ーーそんなふうにあの会話を生み出していったんですね。ちなみにお二人が作品選びで重視していることを教えてください。
シム:やっぱり脚本が大事です。伝えたいメッセージがあるかだと思います。今回の『旅と日々』は特にそれが凄く私に伝わったというか、脚本を初めて読み終わった瞬間、“これは自分の話ではないか?”と思うくらい親近感を感じたというか、運命を感じました。三宅 (唱) 監督とは以前お会いしたことがありましたが、お互いについて会話をしたことはなかったんです。なのに監督は、私の思いをこうやって描いてくれたことにグッと来ました。
監督の映画の特徴というか、魅力でもあると思うんですが、監督の映画は世の中を生きている私たちが主人公になっています。それに映画ファンとしていつも感動しています。それが監督の映画が好きな理由です。もし自分が自伝を書いたらこの映画みたいな自伝になるのではないかと思うくらい、この映画が好きでした。

ーー確かに!シム・ウンギョンさんにしか李さんは思いつかないほど、ピッタリの役でした。さて、堤さんはいかがですか。
堤:そうだな、僕も脚本ですね。色々なジャンルがあるけど、基本的には何でも演じられればいいと思っていますし、それが僕の仕事だと思っています。面白みを感じるジャンルは、時期によって違うというか。例えば舞台だったら現代の翻訳劇みたいなものをやりたいと思っている時期があったり、シェイクスピアみたいな古典をやりたくなる時もあります。まったく違う日本のオリジナルだったり、悪ふざけをしてもいいような舞台をやりたくなる時もあります。その時期によって全然違うんです。あんまりこればっかり続いてしまうと“いや、こういう芝居はもういい”となってしまうし、でも別の仕事をした後に“また、やりたい”と思ったり、その時に自分が“面白い”と思ったり、”これやったことない“というものをやりたくなるので、映画も同じですね。
ーーだから様々なジャンルでまったく違う役を演じていらっしゃるんですね。『木の上の軍隊』と『旅と日々』もまったく違うテーマで役どころでした。堤さんが演じられた【べん造】は、いびきをかいたりと凄く人間臭い。そういう日常の仕草を沢山見せていますよね。あれはご自身で考えられたのですか。
堤:あれはもともと脚本に描かれていました。「いびきをかいていて、うるさくて寝られない」という感じで。でね、あの時、本当に寝ちゃったんだよね(笑)。セットには一応、囲炉裏があるんですが、外よりも寒かったんです。だから息が白い。布団は煎餅布団なんですけど、昔の布団だから重いんです、それが丁度良い感じだったんですよ。重さが温かくて、本当に寝てしまった時がありました。寝てないふりはしていましたけど、スタッフは気づいていたと思います。
シム:私はリアルなお芝居だと思っていました (笑) 。
堤:いびきをかいているところは、いびきをかかないといけないから演技していますよ。スースー、ウトウトしている時は本当に寝ちゃってます。カットがかかっても全然気づかなかったくらいです。
シム:あのセットは、室内なのに外より寒かったですから。足元とか、凍えていました。
