Feb 03, 2026 interview

寛一郎インタビュー 愛と喪失、その先の希望へ『たしかにあった幻』

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世界から愛される河瀨直美監督最新作であり、第78回ロカルノ国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門正式招待となった『たしかにあった幻』。本作は日本にやってきた臓器移植のコーディネーター【コリー】が、ひとりの日本人男性【迅】と恋に落ち暮らす中で、日本における小児臓器移植の難しさに気づいていく愛と喪失、そして希望を綴る完全オリジナル脚本によるヒューマンドラマです。『ファントム・スレッド』のヴィッキー・クリープスが主人公【コリー】を演じ、屋久島で彼女と出会い、やがて恋人となる【迅】には、ドラマや映画で活躍する寛一郎が扮しています。今回は、屋久島と神戸で長期ロケを経験した寛一郎さんに初の河瀨組での思い出や、役者としての今の思いを伺いました。

――河瀨監督が書き上げた脚本を読んだ時、どんな印象を持たれましたか。

そうですね。河瀨監督が描きたい諸行無常というか、命の繋がりを感じました。それと河瀨監督ご自身のコンプレックスも感じ取ったというか、とにかくとても内容の濃い作品だと思いました。台本の内容というよりも、【迅】という役柄が凄く魅力的だったので、“この役を演じてみたい”と純粋に思えたんです。だからやらせて頂きました。

――【迅】という役は決め込みだったんですか?それともオーディションだったのですか?

お声がけして貰い、面談という形でした。【迅】を演じる俳優を決めかねていらっしゃったようで、色々な俳優さんと会っていたみたいです。そんな時にマネージャーさんに「会ってみますか?」と聞かれて「是非、お会いしたいです。会ってみたいです」と答えたんです。それでお会いすることになりました。河瀨監督と色々とお話をしたんですけど、その時の僕自身のメンタル的にも【迅】とリンクするようなところがあったようです。僕のプライベートの話も聞いた河瀨監督が「【迅】役で行きましょう」となったのだと思います。

――私は【迅】という役は、演じるのがとても難しいと思いました。凄く魅力的で、距離感も近いのだけど、本音を出さない人。相手に合わせて生きている印象で、自分の本心を出さない選択をした人に見えたんです。

そうですね、臆病ですよね。凄く臆病で、ずるいと思います。でも、そういうところ“わかる”と思って (笑)。僕もそっちタイプだと思うので‥‥。僕も人の話を聞くけど、基本自分のことはあまり話さないです。それは一種の防衛本能というか、人との距離が近くなり過ぎることを恐れているのだと思います。まぁ、インタビューの時は、頑張って話すようにしていますけど (笑)。

――【迅】のようにサラリと、話しかけることは出来るのですか。

そうですね。そこも理解は出来るんです。仲が良くなった人を失うことって怖いですよね。諸行無常の話に戻りますが、人って何かが変わっていきますよね。関係性も絶対に変わっていく中で、【迅】は「失う」ということを理解している前提で人と接しているから、ある程度の距離感というか、「自分は居なくなるから大丈夫だよ」みたいな、そんな予防線を引いた上で人と気楽に話せるんだと思います。