からの4度のラブコールで遂に出演を決めた土屋太鳳。更に一人娘を演じるのは63万人以上のフォロワーを持つファッションインスタグラマーのCOCO。シンデレラストーリーの裏側を描く危険すぎるおとぎ話『哀愁しんでれら』。今回は主演の土屋太鳳さんに役への取り組み方や、表現者として大切にしていることをお聞きします。




再生ボタンを押すと土屋太鳳さんのラジオトークがお楽しみいただけます

――主人公・福浦小春役を引き受けるのに3度も断った末の決断。確かにこの役は相当な覚悟が必要だったと思います。実際にこの役を演じてみて、演じる前と比べて気持ちに変化はありましたか。

考え方は変わっていないです。でも、改めて思ったことは”小さな幸せを大切にしていきたい”ということです。今日、さとりさんが来て下さったこと、この場に居られることなど、そういった小さな幸せを感じることが大事なのだとこの作品に参加してより強く感じました。

――そんな素敵な言葉がありがたいです。撮影中もヒカリ役であるCOCOちゃんを“守ってあげないと”という気持ちで演じられていたそうですが、舞台挨拶の仕事でお会いする時も“感謝の気持ちや愛情溢れている”と感じています。人に接する時など、大切にしていることってあるんでしょうか。

昔から習い事をやっていたので周りに人が居ました。なので、お礼を持って行く時は感謝の手紙を添えるとか、部活では大事な大会の前には必ず上級生、同級生、下級生、全員に手紙を書くとか、そういう事が多かったんです。なので自分としてはあまりその時から変化を感じてはいませんね。ただ、習い事や部活などで、感謝を伝える機会が多かったとは思います。

――創作ダンスも出来る上、劇中でも踊るシーンがあります。さらに小春は感情の起伏が激しいシーンが多いのですし、感性が鋭くないと演じられない役だと思っています。スイッチの入れ方とか、感性を育てる為にしていることはありますか。また、これまでの人生で感性を育てるのに役立ったことなどありますか。

『るろうに剣心』のお仕事をした時にゾーンというか、カーンって入っちゃった時があったんです。あの時がスイッチというか、スイッチが切れずに演じ切るということをちょっと掴めた瞬間だったと思います。

――この間、谷垣健治監督(映画『るろうに剣心』シリーズのアクション監督)にインタビューさせて頂いた時に、「太鳳ちゃんは凄い!」と褒め称えていらっしゃいました。日々、何かレッスンをされているのですか。

そう言って頂いて嬉しいです(笑)だけどやっぱり、自主練ですかね。家に居る時にいかにそのことについて考え、練習することで、演技が変わると思うんです。色々な人が居て「家では出来ない」と言う人も居ますが、私は家でもずっと考えてしまいます。家でダンスの練習をしている時もいざ「本番!」といった時に、そこで感情をバンっと入れさせることが出来るように、それをいかに慣れさせるかだと自分では思っています。

――冒頭、一人で踊られているシーンがありますが、あの時は感情をどのように持っていきながら踊られたのですか。そして3人で踊るシーンも中盤ありますが。

あのシーンは踊っているというよりも、音に合わせて動いているという感じです。3人で踊るシーンは、それまで全員で練習することが出来なく、COCOちゃんと圭さんが来ていなくて「残念だね」と話していましたが、撮影時に初めて一緒に合わせたときは息がピッタリでした。

―― 今、土屋さんが考える「役者」とは、何ですか。

ちょっとジャーナリストに似ているのかなと思っています。今の時代に求められているものや、演技でしか表現できないもの、それらは時代によって変わっていくものだけれども、伝えることが出来るものが「役者」だと思ったりしています。

――責任が大きいですね。

大きいと思います、少なからず世に影響を与えていると思うので。

悲しい過去の経験から子供達を守りたいと願う小春が体験する“愛の牢獄”と言っても過言ではない残酷で愛に満ちた衝撃作『哀愁しんでれら』。冒頭からダンスシーンがあり、女の子が持つシンデレラ願望を口にする主人公・小春の心情を体現した土屋太鳳さん。それは彼女にしか演じられない役であり、ピュアで愛に溢れる小春の心がどうやって破壊されていくのかを筋肉の動きや声の震えで表現するという驚異的な演技力なのでした。ただただ、凄い、そこ知れぬ表現力を持つ演技者なのよ、土屋太鳳さんは。

文 / 伊藤さとり
撮影 / 奥野和彦

スタイリスト / 藤本大輔(tas)、ヘアメイク / 尾曲いずみ

作品情報
哀愁しんでれら』

海辺の町の児童相談所で働く福浦小春は、自転車店を営む父、大学受験を控えた妹、祖父と4人で暮らしている。母親は、「あなたのお母さんをやめました」という言葉を10 歳の小春に吐き捨てて以来、消息不明。それでも、4人は幸せでも不幸でもない、平和な毎日を送っていた。しかしある夜、怒涛の不幸が福浦家を襲う。主人公の小春を演じるのは、可憐な美しさの奥に秘めた芯の強さと、高い身体能力で、青春映画のヒロインを溌剌と演じてきた土屋太鳳。大悟に扮するのは、『おっさんずラブ』で大ブレイク以降、最も忙しい俳優として走り続けている田中圭。渡部監督の「シンデレラは、王子様と結婚してからどうなったのだろう?」という疑問に、モンスターペアレンツにまつわる事件のニュースをかけ合わせて生まれたオリジナルストーリーは、誰も予想できないラストを迎え、「シアワセって何?」という問いを観客に投げかける。

脚本・監督:渡部亮平 

出演:土屋太鳳、田中圭、COCO、山田杏奈、ティーチャ、銀粉蝶 / 石橋凌 他 

配給:クロックワークス

©2021 『哀愁しんでれら』製作委員会

公開中

公式サイト:https://aishu-cinderella.com/

伊藤 さとり

映画パーソナリティ
年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当。 全国のTSUTAYA店内で流れるwave−C3「シネマmag」DJであり、自身が企画の映画番組、俳優や監督を招いての対談番組を多数持つ。また映画界、スターに詳しいこと、映画を心理的に定評があり、NTV「ZIP!」映画紹介枠、CX「めざまし土曜日」映画紹介枠 に解説で呼ばれることも多々。TOKYO-FM、JFN、TBSラジオの映画コーナー、映画番組特番DJ。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。心理カウンセリングも学んだことから「ぴあ」などで恋愛心理分析や映画心理テストも作成。著書「2分で距離を知事メル魔法の話術」(ワニブックス)。
2022年12月16日には最新刊「映画のセリフでこころをチャージ 愛の告白100選」(KADOKAWA)が発売 。 https://www.kadokawa.co.jp/product/302210001185/
伊藤さとり公式HP: https://itosatori.net