――洞口依子さんが演じられている【片山和里子】も【金子文子】を応援する立場ですよね。彼女のように女性が女性を応援する作品をあえて作っている。その辺も浜野監督の願いなのかもしれません。
確かに、そう思います。私も浜野監督から多分、バトンを受け取っています。世代的にも、こうやって女性として‥‥、という部分があるのかもしれないと思っています。浜野監督ご自身もあの万年筆のシーンが「一番好き」と仰っていました。だからきっとそういう想いがあるのではないかと思います。そういう先輩が居てくれるからこそ、私もこの業界で続けていられるというのがあります。“まだまだ男性社会だな~”と感じる部分は多いので、こうやって背中を見せてくれているというのは、凄くありがたいと思っています。だから浜野監督も【金子文子】を見て、多分ご自身と重ね合わせて、そういうことがあったのではないかと。だから【金子文子】は本当にその先駆けですよね。その姿を見せてくれた人だと思います。

――過去のシーンの中で【朴烈 (パク・ヨル)】に向かって、「同志として見るように」と言います。あの言葉を聞いた時、「あ、そうなんだ」と思って驚きました。でもその言葉を聞いて、【金子文子】の芯の部分がしっかり見えた気がしました。つまり「女性としてではなく人間として見ろ」ということですよね。凄く斬新でした。
浜野監督も「そこは凄く大事」と言っていました。あの三箇条を【朴烈 (パク・ヨル)】に言うところ。「同志として」というのは、もちろん妻ではあるけれども、同じ思想ではなくなった時は離れるとか、基本的には男とか女とかは超えて、本当に人間の同志として共に生きようとして一緒になったのではないかと。結果として離れてしまうことになりましたが、【金子文子】は自分の意思を最後まで貫いて、生き抜いたので凄く強い女性だと思いますし、かっこいいと思います。
――私は冒頭からこの【金子文子】というキャラクターは、菜葉菜さんが凄く自分なりのアプローチで彼女をスクリーンに生かしていると感じていました。例えば、裁判で死刑判決が下るシーンで「万歳」と高笑いをしたり、あと特高に向かって「あんたらはブルジョアの番人、ブルドッグだよ」と言い、犬の真似をわざとしたり、あれらは脚本に書かれていたのですか? あのユーモアは。
それは私自身を知っているからこその感想ですよね (笑)。高笑いのシーンは歴史的事実でもあり脚本には「文子は両手を挙げ、笑い声で叫ぶ」と書かれていました。俯いている状態から顔をあげて高笑いするのは自然と出たものだけど、“こういうふうに演技をしよう”と考えて、現場には入ってはいないんです。ブルドッグと言った後のワンッ! はとっさに出たもので、あのシーンのテストから生まれて出たものです。多分、私の中にあるものが出たのかな (笑)。
――だからこそ、菜葉菜さんでしか演じることができないものに感じました。凄く印象に残るシーンで、俳優の内側から生まれたショットだと思いました。あのリアクションは。
確かに。
