――上白石萌歌さん演じる【英子】が、急にディ―ン・フジオカさん演じる【劉備】になるシーンはまさにコメディでした(笑)。
あの話は、原作にない話なんです(笑)。“ディーンさんはどう女の子を演じるんだろう?”と思いながら僕は現場に入りました。だって男優が「女の子になる」ってなかなかないですから。でもディーンさんはすんなりと演じられていて、楽しんで演技をしているように見えました。あそこは面白かったですよね。
――向井さんの受けの芝居も楽しかったです。
連続ドラマの時から【孔明】が寝ると夢の中で三国志の時代に戻っていましたし、その為に【劉備】【関羽】【張飛】に会うシーンを撮っていたので、その延長線上での出来事でもあるのでやりづらさはなかったです。でも今回の【劉備】は今までとは違う登場の仕方でした。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、それが【孔明】の精神状態を表しているというところに繋がっていくのだと思います。
――色々な役をこれまで演じて来て、俳優生活も20年。だからこそ感じる発見などありますか。
これまでコメディも演じて来ましたが、毎回自分から笑いをとりに行くことは、あまりしていないんです。今回で言うなら、普通の人がUber Eatsの配達をやっても面白くないですよね。【孔明】がやるから面白いと感じる。それは今生きている人が感じるギャップなんです。そのギャップをくすぐることがコメディに繋がると思っていました。“一生懸命やる方がコメディなんだ”ということを何年か前から考えていて、自分から可笑しなことをするのではなく、一生懸命演じた時の“周りのリアクションが面白い”というのが自然な笑いなのではないかと思っています。シリアスも同じです。最近は、結構酷い役を演じたりもしていますが、それも一生懸命にやることが人間の根底にある感情の表現なのかもしれないです。それを周りの人がどう受け取るのかで、コメディもシリアスも変わっていくのだと思います。
――2025年4月から個人事務所を設立され、活動の幅がより広がっていくのではないかと期待しています。
前の所属事務所が閉幕したので「やるしかない」という感じで独立しました(笑)。前の事務所に所属していた時も自由にやらせて頂いていたので、そんなには変わらないです。今も昔も基本的にはマネージャーがお仕事を決めるので、そういう意味では相談しながらやって来ました。スタンスとしては変わっていません。でも、ドラマ、舞台、映画という3つのメディア(ステージ)だけでなく、自分で行動していくドキュメンタリーも好きなので“表現者として何が出来るか?”を模索しようとは思っています。映像や舞台だけではないところで “何が出来るか?”を今は考えています。

――それはディレクターとかも含まれますか。
そっち系ではないです(笑)。僕は出る側の人間であることは間違いないので、監督業は向いてないと思います。監督は全部を見ていないといけないと思うんです。僕は1つのキャラクターで手いっぱいで、他に広げようとするとアンバランスになる気がしています。そういう機会があれば、チャレンジしてみたいとは思いますが、あえてやりたいとは思っていませんし、そこがゴールだとも思っていないんです。