――北さんは役との切り替えはすぐ出来るタイプですか。
北 私は自分の中で「ロケット鉛筆」(押し出し式の鉛筆) という表現が一番しっくりくるんですけど、最初に現場に入って、「よ~い」という声がかかるまであまり考えずにいます。「よ~い」でちょっと入って「カット」の声がかかったら台詞も全て抜けてしまうんです。毎熊さんはどうですか?
毎熊 う~ん、そういう例え方でいうと「ロケット鉛筆」ではないかも。
北 どんどん更新していかないといっぱいいっぱいになって、ずっと考えてしまい、思考が巡ってしまうんです。毎回毎回シーンを撮り終えたら直ぐに捨てる、自己防衛ではありませんが自然とそのようにしています。

毎熊 常に「ロケット鉛筆」ってことだね。常に新しい循環をしている。
北 そうですね。でも本当はそういう人間ではなくて、ずっと同じことを考えている人間なんです(笑)。でもそれは嫌だから、自己防衛的にも抜いていく作業をしています。例えば【マリオカート】を1時間遊んだら寝れなくなってしまうんです。ずっと頭に【マリオカート】が残っていて、頭の中で走っているんです。【マリオカート】で遊んだ後に車で高速道路に入ってしまうと気分は【マリオカート】になってしまいます。
毎熊 集中力が凄く高いんだと思いますよ。
北 そうなんですかね? (笑) でもそれが嫌で‥‥。だから、瞬時に抜けるようになったんだと思っています。
毎熊 北さんといろいろな話をしましたが、この話は初めて聞きました。僕は北さんと逆で、ずっといくつかの案件を頭に置いている感じです。ボ~ッとしながら、自分の中で“ハマってないな”って感じたら“どうしたらハマるんだろう?”と少し考えて、次のシーンでは何個かの候補の中から“これだったら自分の中でハマる”と思うものを演じる感じです。

――面白いですね。以前、柄本佑さんから「高橋伴明監督は“てにをは”がかっちりしている」というお話を聞いたことがあります。本作もそうでしたか。
毎熊 どうなんでしょう?僕は基本、台詞を変えないのでわからないです。そんなに器用に台詞を覚えられるタイプではないので、イライラしながらも台本に書いてある通りに台詞を覚えています。覚えたうえで、“もしかしたらこの可能性もあるかも?”と感じた時は「こっちのニュアンスの方がいいですか?」と相談します。でも今回は1回も相談しませんでした。
北 私もあまり相談しないタイプです。でも、明らかに言葉にすることが大変な言葉だったり、どうしても出てこない接続詞があったりした場合は「この言葉でも大丈夫ですか?」と聞いたりはします。でも、基本は台本のままかもしれません。