――今回の現場で特に印象に残っていることはありますか。
井川 そういう意味では、そういうことを監督がまったく望まれていないようだったんです。「井川さんの好きなタイミングで」とよくおっしゃっていました。だからじっくり気持ちを作れたし、やりやすかったところがありましたし、一方で言葉ではなく何かしっくりくるものを待っていられているような(笑)。試されているような違う緊張感もありましたね。完成したものを観た時にはまた驚いて。こんな編集になるとはって、凄く斬新でした。
遠藤 斬新。本当に斬新で、俺、作品を観て直ぐに井川さんに連絡しちゃったよね。
井川 はい。
遠藤 まったく想像しなかったような感じで驚いたんだよ。
井川 自分たちが演じていたことなのに。
――この才能が世界に伝わればいいですよね。
遠藤 最初の長編映画でカンヌ国際映画祭の監督週間に選出されて、世界に理解してもらったんだから、次はどんな作品を撮るのか楽しみだよね。
第78回カンヌ国際映画祭に取材へ行った際、インタビューをした団塚唯我監督と黒崎煌代さん。活き活きとした表情で質問に答えた彼らは、カンヌの観客から手応えを感じていたようでした。たくさん話し合い、2人で生み出していった蓮という主人公が見つめる先に居る父と亡き母を演じた遠藤憲一さんと井川遥さん。親との関係、夫婦の姿は、時を経て変化していくのだな、とスクリーンに映し出される再開発が進む渋谷の街からも感じとった作品。画でしっかりとそれぞれの想いを語る新しいアプローチで描かれた家族の物語『見はらし世代』。団塚監督の今後がさらに楽しみになるインタビューでもありました。

再開発が進む東京・渋谷で胡蝶蘭の配送運転手として働く青年、蓮。ある日、蓮は配達中に父と数年ぶりに再会する。姉・恵美にそのことを話すが、恵美は一見すると我関せずといった様子で黙々と自分の結婚の準備を進めている。母失って以来、姉弟と父は疎遠になっていたのだ。悶々と日々を過ごしていた蓮だったが、彼はもう一度家族の距離を測り直そうとする。変わりゆく街並みを見つめながら、家族にとって、最後の一夜が始まる。
監督・脚本:団塚唯我
出演:黒崎煌代、遠藤憲一、井川遥、木竜麻生、菊池亜希子、中村蒼、中山慎悟、吉岡睦雄、蘇鈺淳、服部樹咲、石田莉子、荒生凛太郎
配給:シグロ
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