――前田さんは24歳ですが、今の自分が思う理想の人間はどんな人ですか。
正直に生きたいです。飾らず、人間らしくいたいです。人でいたい。人でありたいです。芸能人にはなりたくないです(笑)。キラキラせずというか、しなければならない時もありますが、でも基本的には普通の感覚を持ち続けていけたらいいなと思っています。実はこの考えは、樹木希林さんの本を読んでええなと思った事なんです。役者は芸能人の役をやるわけではないので、芸能人じゃない人たちの生活を知らない人がそれを演じるのはあまりにも難しい。だから普通の感覚を持って生きなさいということが本に書かれていて、その言葉をずっと大事にしています。そうだなって。
子役時代から役者を続けられてきたのは「現場は楽しかったから」と語った前田旺志郎さん。撮影前に現地へ訪れて役作りに取り入れようとする姿勢なども含め、多くの製作陣が信頼を寄せているのも納得なのです。最近は10歳で出演した映画『奇跡』(2011) の同窓会で、当時の共演者や是枝裕和監督とも再会したと語っていました。今作では、いつもの役とはまた違う、言葉少なく悲しみと怒りを纏った青年をしっかりと演じています。『こんな事があった』は、監督の渾身の思いを受け止めた俳優達の演技にも胸打たれる作品です。

17歳のアキラは、母親を原発事故の被曝で亡くし、父親は除染作業員として働きに出、家族はバラバラに。拠りどころを失ったアキラを心配する友人の真一も、深い孤独を抱えていた。ある日、アキラはサーフショップを営む小池夫婦と店員のユウジに出会い、閉ざしていた心を徐々に開いていく。しかし、癒えることのない傷痕が、彼らを静かに蝕んでいく。
監督・脚本:松井良彦
出演:前田旺志郎、窪塚愛流、柏原収史、八杉泰雅、金定和沙、里内伽奈、大島葉子、山本宗介、波岡一喜、近藤芳正、井浦新
配給・宣伝:イーチタイム
©松井良彦/ Yoshihiko Matsui
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