Oct 03, 2025 interview

佐藤浩市インタビュー 俳優人生の集大成として描く、心を見つめ直す物語『アフター・ザ・クエイク』

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――子ども達が映画に出演したことがきっかけとなり、映画を作る、俳優になるという選択も持て、今後の仕事の可能性も広がりますよね。

実際にそうやっている子もいます。今現在、オーディションに受かって、俳優をやっている子もいます。頑張ってそういう道に進んで、何か創造的なことをやりながら自分でご飯が食べられるようになるのであれば、それに越したことはないです。

――今後の人生でこれだけやっておきたいものはありますか。

特にないかな。でも、よく「監督になれ」とは言われますが、監督をやれば自分が豹変することはわかっています(笑) 。あまり褒められないほうに豹変する気がして (笑) 。

そんな自分を見るのは嫌だというのもあるし、色々なことを役者やスタッフにお願いしたくなっちゃうというのもあるかな。

――それなら映画プロデュースとか。

それは可能性としてはあると思います。頼まれることがあれば、参加することはOKです。それこそ『太陽を盗んだ男』(1979) なんか、今、リメイクしたら面白いだろうし、児童養護施設で育った子ども達や、これからの子ども達がどうやって社会に向かっていくのかといった話も映画に出来たらと思うし。もっと大きな広がりをもった社会をテーマにした話とか色々なものを映画で観たいですね。

最近は、ライブ活動も積極的に行なっている佐藤浩市さん。一度、ライブを拝見しに行った際、バンドメンバーへの気遣いや、故・原田芳雄さんへの思いを語るMCに胸が熱くなりました。今や日本映画を牽引する俳優として、映画やドラマには欠かせない存在となっている浩市さん。映画を愛する浩市さんがプロデュースした作品を、いつか観られる日を密かに楽しみにしています。ちなみに本作では、かえるくんと地球を救おうと立ち上がるヒーロー姿が、やたらと哀愁を帯びていて目が離せないのです。『アフター・ザ・クエイク』は、ミステリアスな語り口で人間の心の奥底を覗き込む演出にハートを撃ち抜かれ、映画から自分の心の奥まで見つめてしまった作品です。

取材・文 / 伊藤さとり
撮影 / 奥野和彦

作品情報
映画『アフター・ザ・クエイク』

2000年に刊⾏された作家・村上春樹の短編集「神の⼦どもたちはみな踊る」に収録されている4つの短編をベースに、オリジナルの設定を交えて映像化。1995年の阪神・淡路⼤震災以降、それぞれ別の時代・場所で孤独を抱える4⼈の⼈⽣が交錯し現代へ繋がる、喪失と回復の物語。

監督:井上剛

脚本:⼤江崇允

原作:村上春樹「神の⼦どもたちはみな踊る」(新潮⽂庫刊)より

出演:岡田将生、鳴海唯、渡辺⼤知、佐藤浩市、橋本愛、唐⽥えりか、吹越満、黒崎煌代、黒川想⽮、津⽥寛治、井川遥、渋川清彦、のん、錦⼾亮、堤真⼀

配給:ビターズ・エンド

©2025 Chiaroscuro / NHK / NHK エンタープライズ

公開中

公式サイト bitters.co.jp/ATQ/

伊藤 さとり

映画パーソナリティ
年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。 映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当。 自身が企画の映画番組、俳優や監督を招いての対談番組を多数持つ。 映画コメンテーターとしてCX「めざまし8」、TBSテレビ「ひるおび」での レギュラー映画解説をはじめ、TVやラジオ、WEB番組で映画紹介枠に解説 で呼ばれることも多々。 雑誌やWEBで映画評論、パンフレット寄稿、映画賞審査員、 女性監督にスポットを当てる映画賞の立ち上げもおこなっている。 著書「2分で距離を縮める魔法の話術」(ワニブックス)。 2022年12月16日には最新刊「映画のセリフでこころをチャージ 愛の告白100選」 (KADOKAWA)が発売 。
伊藤さとり公式HP: https://itosatori.net