Sep 04, 2025 interview

吉田羊 インタビュー カズオ・イシグロ原作の“家族と喪失”の物語『遠い山なみの光』

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戦後80年となる今年、戦後の長崎で自身の人生を見つめ直す女性に焦点を当てた映画『遠い山なみの光』が公開されます。原作はノーベル文学賞作家カズオ・イシグロさんの長編小説デビュー作で王立文学協会賞を受賞した「遠い山なみの光」。監督は『ある男』(2022) で日本アカデミー賞最優秀作品賞を含む8部門に輝いた石川慶監督。本作は日本、イギリス、ポーランド合作となり、イギリスでのロケも敢行しています。1950年代の長崎という激動の時代を生きる人々には、広瀬すずさん、二階堂ふみさん、松下洸平さん、三浦友和さんが扮し、1980年代のイギリスでのパートには、吉田羊さん、カミラ・アイコさんが出演。謎めいた人間ドラマにハッとする本作は、9月5日 (金) に全国公開となります。今回は、ほぼ英語でのセリフで撮影に挑んだ吉田羊さんにお話を伺います。

――本作をご覧になっていかがでしたか。

想像以上にミステリーでした。まずティザー (予告) を観た時点で“あ、こんなにミステリー仕立てなんだ”って思ってびっくりしたんですけれども、原作者のノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロさんの世界観を映画にした時にこのアプローチは大切かもと思いました。何故なら文学に興味のない人にこの映画に興味を持ってもらうためには、ミステリー仕立てというのは凄く効果的だと思ったんです。いろいろな切り口で、多くの人に興味を持ってもらい、映画を観てくださればいいなと思います。

――美術やセットも素晴らしかったですね。

そうなんです、本当に。特に長崎パートの、【悦子】の家や【佐知子】が住んでいるバラックなど、本当にディテール (細部) にこだわっていて、小道具も含めて作っていらっしゃる。私が出演するイギリスパートの家や庭もそうですが、役者の私たちはそこに入るだけで演技にスイッチが入るようにして頂けました。空間で感情移入が出来たということは、とてもありがたい環境だったと思います。

――石川慶監督が「羊さんに向かって英語で演出をしたんですけど、英語で伝えるニュアンスは本当に難しい」とおっしゃっていました。羊さんもイギリスへ先に行かれて英語を勉強されていたとはいえ、英語での演出をどのようにクリアしていかれたのですか。

(笑) でも石川監督の演出は日本語でもそうなのですが、私が本当に理解するまで言葉を尽くして演出して下さるので、それは日本語でも英語でも一緒でした。もちろん監督ご自身も英語は、流暢でペラペラではいらっしゃいますけれども、日本語ならではのニュアンスというのは、やはり日本語でしか伝わらないと思う瞬間が度々ありました。そういう時は、やはり日本語でしたね。【ニキ】ちゃん役のカミラ・アイコさんはイギリス出身の方なので演出は英語でしたけど、私には時々、日本語で伝えて頂くことはありました。