Oct 11, 2025 interview

遠藤憲一 & 井川遥 インタビュー “家族の再生”──再開発の渋谷を舞台に描く『見はらし世代』

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――なるほど。確かにカンヌ国際映画祭・監督週間で取材した際も兄弟のようでした。ちなみにお二人は、これまで様々な作品に出演されていますが、俳優として現場に立つ上で大事にしていることを教えて下さい。

遠藤 俺はあんまり“俳優としてこうならねばならぬ”というのはありません。ただ、自分が思っていることは「こうしてみない?」「ああしてみない?」と、監督に言うようにしているんです。でも団塚監督の場合は、ちょっと違った。最初のサッカーボールを蹴っているシーンを撮っていた時に、つい俺がノリ過ぎちゃってね。そうしたら監督から「そこまでやっては駄目です」とズドーンと駄目出しをされたんです。それを言われた時、“この監督は削れる人なんだ”と確信しました。そのシーンで「カット」と言った後に、しばらく考えて「奥さんの所に行って下さい」と言うこと自体、監督は鋭いんです。だから今回は、監督に言われるがままにやってみようと思った作品でした。

ただ撮り方が「もう1回、もう1回」と結構、多いんです。「何回させるんだよ、何回やるんだよ」と心の中では思っていましたよ。でも本人には言いづらい空気を纏っているんだよね。普通の若者なのに (笑) 。それでこっそり他のスタッフに「ずっとやるの?」と尋ねたら、「監督に言えないです」とやっぱり言われました (笑) 。

この現場では、皆が良い感じに若い監督に振り回されていましたね。この雰囲気はどこから来ているんだろうと思ったら、監督はただ迷っているのではなく、“そこから先の何かを見つけようとしているのではないか?”と、俺も他のスタッフさんも思っていたんですよ。皆が、彼の才能に惚れているところがあるので、考えている時間の邪魔をしちゃいけないと思っていたんですよね。

井川 私の場合は、何度も同じシーンを撮影する際に、毎カット予定調和になりたくないという思いが凄くあるんです。気持ちが起きる視点みたいなところを“どうしようかな?”と考えながら演じています。上手く言えているかわかりませんが、毎回、何かこう、違うところに着地したいと思うような。