――中井貴一さんに言われて印象に残っている言葉ってなんですか。
中井さんからは「どんなに小さな役でもコツコツ真面目にやっていれば、一生懸命やっていれば絶対に誰かが見てくれている。だから一生懸命やりなさいって言うじゃない? でも、本当にこういうことがあるんだってことを君が僕に教えてくれたんだよ」と言ってくださったんです。たまたま、2008年の朝ドラ (NHK連続テレビ小説) 「瞳」を見ていた中井さんが私の演技を見て「この女優さんは誰?」とNHKに問い合わせをして下さって、そこから色々なご縁が広がっていったんです。
その時、私が演じた役 (看護師) は、取り立ててフィーチャーされるような役ではなかったんですが、看護師としての所作が自然だったからと目を留めてくださり、色々な方に繫いで頂いて、“一生懸命やって来て良かった。どんな役でも真面目に取り組んできて良かった”とその時、思いました。この私の経験が、後世のこれから女優を目指す、俳優を目指す方々にとっても励みになったらいいなと思っています。
今年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に選出された『遠い山なみの光』で、キャスト陣のひとりとして登壇した吉田羊さん。上映後のスタンディングオベーションに感極まって泣きそうになったという松下洸平さんと共に、実は吉田さんも目頭が潤んでいたそうです。カンヌに取材に行き、その光景を間近で見ていた私は、映画を世界に届ける意義をその空気感で感じ、戦争で長崎が味わった苦しみが、ミステリーという映画を通して、多くの人に届きますようにと吉田さん同様、願うのでした。

日本人の母とイギリス人の父を持ち、ロンドンで暮らすニキ。大学を中退し作家を目指す彼女は、自著執筆のため、異父姉の死以来足が遠のいていた、母が一人で暮らす郊外の実家を訪れる。母の悦子は、長崎で原爆を経験し、戦後イギリスに渡ってきていたが、ニキは母の過去を何一つ聞いたことがない。夫と長女を亡くし、想い出の詰まった家で一人暮らしていた悦子は、ニキと数日間を共にする中で、最近よく見るという、ある「夢」について語り始める。それはまだ悦子が長崎で暮らしていた頃に知り合った、とある女性と、その幼い娘の夢だった。
監督・脚本・編集:石川慶
原作:「遠い山なみの光」カズオ・イシグロ/小野寺健訳(ハヤカワ文庫)
出演:広瀬すず、二階堂ふみ、吉田羊、カミラ・アイコ、柴田理恵、渡辺大知、鈴木碧桜、松下洸平、三浦友和
配給:ギャガ
©『遠い山なみの光』製作委員会
2025年9月5日(金) 全国ロードショー
公式サイト gaga.ne.jp/yamanami/
