Jun 30, 2025 interview

毎熊克哉 & 北香那 インタビュー 実在の爆破事件を描く話題作に込めた想い『「桐島です」』

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――今回の映画では「【桐島】は自分の信念を貫いて、生きていくけどそれによって諦めるものがある」という【桐島】の生き方を描いていると思いました。人間性というものを考えながら、社会に呑み込まれないように生きていく1人の男の姿を感じていました。毎熊さんと北さんは、この映画をご覧になって【桐島】の生き方をどう感じられましたか。

  (奥野瑛太演じる宇賀神寿一が書いた追悼文の)「やさしさを組織せよ」という言葉にギュッと詰まっている感じがしています。テロ行為は決して正しいことではなかったと思いますが、彼の目的はこの言葉だった。彼のやり方、当時の主張する方法 (手段) の少なさなど、色々と考えさせられることがたくさんありました。彼らなりに正義に向かっていたんです。そこのもどかしさを感じました。

毎熊 この映画は約50年くらい前から2024年までを描いています。今、北さんがおっしゃった通り、「やさしさを組織せよ」と言いながら、この50年の間で良くなった部分もたくさんあると思います。昔はもっとひどいことがあったけれど、何かしらの改善がされて、以前よりも少し皆が居やすい、過ごしやすい社会になったという良い部分ももちろんあります。ですが、僕は今38歳なのですが、これまで生きて来た中で居心地の変化というか、どこかでドンドンと人情が減っているという感覚を持っています。つまり減った部分もあるということです。

50年前の彼らの行動は凄く過激な方法ではありましたが「何かしらを正すべきだ!」という思いの中で行われました。そんな彼らが50年程前に行ったこと以外にも、日本の1970年代からの50年間という時代はどんな時代だったのかが、この映画では描かれていると思います。

――【桐島】にとっては“やさしさ”でしたが、お二人にとって忘れてはいけない言葉、気を付けていることを教えて下さい。

 私の座右の銘は「北風と太陽」です。とても大事にしている言葉です。人と接している中で意見が違う人は居て、どうしても納得出来ない意見もあります。その時に「何故、自分の意見がわからないんだろう」と相手に押し付けることは、イソップ童話「北風と太陽」(あらすじ:北風と太陽が、通りすがりの旅人の外套を脱がせることができるかという力比べの勝負をすることになった。まず、北風が力いっぱい吹いて、旅人の外套を吹き飛ばそうとするが、寒さを嫌った旅人が外套をしっかり押さえてしまい、北風は旅人の服を脱がせることができなかった。次に、太陽が燦燦と暖かな日差しを照りつけると、旅人は暑さに耐え切れず、今度は自分から外套を脱いだので、太陽の勝ちとなった)でいうと北風のやり方ですよね。自分の意見を押し付けてしまうと反対に相手は頑なになってしまいます。太陽のように相手を温めるというか、人の気持ちを考えながら話せば相手の気持ちも見えて来るし、本質も見えてくると思うんです。「北風と太陽」は、生きていくうえで、特に人と話す時に意識していて、大事にしている言葉です。

毎熊 ブルース・リーの名言として有名な言葉ですが「水になれ」です。この言葉は、中国の春秋時代の哲学者、老子の言葉なのですが「水のような感覚でいる」ということです。水には形がありませんから、どこにでも流れることが出来るんです。それにどんなに固い岩でも水は砕くことが出来ます。形のない水のような気持ちでいることで、時には岩のような障害に出会ったりもするだろうけど、時間をかければその岩(障害)は削ることも出来るし、別の場所に流れを変えることも可能です。イメージ的な話ですが、その考えは子どもの頃から持ち続けています。流れ続ける、流れ続けて循環を続ける。そんなイメージでその場に留まらない感じです。